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従業員・お客さま・世界の人々… みんなの「心の豊かさ」を考え、創る。 仏壇仏具屋さん 「アルテマイスター株式会社保志」が描く 明るく、広く、楽しい世界。

従業員・お客さま・世界の人々…みんなの「心の豊かさ」を考え、創る。仏壇仏具屋さん「アルテマイスター株式会社保志」が描く明るく、広く、楽しい世界。

あいづaizu
アルテマイスター

保志 康徳 (ほし やすのり)さんの自己紹介

「企業は人なり」と言われます。我々は会津のローカル企業ではありますが、キラリと輝く集団をつくりたいと日々精進しています。一人ひとりの社員の個性を、本人も気付いていない潜在能力を自然に引き出す環境作りを心掛け、一日一日を楽しく丁寧に過ごすことを生きがいとして取り組んでいます。アルテマイスターの社是は「豊かな心を創るをモットーに 限りなき企業努力を続け 世界の精神文化に貢献する」です。物心両面の豊かさを目指して、一人ひとりの心に自身への誇りを持って、夢や希望を実現しようとする原動力を生み出す「祈り」をテーマに、世界へ向けて発信する活動をしています。

会津のお菓子屋さん「太郎庵」の社長、目黒さん(ごっつぉLIFE会津3-1参照)からご紹介いただき、アルテマイスター株式会社保志の代表取締役社長、保志康徳さんを訪ねて、会津若松市郊外の本社へ伺いました。

(写真右の白い建物がアルテマイスターさんの本社・ショールーム・工場。※アルテマイスターさんご提供写真)

アルテマイスターさんは、会津で明治時代から120年以上続く仏壇仏具メーカー。製品の卸と小売りもされているため、大きな括りで「仏壇仏具屋さん」と呼ばせていただきます。

「アルテマイスター」は、英語で「祭壇」という意味のAltar(オルター)と、ドイツ語で「巨匠・名人・職人」という意味のMeister(マイスター)という2つの言葉から作られた造語です。「祭壇の職人」という心意気を、日本だけでなく世界に発信していきたいという思いで、20年ほど前に企業ブランド名として設定されたそうです。

仏壇仏具屋さんの概念が変わる

ところで皆さん、「仏壇仏具屋さん」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?
私ごっつぉライターの「仏壇仏具屋さん」のイメージは仏教のイメージと重なり、静かで厳かで、業界としては狭くて、絶対にふざけちゃダメ!「楽しい」なんて軽々しい言葉は似合わない世界…だったのですが、今回保志さんのお話を聞いて驚いたのが、保志さんが見ている・描いている世界はこれとは正反対の「明るく、広く、楽しい世界」だったこと。

しかも、「明るく、広く、楽しい」のは、今も、未来も、なんです。「こういう未来を描いている」…だけではなく、実際に今、こういう世界を、会社を、作ってらっしゃる。おそらくこの記事を読み進めていただくと、皆さんの中の「仏壇仏具屋さん」の概念・イメージが、ガラガラと音を立てて崩れ、変わっていくと思います。

順を追ってお伝えしますので、お楽しみに。

アルテマイスターさんの事業の全容

まず、アルテマイスターさんの事業の全容と、一般消費者である私たちが日常的に伺うことができる直営のお店をご紹介します。

事業は「仏壇・仏具・位牌の製造販売事業」。製造部門・卸売部門・小売部門の3部門で構成されています。

製造部門は、今回取材に伺った会津若松市郊外にある敷地面積約41,600㎡の大きな工場で、原木の買い付けから、加工・塗装・蒔絵・組み立てまでの一貫生産が行われています。工場には、200人を超える職人さんたちがいらっしゃるそうです。

(コロナ禍で一時休止となっていますが、一般の方でも工場見学が可能とのこと。詳細はこちらの案内ページをご参照ください。※アルテマイスターさんご提供写真)

卸部門は、日本全国の仏壇店や葬儀屋さんがお客さま。アルテマイスターさんは国内最大級の仏壇の生産量を誇り、日本各地に卸先があるそうです。

小売部門は、私たちのような一般消費者に向けて、仏壇仏具を販売するお店。ただ、木工雑貨や厨子など、仏壇仏具以外の製品も積極的に製造・販売されているところが、アルテマイスターさんのちょっと違うところ。「豊かな心を創る」と社是にある通り、「心を豊かにしてくれるモノ」を数多く揃えて販売されています。

この小売部門の直営店は、以下の3つの形態(お店)に分かれています。

1.仏壇仏具を販売する直営店「アルテマイスター保志

アルテマイスター保志の外観。※アルテマイスターさんご提供写真)

2010(平成22)年にオープンした、会津若松市内中心部にあるお店。外観からも分かるとおり、モダンでデザイン性の高い仏壇仏具を取り揃えていらっしゃいます。古いお仏壇のクリーニングや作り替えを行う「お仏壇のリフォーム」サービスなどもあり、供養や祈りにまつわるご相談を総合的にこのお店で受け付けているそうです。

2.心を豊かにしてくれるモノとコトを扱うギャラリーショップ「スペース・アルテマイスター

スペース・アルテマイスター外観。※アルテマイスターさんご提供写真)

2010(平成22)年にリニューアルオープンした、仏壇仏具以外の「心を豊かにしてくれるモノ」を販売するお店。先ほどのアルテマイスター保志と道を挟んで向かいにあります。仏壇を作る際に出る端材を使って社内の職人さんが作った木工雑貨や、社外企業さんとのコラボ商品(取材に伺った2023(令和5)年1月には、お菓子屋さんとのコラボでオリジナルチョコがありました!)、社外アーティストさんの作品など、仏壇仏具と少し関係があるものから、全く関係のないものまで販売されています。取り扱い商品の一部は、オンラインショップ「こめら」でも購入できます。

ショップの奥は、イベントスペースとなっており…

(明るく開放感あふれるスペース「茶の間」。※アルテマイスターさんご提供写真)
(古い酒蔵をリノベーションした「木の蔵」。※アルテマイスターさんご提供写真)

端材を使った工作ワークショップやコンサートなど、さまざまなイベントが開催されています(イベント情報は、スペース・アルテマイスターさんのInstagramをご参照ください)。

この「茶の間」と「木の蔵」、取材に伺った日は定休日だったため特別に開けていただいたのですが、どちらの空間も素晴らしかったです。特に「木の蔵」の美しさには息を飲みました。ある音楽家の方が「どうしてもここでコンサートを開きたい!」と懇願されたことがあったそうですが、そのお気持ち、分かります。今度はプライベートで、イベント開催時に伺いたいと思っています。もしくは、私があの空間をお借りしてイベントを開催したい!(笑)…そのくらい印象的で魅力的でした。

ぜひ行ってみてください。

3.新しい祈りのかたちを提案「ギャラリー厨子屋」

ギャラリー厨子屋の内観。※アルテマイスターさんご提供写真)

こちらは会津ではなく、東京銀座にあるギャラリー兼ショップ「ギャラリー厨子屋」。実は先にご紹介した「アルテマイスター保志」「スペース・アルテマイスター」よりも昔、2002(平成14)年のオープン。「厨子(ずし)」という「大切なものを納める箱」を、現代の祈りのかたちとして提案するショップです。

この「厨子」および「ギャラリー厨子屋」は、「100年先にも会社を存続させるために」と、1999(平成11)年に立ち上がった社内プロジェクト「プロジェクト21」によって推進された経営改革の1つ。仏壇仏具の製造技術を活かしつつ、現代のライフスタイルや価値観に合うデザインにすることで、「厨子に大切なものを納め、心のよりどころにする」という現代の祈りのかたち、仏壇とは違う祈りの新たな概念を提案されています。

こちらは東京銀座の百貨店「松屋銀座」にも、2020(令和2)年から「厨子屋 松屋銀座店」という名で常設出店されています。

厨子屋 松屋銀座店 の様子。※アルテマイスターさんご提供写真)

既成概念に囚われない姿

はい、やっとここまでで、アルテマイスターさんの全容をお伝えできたと思います。どうですか?どれもこれも、明るく洗練されたものばかり。「仏壇仏具屋さん」の既成概念に、アルテマイスターさんが全く囚われていらっしゃらないことが分かると思います。

このアルテマイスター株式会社保志を率いてらっしゃる、代表取締役社長 保志康徳さんにお話を伺いました。

「私は継ぎません」決別宣言

保志さんは6代目社長。創業者は保志さんのひいおじいさまに当たる方で、そのあとを継いだおじいさまからは、ことあるごとに「お前も後を継ぐんだぞ」と言われていたそうです。

「私はその頃から、継ぐ気なんて全くなかったんです。きょうだいやいとこもたくさんいましたし、私じゃなくてもいいだろう…と。それに、小学生の頃に友人から“お前の家は、他人の不幸で飯を食っている”と言われたことがショックでね…。なので、中学生になって、“これはハッキリ言っておこう!”と思い、祖父に決別宣言をしに行ったんです」

決別宣言!?

「そう、“私は継ぎません”と、言いに行った。友人から言われてショックだった話も伝えました」

家業に戻る際に蘇った祖父の言葉

おじいさまはさぞかし悲しまれただろう…と思いきや、そうではなく…

「私も怒られること・悲しませることを覚悟で言いに行ったんですが、祖父は嫌な顔ひとつせず、ニコニコと笑いながらこう言ったんです。“仏壇仏具を買いに来る人の気持ちを考えたことがあるか?親を亡くした、子どもを亡くした、とみんな悲しい気持ちで来る。しかし仏壇に手を合わせるとその悲しさが和らぐ。こんな尊い商売はないぞ”と」

おぉ…
それで後を継ぐことを決心された…と?

「いやいや、その時はもう、決別宣言だ!と思って祖父のところへ行きましたから、何を言われても“はい、そうですか。でも私は継ぎません”と言い切って帰ってきました(笑)。でも、私に“家業に戻れ”と声が掛かった時、脳裏に蘇ったのはこの時の祖父の言葉です。全く別の仕事をしていましたし、もともと戻る気はなかったので、正直迷いましたが…」

この時もまだ「これを商売にしていいのか?」という、仏壇仏具屋としての商売に迷いがあったと言う保志さん。それでも、この時のおじいさまとのやりとりを思い出し、「自分なりに真心を込めてやればいいのかな」と踏ん切りがついたと言います。

現在のアルテマイスターの姿は「プロジェクト21」から

保志さんが家業に戻られたのは1993(平成5)年のこと。神戸支店(現西日本支社)での営業の仕事を経て、1999(平成11)年に会津の本社工場へ戻ると、業績低迷で士気が下がった職人たちの姿が。「このままではいけない」と、当時社長であった保志さんの伯父(現会長)が立ち上げられたのが、社内プロジェクト「プロジェクト21」。

業績向上を目的として…
■3箇所あった工場を1箇所にまとめて効率化を図る
■営業部と生産部の仕事場をまとめて、お互いの仕事が見えるようにする
■業界外の展示会に出展して、それまでとは異なる層の人たちに会社の存在と商品をアピールする
という実務的な内容だけでなく、「現代に求められる商品づくり」と「働く人の心の充実」に特に力を入れ、
■働く環境の整備
■技術継承のためのベテラン、若手の交流促進
■基本に立ち返ったものづくりの勉強会
■国内外で活躍するクリエーターとのコラボレーション
というような取り組みを行ったと言います。

「社外からのアドバイザーも迎え、社内外の話し合いや説得を重ねながら、新生保志=アルテマイスターへと大きく変わるきっかけとなりました。話し合いの中では、立場や経験によって意見が割れることもありましたが、“極力リストラをしないこと”という点は全員の意見が一致していました。“人を大事にする。”これが、今日までアルテマイスターに脈々と伝わる理念だったからだと思います。このプロジェクトを経て、現在では社員一人ひとりが働く意欲を持てる環境で、現代の暮らしに見合う製品が数多く生み出せるようになったと感じています」
と、保志さん。

(現代のインテリアにもマッチする製品を、空間演出と共に提案。こちらは2015(平成27)年頃の本社ショールームの様子。)

社員の“ものづくり”を応援する

「プロジェクト21」から始まった動きは採用にも。特に保志さんが社長に就任された2003(平成15)年からは、「好不況にかかわらず、新卒社員を毎年10名ほど採用している」とのこと。今では社員の約3分の1が20~30代だそうです。

「ものづくりがしたいと言って応募してくれる方がほとんどです。しかも、福島県外出身者が6割。ほんとよく来てくれるなぁと、感謝です。この彼らの“ものづくりがしたい”という気持ちに私も応えたいと思っていて、個人の作家活動みたいなことも当社は応援しているんです。スペース・アルテマイスターで、社員が作った作品を販売することもあるんですよ」

スペース・アルテマイスターにて、社員の作品を販売している様子。※アルテマイスターさんご提供写真)

働く人が自分の夢を叶えられる会社に

社員さんの作家活動を応援するお話の続きで、保志さん曰く…

「もっと言うと、会社というものの概念を変えていきたいと思っているんです。会社・企業って、手段の1つでいいんじゃないかな、と。働く人にとって、幸せづくりの場所と時間が提供される手段の1つでいいと思うんです。会社・企業はそのために、働く人が十分に個性を発揮してもらえる場にする。…そんな風になるといいなと思って、今いろいろ考えています。働く人が自分の夢を叶えられる会社にしたいな、と思ってるんですよね」
と。

すでに「仏壇仏具屋さんの概念」を変えてこられた保志さん。次は「会社の概念」を変えたい、と。…恐れ入りました。目を輝かせてお話くださっていたので、明るく楽しい未来を描いていらっしゃることがよく分かります。

世界に日本の「利他の文化」を発信したい

最後に今後の展望を伺うと、先ほどの「社員の夢を叶えられる会社にしたい」ことと、「もうひとつ…」とお話くださったのは、とってもスケールの大きなこんなお話。

「社是にあるとおり、当社の最終的な目的は“世界の精神文化に貢献する”ですから、やはり世界へ、目を向けたいです。具体的には少し動き始めているのですが、実はフランスのパリにギャラリーがありまして…」

パリに!?ギャラリー!?

「そうなんです。まずはそこを拠点に、“日本の衣食住+祈り”というコンセプトで、日本の利他の文化(他人に利益となるように図ること、自分のことよりも他人の幸福を願うこと)を世界に発信していこうと考えています」

はぁ…なるほど…。なんだかスケールが大きすぎて、ちょっと私の想像と理解が追い付いていませんが…(笑)。

「西洋の文化だと、やはり“我”が強いでしょう?自分の意見をしっかりと持って、自分が自分が…という文化。でも日本はそうじゃない。他人のことを思う気持ちが強い。もちろんどちらも良い面と悪い面、両面あると思いますが、世界平和を願うとするならば、この日本の利他の文化はもっと誇っていいもの、自信を持って世界に発信していいものだと思っています」

驚きの連続だったこの取材

仏壇仏具屋さんと聞いて伺った、アルテマイスターさんの取材。保志さんとお話をすればするほど、アルテマイスターさんのことを知れば知るほど、驚きの連続でした。もちろん全て良い意味で。こんなにも仏壇仏具の世界・業界を、明るく、広く、楽しく見ている方は他にいないんじゃないかと思うほど、徹底されていました。暗さや狭さは、どこにも感じませんでした。

特に最後の「利他の文化」のお話は、利他を大切に考える「三方よし」が根付く“会津らしさ”(ごっつぉLIFE会津2-1会津2-2参照)も感じられて、ホッコリ…。

これからもさまざまな概念を変えていかれるであろう、アルテマイスターさんに今後も注目です!各店舗もとても入りやすい雰囲気でしたので、会津に行った際、そして東京銀座に行った際に、気軽に立ち寄ってみてください。私も今度、銀座の「ギャラリー厨子屋」に行ってみよーっと♪

保志さん、今回取材をさせていただき、世界が広がりました。ありがとうございました!

保志さんの特別なこと
祈りを通して実現する
明るく、広く、楽しい世界。
お腹いっぱい頂きました!
ごっつぉさまでしたー!!

保志さんの#マイごっつぉ

仏壇の端材から生まれた「木のコビト」

アルテマイスター株式会社保志 代表取締役社長の保志さんにとって特別なこと「マイごっつぉ」1つ目は、仏壇の端材から生まれた「木のコビト」。…おっと、この子たちは何者ですか?(笑)「仏壇や位牌を作る際に、いろんな形の端材が必ず出るんです。今までは捨てるだけだったのですが、これを工作キットのように袋詰めにして販売しています。この子たちは、その端材を組み合わせて生まれた、木のコビトですね(笑)」と保志さん。お仏壇やご位牌に使う木材は貴重なものも多いため、ユニークな形だけでなく、さまざまな木材に触れられるのも魅力の1つだそうです。「これも若い社員たちが発案してくれて生まれたものです。これまでの仏壇仏具の既成概念にとらわれない、自由な発想があってこそですよね。私にとってこの商品が生まれたことも、特別なことです」と保志さん。この「木のコビトキット」は、スペース・アルテマイスター実店舗だけでなく、オンラインショップの「こめら」でもお買い求めいただけます。とってもかわいい!子どもの夏休みの工作などにもピッタリですね♪

本社工場3階の食堂「スカイビュー」からの眺め

株式会社保志 代表取締役社長の保志さんにとって特別なこと「マイごっつぉ」2つ目は、本社工場3階の食堂「スカイビュー」からの眺め。会津盆地・会津平野が一望でき、四季折々の変化が美しいとのこと。遠くには飯豊山も。「何にもないんですけどね(笑)。それがまた良くて。本社周辺はほとんど田んぼですから、四季の変化が素晴らしいです。春は田植えで水が張られキラキラと輝き、夏は青々と稲が茂り、秋は黄金色に。冬はこの写真のように一面真っ白です」と保志さん。ほんと!一面真っ白!空の青さのコントラストも相まって、圧巻の景色ですね!保志さんのこのマイごっつぉもそうですが、会津の皆さんが四季折々の会津の景色を愛してらっしゃることが、取材を通してよく分かりました。こりゃあ、1年、会津に滞在しなきゃだな!四季折々の会津の景色、見てみたい!

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