武藤さんご夫妻の自己紹介
武藤杏里(むとう あんり)さん【神奈川県出身】
東京のベンチャー企業で事務の仕事をしていましたが退職。「これを機にいろんな教室に行ってみよう」と思って通い始めたのがパン教室でした。たまたま選んだパン教室が、酵母を起こすことから教えてもらえる、短期集中型の開業希望者向けだったことに後から気がつきました(笑)。その後、夫の地元である五泉市に2010(平成22)年に移住、2014(平成26)年に店をオープンしました。神奈川県にはない五泉市の自然美が気に入っています。
武藤俊徳(むとう としのり)さん【五泉市出身】
大学進学で東京へ。大学卒業後はいろんな職業を経験して、新潟に帰る直前は飲食店のグッズ制作などをやっていました。デザイナーと言えるほどではないですが、デザインを少しだけ。リーマン・ショックの影響で会社の事業がダメになりそうだった時、人生を一度リセットする意味合いで地元に帰ってくることにしました。帰ってすぐは家族が経営する美容室を手伝っていましたが、あまりにも妻が忙しそうだったので一緒にベーグルを作っています。
PROLOGUE
JR五泉駅前から真っ直ぐ一本道。
市役所や五泉中央病院からも程近く、バスのアクセスもいい場所に小さな白いお店があります。
木格子がアクセントの外観。
「なんのお店だろう?」と恐る恐る来店する人も多いというその店には、焼きたてのベーグルがずらりと並んでいました。
プレーンにチョコレート、くるみ、ごまあんこ……
メニュー表を見ていると、クリームチーズこしょう、ブルーベリー、チョコバナナ、くるみあんこクリームチーズ、ベーコンクリームチーズも定番のようです。
「ベーグルの美味しい食べ方」と書かれたページには、常温保存はもちろん、冷凍保存でもおいしく食べられるコツが書いてあります。
意外と知らないベーグルの魅力を五泉市の「Re Ri Bagel(以下、リリベーグル)」で聞いてみました。
INTERVIEW
ハイセンスな夫婦が手掛けるベーグル店。
東京で仕事をしていたおふたりが新潟県に移り住んだのは2010(平成22)年のこと。
俊徳さんの実家がある五泉市にUターン移住し、2014(平成26)年にリリベーグルをオープンされました。
移住後の4年間はイベント出店を中心にベーグルを販売されていたそうです。
「友人から『イベントに参加してほしい』と頼まれたことをきっかけに、パン教室の経験を活かしてベーグルの製造・販売を行うようになりました。
大きな設備を持っているわけではなかったので、小さめで、発酵のサイクルを合わせながら種類豊富に作れるパンは何だろうと考えていた時、思いついたのがベーグルでした。
生地を変えてみたり、中の具材を変えたりしながら種類を増やしています」(杏里さん)
東京ではデザイン関係の仕事をしていた俊徳さん。
杏里さんと一緒に店頭に立つようになったのはオープンから3日後のことでした。
「長年会社員をやってきて、頭の片隅で『自分で何かやってみたい!』という願望もありました。まさか妻と一緒にお店をやることになるなんて、思ってもいませんでしたけどね」(俊徳さん)
それぞれの役割分担はなく、どのベーグルでもふたりで作るというからすごい。
経験を重ね、指先で小麦粉の状態を把握できるまでになったと言います。
おふたりが拠点に選んだのはカウンターがある小さな正方形のお店。
自分たちでペンキを塗りながら店を完成させました。
アートとベーグルが共存する空間。
どこを切り取ってもおしゃれで、通うほどにセンスが磨かれそうです。
冷凍して持ち歩くという選択肢も。季節限定にも注目!
それまで、ベーグルに対して「おしゃれな食事」というイメージを抱いていた私ですが、武藤さんご夫妻のお話を聞いているうちに印象が一変。
実は、毎日食べたくなる、生活に取り入れやすいパンだったようです。
「うちでは自家製酵母と国産小麦を使用したベーグルを定番9種類と季節限定1〜2種類から日によって店頭に並べています。
そのままでもおいしいですし、ジャムをかけたり、ハムやチーズを挟んでみたり。
さまざまな楽しみ方ができますよ。
食パン感覚で気軽に朝食に取り入れてみてください」(杏里さん)
健康的な自然素材を使用した体に優しいベーグル。
それにしても、あのもちもち食感はどうやって生まれるのでしょうか?
「ベーグルの水分量は普通のパンよりも少なめ。
製造工程で一度茹でることで、特徴的なもちもちの食感が生まれます。
冷凍することで保存できて、また違う食感を楽しめるのもベーグルならでは。
冷凍したままカバンに入れて、自然解凍で食べることもできますし、解凍後に3〜5分トーストすると表面がカリッとしておいしいですよ」(俊徳さん)
新潟の旬の食材を取り入れた季節限定のベーグルも販売するリリベーグル。
2023年夏はどんなベーグルが味わえるのでしょうか?
「夏季限定として枝豆チーズの販売をスタートしましたし、毎年定番のトマトクリームチーズも近日中に販売予定です。
具材には地元農家さんである農園八兵衛(のうえんはちべい)さん、オーガニック野菜を栽培する新潟市秋葉区のよへいろんさんから仕入れたトマトを使用しています。
寒くなってくると、農園八兵衛さんの熟成サツマイモを使用したスイートポテトも人気です。
新作情報はInstagramで更新しているので、チェックしてみてください!」(俊徳さん)
EPILOGUE
街の日常になじむ、身近なお店を目指して。
ふたりでベーグルを焼き続けて9年。
もうすぐ、オープン10周年の節目を迎えます。
今後、リリベーグルはどんなお店になっていくのでしょうか?
「お店を大きくしたいという気持ちはなくって。
今のまま、小さい店でいることに意味があると思っています。
自分たちの手の届く範囲で商売をする。
個人商店がどんどんなくなっていく今、自分たちよりも下の世代の人たちが小さなビジネスも楽しめる社会になったらいいなって感じています。
県内外からたくさんの人が駆けつけてくれるのもうれしいけれど、地元のおばあちゃんが通いやすい、そんなお店でありたいです」(俊徳さん)
ベーグルを買いに訪れるおばあちゃん……
「なんておしゃれ!!」と驚きつつ、五泉市ではごく当たり前な日常の一コマがうらやましくも感じました。
「ごまあんこベーグルを1個だけ買いに来てくれるおばあちゃんがいるんです。
『あんこがおいしいから』って、わざわざ自転車でいつも来てくれて。
この間は、小学生の子が友達を連れてきてくれたこともありました。
3人で20個くらいのベーグルを買っていってくれたんですが、『どれがいいかな〜』って悩みながら一生懸命選んでいる様子がまたうれしかったです」(杏里さん)
小さな店だからできる、至近距離の会話。
そんな距離感がおふたりのお気に入りでもあります。
さまざまな世代が自然と集まる、笑顔いっぱいの小さなベーグル店から
幸せの輪が広がっていました。
取材後、定番ベーグルから武藤さんご夫妻一押しの「ベーコンクリームチーズ」を購入。
これがまた……赤ワインが欲しくなる、ピリッとコショウが利いたお酒のおつまみにもぴったりな味でした。
表面パリッと、中はもちもちのベーグル。
一度食べたら忘れられないおいしさと食感です。
杏里さん、俊徳さん。
誰もが笑顔になってしまうベーグルのお話
教えていただき、ありがとうございました!