冨山 敦史 (とみやま あつし)さんの自己紹介
生まれは東京、育ちは長岡。大学を卒業してすぐ、「らーめん処 潤 蔵王橋店」のオープニングスタッフとして就職しました。2006(平成18)年に叔父が三代目社長を務める肥料・農薬の卸売業「株式会社 冨山」に入社。新業態として走り出していた農産物直売所の経営を24歳の時に任され、新潟市東区の卸団地に「ピカリ産直市場 お冨さん」をオープン。右も左も分からない状況で、農産物を販売させてもらうためにひたすら農家さんの畑を回った時期もありました。2010(平成22)年にピアBandai店がオープンし、2015(平成27)年に統合。2023(令和5)年でオープンから17年になります。
新潟市の中心市街地・万代。
平日でも多くの観光客が訪れる「みなとのマルシェ ピアBandai」で農産物直売所「ピカリ産直市場 お冨さん(以下、お冨さん)」は営業しています。
ごっつぉライターの私にとっても、毎月お邪魔しては新潟の旬の食材を購入する定番の買い物スポット。
新潟県産の野菜や果物はもちろん、調味料やお米、スイーツや米菓まで、思わず手が伸びてしまう魅力あふれる新潟の商品がたくさんあります。
お冨さんで販売されている商品の裏側や新潟市の農産物への想いを、取締役・マネージャーの冨山敦史さんに伺いました。
「新潟市で一番おいしい農産物、そろえています!」
マネージャーとして店舗統括をしながら、商品の企画開発、国内外で行われる催事への出展など、常に新しい挑戦を心掛けている冨山さん。
新潟市で栽培された農産物に新しいネーミングやパッケージを作り、商品価値を付けて販売するのも重要な仕事だと言います。
「最初に『天使の唇』という名前のミニトマトをリリースして、その後に『天使の初恋』というオリジナルの『越後姫』を販売。
2年前から、新潟市で収穫される幻の黒イチジク『ビオレ・ソリエス』を『天使の元彼』とネーミングして販売し始めました。
新潟県内でも新潟市北区、江南区、西区で栽培された農産物を販売しているので、その中でブランド化するべき隠れた名品に新しい価値を付けて販売しています」
この日、店に入ってすぐ目に飛び込んできたのは、ずらりと並んだ「越後姫」。
一般的なスーパーでも売られている新潟県産ブランドイチゴですが、お冨さんで販売されているイチゴは見た目から違います。
驚きの手の平サイズ!一つ一つ丁寧にパック詰めされていました。
お冨さんでブランド化された「天使の初恋」は、一粒280円とイチゴにしては高値ですが続々と売れていきます。
大きな粒と、驚くほど甘くてジューシーな味わい。
あっという間に数が少なくなってしまった「天使の初恋」の棚を見て、「新潟市の農産物の価値を上げたい」という冨山さんの言葉が頭に浮かびました。
「店を営業する上で、根本にあるのは『農家さんの収入を上げること』。
その結果、耕作面積が増えていけばいい循環ができると考えています。
農産物直売所が売り上げを上げるためには自己利益も大切かもしれませんが、農家さんの利益を上げることが最優先。
そのために、農家さんだけでは手が回らないことを我々がやらなきゃいけない。
一般的なネーミングではつまらないので、おかしくてもインパクトのある名前をいつも意識しています」
ひとくせあるネーミングで特徴を表現
「天使シリーズの名前は、それぞれの特徴から付けたもの。
ミニトマトの『天使の唇』はすごく食感が柔らかくて、初めて食べた時には衝撃を受けました。
天使の唇は誰も触れたことがないものだから、そこから『初めての食感を味わってほしい』と思って。
イチゴの甘酸っぱさは初恋を連想させたので『天使の初恋』。
一番悩んだのが黒イチジクの『ビオレ・ソリエス』です」
「真っ黒な見た目なので最初は『デビルの〜』と、天使に対抗するようなネーミングを考えていましたが、先駆けとなったミニトマトよりも、イチゴよりも、一番糖度が高いことに気が付いて。
見た目は悪い奴のようなのに、すごく甘い。
そこから、昔付き合っていた実はいい奴というキャラ設定で、「天使の元彼」に変えました(笑)。
口にした瞬間驚くはずです。今まで食べてきたものと違う!って」
「新潟にはおいしいものがある」
冨山さん渾身のネーミングが光る天使シリーズ以外にも、お冨さん独自で開発した商品はたくさんあります。
現在販売されているものでは、新潟県内各エリアのコシヒカリを食べ比べできる「釜炊きパックご飯」がオリジナルで開発されたもの。
ぬか釜で炊いた「釜炊きパックご飯」は全6種類。
メジャーな産地もあれば、岩船山北や、魚沼広神など、さらに深掘りした産地のものもありました。
産地違いで購入し、県外で暮らす親族や友人に贈るのも喜ばれそう!
ごっつぉLIFE編集部が取材でお邪魔した際には、天使シリーズのミニトマト「天使の唇」を原料に使用したノンアルコールのレッドアイ(ビールベースのカクテル)「とまとびーる」も販売されていたのですが、惜しくも2023(令和5)年5月時点では販売中止。
フレッシュなトマトの甘みが口いっぱいに広がり、食事のおいしさを引き立ててくれる逸品だったので、再販に期待しましょう!!
それにしても、お冨さんには新潟の本当にいいものがそろっています。
「品ぞろえもアピール力もまだまだですけどね。新潟のものはいいものばかりですから、しっかりこのおいしさを伝えたいです」
冨山さんの熱意は新潟を飛び出し、日本全国、海外でも、農産物の販売を行っています。
「タイ・バンコクへの輸出はコロナ以前から始めていて、イチゴ、キャベツ、しいたけ、なめこなど、約30品目を販売しています。
配送には不向きと言われている『越後姫』も、空輸でタイまで運べるようになりました。
富裕層の方を中心に、海外でも新潟の農産物は好評です」
フリーペーパーやバーチャル店で農産物の物語を伝える
日頃から農産物が作られている背景や、そこで⽣まれる物語を紹介することに⼒を⼊れている冨⼭さん。
お冨さんの店内では県産野菜や果物が表紙を彩る無料誌を⼿に取ることができます。
「年に3回『ぴかり』というフリーペーパーを出していて、創刊から4年になります。
なかなか表に出ることのない農家さんたちを取り上げ、誌面を作って、冊子を出す。
『今度は動画にしたいね』なんて提案しながら、農家さんの魅力を発信する方法を常に模索しています」
お冨さんの営業を通じ、農家さんとの信頼関係を築いてきた冨山さん。
取引先というよりも家族のような距離感で農家さんに寄り添ってきたことが伝わってきます。
2022(令和4)年12月から始めたばかりのバーチャル産直市場も、冨山さんの想いが形となった新サービスです。
「インターネット上でいつでも来店できるバーチャル店は、店内の各エリアをリアルに見ることができ、気になった商品はECサイトを介して購入することもできます。
今はまだ未完成の状態ですが、今後は農家さんのインタビューや、農家さんがなぜこの農産物を作っているのか、想いや物語を知れるような設定にしていく予定です。
作り手の話を聞くことで、さらに農産物のおいしさが増してきますよ」
生産者の思いを代弁。「勉強熱心な新潟市の農家はカッコいい」
「今後は新潟市内他エリアでの店舗展開や、空港・駅との連携も強化していきたい」と目標を語ってくれた冨山さん。
そのバイタリティーは一体どこから生まれているのだろう…?
「新潟市の農家さんはとにかく勉強熱心。
『米に頼ってらんねえ』というのもあるけど、いかにおいしく作るかをどの農家さんも非常に研究しています。
とことんこだわって作られた農産物を上手く売らなければもったいない。
お冨さんに来ていただくことで新潟市の農家さんの魅力を知っていただき、『農家ってカッコいい!』と感じてもらえるきっかけになれたらうれしいですね」
発想がおもしろい実力派生産者
最後に、冨山さんから新潟市で活躍する魅力的な方を2名ご紹介いただきました。
1人目は、新潟市西区ですずまさ農園を営む堀さんご夫妻。
出荷者として夫の堀将大さんと出会い、生粋の農家ではなく元サラリーマンらしい自由な発想、理論的な考え方に「引き寄せられるものがある」とのこと。
「尊敬する農家さんの一人です。ちょっと変態チックなところもあるけど(笑)」と冗談混じりに紹介してくれました。
新潟県産米を使ったおにぎりのセレクトショップ
2人目は、話題のグルメスポット「BANDAI FOOD HALL」内で営業する「農家の息子がつくる食堂 さんかくとまる(以下、さんまる)」店長の本間さん。
さんまるで使用されている米はお冨さんが卸しているものということもあり、「新潟のおいしいものを味わうならココ」と冨山さんも太鼓判!
「若さと勢いを感じさせる彼らしい生き方にも応援したくなるものがある」と教えてくれました。
どんなお話が聞けるのか、今から楽しみです。
ご紹介、ありがとうございましたー!
お店の情報
ピカリ産直市場 お冨さん
新潟市中央区万代島2 ピアBandai内
電話番号:025-384-4077
営業時間:9:00~19:00(1・2月は〜18:00)
定休日:1/1~1/4
HP:http://www.otomisan.com
バーチャル店:https://mob3dvr.jp/otomisan