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自家製なんばん味噌が名物 見ているだけで楽しい! 売る人も買う人も楽しい! 五泉のスーパー「エスマート」誕生秘話。

自家製なんばん味噌が名物見ているだけで楽しい!売る人も買う人も楽しい!五泉のスーパー「エスマート」誕生秘話。

ごせんgosen
エスマート

鈴木 紀夫 (すずき のりお)さんの自己紹介

五泉のスーパーマーケット「エスマート」の店長です。大学卒業後に大手スーパーで働いたのち、父が始めた家業のこの店を継ぐために29歳で帰郷しました。一時は経営悪化のため店を閉めることも考えましたが、今では多くの方にご愛顧いただけるようになり、「なるべく長く、ここでスーパーを続けていきたい」と考えています。趣味は、家の裏手にある高立山の散策。山頂でいれたてのコーヒーを味わうひとときが幸せです。

実は、昔からよく耳にしていました。「五泉にエスマートっていう、おもしろいスーパーがあるよ」と。時には県外の方から、「エスマートっていうおもしろいスーパーが新潟にあるみたいなんだけど、知ってる?」と、聞かれたこともありました。

県内外にその名をとどろかせる「エスマート」。

何がそんなに「おもしろい」のか?スーパーが「おもしろい」ってどういうことなのか?その謎を探るべくやってきました。五泉市郊外にある、こちらがエスマートさんです。

早速お店の中へ入ってみたいと思います。

見ているだけでワクワク!食のセレクトショップ

店内全景はこんな感じ。

決して広い…とは言えない店内。
一般的なコンビニをちょっと大きくしたくらいの広さでしょうか。

しかし品揃えは、一般的なコンビニやスーパーとは全く違うと、一目で分かります。

なぜなら、見たことのないものがたくさん並んでいるから。お野菜・お肉・お魚・お惣菜・冷凍食品・お菓子・お酒・おつまみ…。「あぁ、知ってる。いつものあれね」と思う商品は、ほとんどありませんでした。ほぼ全てが目新しくて、次々と目移りしてしまい、見ているだけでワクワク。これは楽しい!おもしろい!

店内キッチンで揚げたて・作り立てのお惣菜や、自家製のオリジナル商品も多く…

(種類豊富な揚げ物。店内のキッチンで揚げたものが、次々と並べられていきます)
(お魚の加工品も自家製のものが多く、オリジナリティ豊か)
(プリンまで自家製!)

ひとつひとつ、じっくりと見てしまいます。
これは飽きないわ…。

あちこちから「おいしいよ!」と声を掛けられる

目移りしながらぐるっと店内を見て感じたのが、あちこちから「見て見て!これおいしいよ!」「これ食べたことある?すっごいおいしいの!食べてみて!」と親しげに声を掛けられている気分になること。

これはおそらく、商品の側に必ず貼ってある、商品を紹介する張り紙(POP)のせい。POP1つひとつに思いが込められていて、POPが店員さん・販売員さんの役割をしているんです。

一般的なスーパーにもPOPはあるけれど、こんな気分になったことはない。この違いはなんだろう?そして、このワクワクするような品揃えは、どうやって決めているんだろう?

店長の鈴木さんに聞いてみました。

おいしいものはみんなで見つけてくる、みんなで作る

鈴木さん、この品揃えはなんですか?ワクワクが止まらないです(笑)。鈴木さんが全国各地を食べ歩いて、見つけて来るんですか?

「いやいや、みんなで見つけてくるんですよ。うちにある商品は、ほとんどが“誰かのオススメ”です。私が見つけてくることもあるし、スタッフが見つけてくることもある。問屋さんからオススメされたものもありますが、それも全て私とスタッフで味見をして、“これおいしいね!オススメしたいね!”となったものだけ置いています。スタッフが旅先で見つけて買ってきて、“店長!これおいしいんですよ!食べてみてください!店に置きましょう!”っていうパターンも良くあります(笑)。自家製の商品も、みんなで考えて作ります」
と、ニコニコと楽しそうに話す鈴木さん。

なるほど。だから、それをオススメするPOPにも気持ちが入るんですね。

「自分がおいしいと思って勧めたものを、“おいしい”と言って食べてくれるとうれしいでしょう?私やスタッフの原動力はそれですね。みんな楽しんでPOPを書いていますし、陳列にも力が入ります。“おいしいから食べて!”っていう気持ちが溢れているので(笑)。あと、商品を扱うかどうか判断する時や値段を決める際には、女性スタッフの感覚を重視しています」

…と、言うと?

「この金額を払ってでも買いたいと思うか?を、消費者の感覚で見てもらうんです。食品をメインに扱うスーパーは、やはり女性のお客さまが多いので、我々もお客さまに近い女性スタッフの声を大切にしています」

なるほど。私がこれほどワクワクし、ついあれこれと買ってしまうのも納得です(お話を伺う前に、一通りお買い物をしました(笑))。

以前は一般的なスーパーだった

エスマートさんは鈴木さんが小学生の頃に、鈴木さんのお父さまが始められたスーパー。ご近所さんから頼りにされる、一般的なスーパーだったそうです。

幼い頃から「跡取りさん」と呼ばれることも多く、自分が後を継ぐのだと自然と認識していた鈴木さん。大学では流通を学び、卒業後は大手スーパーへ就職。29歳の時に帰郷し、お父さまと一緒にエスマートの経営に携わるようになります。

「その頃の私は、大手スーパーで学んだことを活かして、経営を立て直すことばかり考えていました。無駄をなくして効率的に!お客さんとしゃべってないで、はい、動いて!働いて!…って」

…え?鈴木さんがですか?
こんなに穏やかでニコニコとお話くださる、鈴木さんが?

「そうなんです(笑)。今の私からは考えられないんですけど、当時はそれがいいと思ってやってたんですよね。でも、一向に経営状況は改善されなくて、結果、父と相談して、“お店は閉めよう。なんばん味噌の製造業だけにしよう”という話になりました。」

元々仕出し屋さんを経営していた鈴木さんのお父さま。自家製のなんばん味噌はその頃から名物で、スーパーを閉めて、このなんばん味噌の製造だけ続けようと考えたそうです。

(自家製なんばん味噌は、エスマート人気商品の1つ。写真左の黒い容器がベーシックな「なんばん味噌」で、右の黄色い容器が秋冬限定の「ゆずなんばん味噌」。1番小さな60gのお試しサイズから、250gのたっぷりサイズまで、大きさは3種類あります)

大きな気付きをくれた「プリン事件」

この“お店を閉めよう”という話をしていたのが、2001(平成13)年。鈴木さんが五泉に帰って来られた2年後でした。ちょうどこの頃、鈴木さんが間違ってプリンを大量発注してしまうという「プリン事件」が起こります。

「このプリン事件が、私たち親子に2つの大きな気付きをくれたんです」
と鈴木さん。

「1つ目の気付きは、私たちはお客さまに対して“おいしいですよ”とオススメしていなかった、ということです。プリンが大量に入荷されて、賞味期限もあるので、こちらは必死で勧めるわけです。もちろん本当においしいプリンだったので、嘘ではないですよ(笑)。以前から変わらずおいしいプリンで、オススメしていたつもりだったけど、よく考えたら、こうやって積極的にオススメしていなかったんじゃないか?と。その証拠に、オススメすると皆さん買ってくださったんです」

大量に発注されたプリンは無事完売。
その後、2つ目の気付きにつながる、こんな出来事が起こったそうです。

「2つ目の気付きは、私たちはずっと、うちのメイン顧客は“ご近所のおばあちゃん”だと思って、“ご近所のおばあちゃんに必要なもの”をそろえて商売をしてきたけれど、そうじゃないかもしれない、ということです。ある日、プリンを買ってくださったご近所のおばあちゃんがうちに来て、“あのプリンはもうないのかい?うちの孫がおいしいと喜んで食べて、また食べたいって言ってるんだ”と。今考えれば当たり前なんですが、商品を買ってくれるのは“ご近所のおばあちゃん”であっても、そのおばあちゃんは自分以外の人のために買っているかもしれないですよね。自分以外の、家族や友人を喜ばせるために買い物をする。買い手の向こうにも、私たちのお客さまはいるんだと気付きました」

(店内にさりげなく飾られている、今は亡きお父さまと鈴木さんとのツーショット写真)

この2つの大きな気付きをきっかけに、鈴木さん親子は「プリンでの気付きを他の商品にも展開させて、もう少しやってみよう。これでダメだったら、店を閉めよう」と決め、「閉店はとりあえず延期」とされたそうです。そして徐々に、新潟県内外へとその名をとどろかせる、今のエスマートへと生まれ変わります。

「私が1番変わりました。“ありがとう”とお客さんから言われることが増え、仕事が楽しくなりました。スタッフも自分のオススメを売るから、楽しんで働いてくれるようになりました。うちのスタッフに守ってほしいとお願いしていることは、1つだけ。“お客さんがニコニコして、店を出ていってもらえるようにしよう”ということです。そのためにどうすれば良いかを、みんな考えてやってくれています」
と、仰る鈴木さんも終始ニコニコ。

楽しさが伝わってきます。

実は今も“閉店を延期中”

「実は今も“閉店を延期中”と思ってやっているんですよ。これでダメだったら閉めようと思って、毎日やっています」
と、鈴木さん。

「これでダメだったら…っていう改善点は、今でも毎日見つかります。改善できることだらけです。だから、ずっと“閉店を延期中”なんです(笑)」

この謙虚さに心打たれます。
この謙虚さが、今も改善を続け、たくさんの人を惹きつけるエスマートの秘訣なんだな。

今後の展望を伺うと、このように答えてくださいました。

「この先も店舗を増やそうとか、もっと店を大きく…とかは思っていません。ずっとこの五泉で、この場所で、もっと楽しく、もっと魅力を上げて、“この店が無いと人生つまらないわ”と言われるようにしたいです」

こだわりの自然栽培農家さん

最後に、五泉市の魅力的な方を2名ご紹介いただきました。

まず1人目は、秋から春にかけての週末は、エスマートさんで焼き芋を販売しているという、農園八兵衛の塩原さん。

「6・7年前かな、どうやって出会ったか忘れちゃったんだけどね(笑)、とにかくすごく感じのいいご夫婦で、無農薬・無施肥の自然栽培で野菜を作ってるんですよ。ちょうど今、店頭で焼き芋売ってるから、話聞いてみて!」
と、鈴木さん。

ナイスタイミング!(笑)
分かりました!お店の前の赤い暖簾の焼き芋屋さんですね!この後、お話聞いてきます!

同じ高校の先輩の卵屋さん

2人目は、養鶏場と卵の直売所を経営されている「キムラファーム」副代表の木村さんをご紹介くださいました。

「木村さんとの出会いもハッキリとは覚えてないんですけど(笑)、昔からキムラファームさんっていう卵屋さんがあるのは知ってたんです。それで、確か、“地元五泉を「食」で盛り上げよう”という企画があった時に初めてお会いしたように思います。話をしたら、同じ高校の先輩だったこともあり、すぐに親しくなって、飲みに行くようになりました。商売の規模や家族中心の経営など、共通する点が多いので、仕事の話もよくします。優しくて、頼りがいのある先輩です」

調べてみると、五泉市街地を挟んでエスマートさんのちょうど反対側、五泉市の東側、阿賀野川に近いエリアにある養鶏場でした。卵の直売所は、養鶏場に併設されているとのこと。白や赤の卵だけでなく、青やピンクの卵といった珍しい卵もあるそうで、これまた伺うのが楽しみです…!

ご紹介ありがとうございます!
おふたりのところへ、行ってきまーす!

鈴木さんの特別なこと
売る人も買う人も楽しい
スーパー経営
お腹いっぱい頂きました!
ごっつぉさまでしたー!!

鈴木さんの#マイごっつぉ

高立山山頂での朝のひととき

エスマート店長の鈴木さんにとって特別なこと「マイごっつぉ」は、ご自宅裏にある高立山(たかたてやま)山頂での朝のひととき。休みの日の早朝、天気が良ければ必ず、季節を問わず登ぼり、ご来光を拝みながら、山頂でコーヒーをいれて飲むひとときが特別な時間だそうです。昔から登ってらっしゃるのかと思ったらそうではなくて、「いい山だと気付いたのは10年くらい前です(笑)。小一時間で登れますし、山頂からの眺めも五泉市が一望できて最高です。日本の百名山を登っている知人も、“こんなにいい山はなかなかない”と言っていました」とのこと。時間がある時はそのまま山頂で、コーヒーを飲みながらスマホで映画鑑賞をするそうで、「“山頂シネマカフェ”と呼んでます(笑)」と鈴木さん。早朝だから誰もいなくて、全て独り占めの静かな空間。いいですね!私も常々こういう「ちょうどいい裏山が欲しい」って思ってるんです。早朝でも自宅からサッと登れて、気分転換ができる裏山。うらやましいです!「うらやま」だけに!(笑)これは五泉市のエスマート近くに引っ越すしかないかなー。楽しいエスマートにもすぐ行けちゃうなんて、最高ですしね!

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