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「仕事とは、人の役に立つこと」 青い卵やピンクの卵が買える養鶏場 キムラファームさんの仕事哲学。

「仕事とは、人の役に立つこと」青い卵やピンクの卵が買える養鶏場キムラファームさんの仕事哲学。

ごせんgosen
キムラファーム

木村 道雄 (きむら みちお)さんの自己紹介

五泉市生まれの五泉市育ち。卵屋の長男なので、当然家業を継ぐつもりで、東京の大学で畜産を学ぶ。卒業後、「他人の飯を食ってから」という両親の勧めと、農業後継者の育成と高校野球の指導もやってみたかったため、農業高校の教員を勤める。15年が経過し、そろそろ家に戻らないと考え辞職し、現在に至る。職業柄、定期的な休みは取れないので、職場で楽しめる動物(ポニーとヤギ)の世話や、古い車の鑑賞が趣味。

五泉市のスーパー「エスマート」の店長鈴木さんからご紹介いただき(ごっつぉLIFE五泉市1-1参照)、やって来たのは養鶏場と卵の直売所を営む「キムラファーム」さん。磐越道の安田インターから、五泉方面へ向かって車で5分ほど。この建物が卵の直売所で、この裏に養鶏場があります。約1万羽のニワトリを養鶏し、生みたて卵を販売する直売所は、年中無休で営んでらっしゃいます。

ひときわ目を引くこの立派な建物は、上越の柿崎から移築したという古民家で、6・7年前に直売所として使い始めたそうです。

中に入ると…

これまた圧巻!すてきです…。

あちこちに飾られているレトロなものたちは、店主さんのご趣味…ではなく、「この古民家に合いそうだから」とあちこちから持ち込まれたものだそうです。これらを拒むことなく飾ってあるところもまた、すてき(笑)。多くの皆さんに愛されているお店なんですね。

そして、入って左手のカウンターや、右手の陳列棚には、卵がずらり…

珍しいのは、白や赤の卵だけでなく、青い卵やピンク色の卵(桃色たまご)まであること。全部で7種類の鶏の卵を、お好みで詰め合わせて購入することができます。

7種の鶏が産む、色とりどりの卵

卵の色は鶏の種類によるものだそうで、
■白い卵は「ジュリア」
■赤い卵は「ボリスブラウン」
■青い卵は「アローカナ」
■ピンク色の卵は「ソニア」
■茶色い卵は「新潟地鶏」
■オレンジ色の卵は「名古屋コーチン」
■クリーム色の卵は「烏骨鶏」
という鶏から生まれてくるそうです。

(お店でもらえるキムラファームさんのパンフレットにも、詳しく書かれています)

お父さまが始められた養鶏、今はほぼ100%直売

このすてきな古民家の一角で、キムラファーム副代表の木村さんにお話を伺いました。木村さんのお父さまが代表として養鶏に携わり、ご自身は主に販売を担当されています。

ここで養鶏を始めたのは、木村さんのお父さま。お父さまは農業高校で畜産を学び、卒業してすぐに始められたそうです。

「もともと祖父が、少しニワトリを飼っていたそうなので、そこから大きくしたんだと思います。私が関わる前は、一時3万羽くらい飼っていたようですが、徐々に数を少なくして、直売の割合を増やしていきました」 と木村さん。

今ではほぼ100%直売。この直売所で売るか、木村さんが直接取引をして納めているお菓子屋さんや飲食店さん、宿泊施設さんのみだそうです。

“色とりどりの卵”のきっかけは1羽の鶏

色とりどりの卵を扱うようになったのは、2005(平成17)年頃。

「1羽だけ、青い卵を産む鶏がいたんですよね、うちの鶏舎に。たぶん親父が、もらってきたんだと思うんだけど。ちょうどその頃、飼育羽数を減らし、直売の割合を増やして、“うちは中身で勝負をしよう!”と思っていた時期だったので、これはおもしろいな、と。それで、徐々に飼う鶏の種類を増やしていったんです。そしたら、お客さんもいろんな卵の詰め合わせを楽しむようになってくれた。お客さんの反応を見て種類を増やしていった感じですね。それで今では7種類の鶏を飼って、7種類の卵を売ってます」

(左から赤・青・桃・白の4色の卵)

卵の味の違いとは…?

鶏の種類によって卵の色が違うそうですが、味も違うんですか?

「卵の味はね、正直、エサで決まるんですよ。だから鶏の種類によってそんなに違いは出ない。あえて言うなら、白い卵を産む鶏は毎日卵を産むけれど、新潟地鶏や青い卵を産む鶏は2日に1回しか産まないんです。だから、必然的に黄身が濃くなる…っていうのはありますね」

キムラファームさんでは、トウモロコシが主成分のエサに、魚粉や貝化石(貝やサンゴの化石)を混ぜるなど、独自の工夫をしているそうです。

(養鶏場の様子。※キムラファームさんご提供写真)

「エサの内容はそんなに頻繁には変えないです。味の違いや良さも、お客さんの反応で判断します。ずっと変わらず買いにきてくれるお客さんがいるってことは、ずっと変わらずおいしいと思ってくれているってことだもんね」
と笑う木村さん。

元農業高校の先生

木村さんは、もともと高校の先生。農業高校で食品加工や果樹栽培を教えていたそうです。15年続けられた教職を辞めて、家業に従事されるようになったのは、2005(平成17)年のこと。

どうして先生を辞めて家業を継ごうと?
お父さまから打診があったんですか?

「いや、何も(笑)。逆に親父はちょっと困ってましたね。私が帰ってこなければ徐々に縮小して、やめようと思っていたみたいなので。“お前が帰ってきたから、もう1回エンジンかけなおさなきゃだな!”って言ってました。うれしかったとは、思いますけどね」

ご自身で継ぐことを決められたんですね。
教職を辞められることに抵抗はなかったですか?

「全然(笑)。こんなこと言ったら怒られるかもしれませんが、最初からなんとなく、6年くらいしたら辞めようと思ってたんです。でも始めてみたら、周りにアツイ先生も多くて、おもしろくなっちゃって…。それで15年間やっていたんですが、教員って、長く続けていると自然と管理職の話が出てくるんですよね。私は管理職には興味がなかったので、ちょうどいい時期かな、と思って辞めました」

6次産業化をしない理由

この先生時代の木村さんのお話、今のお仕事には全くつながらないように思って聞いていたのですが、意外な形で「今の木村さん」とのつながりが見えてきました。

それは、「今後の展望」をお尋ねした時、

「展望はね…、特に何か新しいことをしようとは考えてないです。当たり前のことを、当たり前に、肩ひじ張らずにやっていく。お客さんも減りもせず増えもせずなので(笑)、この先も“うちの卵がいい”と言ってくれる人のために、今のままを続けます」

6次産業化には興味はないですか?
この卵でお菓子を作るとか、店内にイートインスペースを作って、卵かけごはん屋さんを開くとか!

「6次産業化はね、教員時代にちょっと考えてはいたけどね。やらないかな…」
と、木村さん。

その理由を尋ねると、以下の2つの理由を挙げてくださいました。
■自然と人が集まるような観光地ではないので、卵かけごはん屋さんのようなものを開いても続かないだろうと思っていること。
■もしお菓子を作ったとしてもお菓子屋さんには勝てないと思うし、もし勝てるのであれば卵屋を辞めてお菓子屋さんをすればいいと思うこと。

教えを体現する

「仕事はね、金稼ぎじゃないと思っているんですよ。仕事っていうのは人の役に立つこと。内容はなんだっていいんです。キチンとお金を頂けるものであれば、それは仕事として、お互いに尊重・尊敬し合うもの。…って、生徒にさんざん言ってきたんですよね、私。…うん、それを体現してるだけでしょうね、今の私は(笑)」

なるほど。
「6次産業化は考えていない」と仰った理由の根幹もここにあるんですね。
今のお客さまを何よりも大切に思い、「それは人の役に立つことなのか?」を考えるからこそ、やらない。生徒に言ってきたことを、今も忘れずに思い続け、体現されている先生。めちゃくちゃカッコイイじゃないですか!(笑)

卵を介したコミュニケーションの場

キムラファームさんは常連さんが多く、卵を買うだけでなく、皆さん必ず話をして帰られるとのこと。

(お客さんと冗談を言い合いながら、卵を詰めていく木村さん)

「私にとってここは、卵を介したコミュニケーションの場です。私もこれが楽しいし、お客さんもこれを楽しんでくれていると思う。私にかまわれたくて来る人も多いと思うよ」
と話す木村さんは、とても楽しそう。

そして

「私は365日ほとんどここにいます。お客さんが休ませてくれないんですよね。8時開店だって言ってんのに、8時前にガラッと開けて入って来たりするし(笑)」
と話す木村さんは、とてもうれしそうでした。

いつも吹いている、この風が味方

キムラファームさんの取材を終えてお店の外に出ると、雲の切れ目から青空が。冬空ながら、遠くに見える雪化粧の山々も美しく、この景色に目を奪われました。

「この景色はね、お客さんもみんな“いいね”って言ってくれますね。阿賀野川の側だから風が強くて冬は寒いけど、この風は鶏舎の換気をしてくれる、いい味方です」
と、木村さん。

阿賀野川を川下から川上にかけて吹く風は、この阿賀野川周辺の地域で「だしの風」と呼ばれる、年中吹く強い風。

この自然の中で、肩ひじ張らず、「人の役に立つこと」を考えて、当たり前のことを続ける。木村さんの飾らない姿と仕事哲学に、心打たれました。私もそうしよう。忘れないようにしよう。お金儲けが仕事じゃない、「人の役に立つこと」が仕事なんだ。

365日いつでもお店開いてます!いつでも卵食べられます!

お伝えした通り、木村さんはほとんど365日、キムラファームの直売所にいらっしゃるそうなので、ぜひ会いに行ってみてください!節々に哲学的なものが感じられる、木村さんとの会話、癖になると思います(笑)。

取材時に頂いた卵は、さっそくお家で「卵かけごはん」で頂きました。

おいしかったーーー!
普段、卵かけごはんを食べて感動することはないのですが、「卵かけごはんって、やっぱりおいしいんだな」としみじみ思いました。卵が違うだけでこんなに違うんですね。お醤油は、いつものお醤油だったもんな。

木村さん、楽しいお話をありがとうございました!
そして、おいしい卵、ごちそうさまでしたー!

木村さんの特別なこと
自然体で教えを体現する
人の役に立つ仕事
お腹いっぱい頂きました!
ごっつぉさまでしたー!!

木村さんの#マイごっつぉ

ミニチュアポニーの「銀次郎」

五泉市の卵屋さん「キムラファーム」副代表木村さんにとって特別なこと「マイごっつぉ」は、ミニチュアポニーの「銀次郎」。「大学時代、学内で馬術部の馬が散歩している姿を見て、その大きさと優雅に闊歩する姿に驚き、魅了されました」と木村さん。家業を継ぐためにニワトリの研究をするつもりで農業大学に入学したのに、専攻を馬に変えて卒業論文を書くくらい馬が好きになってしまい、「将来は競走馬のオーナーになりたい!」と夢見た時期もあったのだとか。ポニーを飼い始めたのは、家業に就いて間もない頃。動物関係の仕事に従事する妹さん夫婦から、初代ポニー「ポー君」を斡旋してもらったそうです。この「ポー君」が2020年に他界し、再び妹夫婦に相談し北海道からやってきたのが、こちらの2代目ミニチュアポニー「銀次郎」。「競走馬とは違い、全く賞金は稼ぎませんが(笑)、スタッフやお客さまに愛され、癒しをくれる貴重な存在です」と木村さん。「馬は20~30年くらい生きるらしいです。今、私が55歳なので、丁度寿命が同じくらいかな?銀次郎に負けないように頑張ります!」とのことでした。木村さんの「馬好き欲」を、かわいく満たしてくれるすてきな存在ですね♪天候の良い時期には、直売所の外でお客さんを迎えてくれるらしいですよ。今後は銀次郎にも会いに行こっと♪

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