ロメロご夫妻の自己紹介
ロメロ・アンタルキさん【ホンジュラス / コスタリカ出身】
2007(平成19)年から3年間、文部科学省の公費留学生として新潟大学大学院で学びました。2016(平成28)年に個人事業として創業し、中米の高品質のカカオ豆とチョコレートの輸入販売をスタート。2022(令和4)年に法人化し、ロメロトレード株式会社を立ち上げました。現地のカカオ農家を案内するツアーやチョコレートのセミナー・イベントの企画・運営も行っています。趣味はチェロ演奏、トライアスロン、パラグライダー。新潟弁勉強中です!
金田 彩夏(かねだ あやか)さん【新潟市出身】
大学生の時にロメロと出会い、コスタリカで結婚しました。現地のインターナショナルスクールなどで日本語や日本文化を教えていましたが、夫と一緒に決めた起業に向けて2016(平成28)年日本へ帰国。主に広報マネージャーとして、事業推進に努めています。趣味は言語を学ぶこと、海外旅行、ヨガ、ポイント制ゴミ拾い。
廣川さんからご紹介いただいた、ロメロトレードさん(詳しくは「ごっつぉLIFE新潟市2-1」を参照)。どうやら「ロメロさん」という中米出身の男性の方と、「金田さん」という新潟市出身の女性の方おふたりで立ち上げられた会社で、おふたりはご夫婦だということ。
その他、調べてもあまり詳しいことは出てこず、少し謎に包まれたまま取材に伺ったのですが、とても穏やかで優しいご夫婦が丁寧に対応してくださり、取材を終えて帰る頃にはすっかりカカオ豆とおふたりの虜に…。廣川さんが「ぜひ会っていただきたいです!」と仰っていた理由がよく分かりました。
ロメロトレードさんは、中米産の高品質カカオ豆やチョコレートを輸入し、日本国内に販売する会社。主に洋菓子屋さんやケーキ屋さんへの卸がメインで、その取引先は新潟県内が4割・県外が6割とのこと。ビジネス上の利点を考えたら、東京に拠点を置いた方が優利だと思うのですが、なぜ新潟で事業を立ち上げたのか?その理由を探ると、ライフスタイルから考える仕事のあり方と、私たち新潟県民が気付かぬうちに肥やしていた“あるもの”に気付かされました。
まず、カカオって何?
廣川さんも仰っていた通り、まず「カカオって何?」「カカオ=チョコレートじゃないの?」という状態の私、ごっつぉライター。まずはその基礎知識を教えていただきました。
まず「カカオ」という言葉は、チョコレートやココアの原料となる「カカオ豆」と、そのカカオ豆が採れる実や木を指す場合があります。そのため、この記事では、実のことを「カカオフルーツ※」、木のことを「カカオの木」と呼び分けます。
※「カカオポッド」と呼ばれることもあります。
このカカオフルーツを割ると、中から「パルプ」と呼ばれる白い果肉が出てきます。その果肉に覆われるように入っている種が、カカオ豆です。1つのカカオフルーツには、30~40粒の種=カカオ豆が入っているそうです。
カカオ豆は、この白い果肉と共に取り出して1週間ほど発酵させます。白く甘い果実は発酵の過程で種に吸収されてなくなり、種の中の成分が変化して香りが醸成されるそうです。
カカオ豆の香り“アロマ”の決め手は「発酵」と「焙煎」
「カカオ豆の香り“アロマ”の決め手は2つあって、まず1つ目はこの発酵なんです。しっかりと発酵させることが大切なんですが、早く出荷してお金に変えたいと思う生産者さんは、発酵が浅いまま出荷してしまうので、私たちが取り扱うものに関しては、私たちが望む状態まで発酵してもらえるように、お願いしています」
と金田さん。
十分に発酵されたカカオ豆はその後、しっかりと乾燥させます。これが一般的に「カカオ豆」という商品名で取引される状態のものです。
カカオ豆がチョコレートになる次の工程は「焙煎」。
ここが2つ目のアロマの決め手だそうです。
「カカオ豆をどんな風に焙煎するか?は、作り手さんの腕の見せ所。焙煎の仕方で、またアロマが変わります」
カカオ豆は栄養価の高いスーパーフード
このお話を聞きながら思い出したのは、佐渡で訪ねた莚カカオクラブのショコラティエ勝田さんのこと(「ごっつぉLIFE佐渡市1-3」参照)。確か、勝田さんのところで購入したチョコレートの原材料は「カカオ豆、砂糖」の2種類だけだったな…と。
「あぁ!勝田さん!お会いになったんですか?勝田さんもうちのカカオ豆を使ってくださっています」
なんと、ここでつながるとは!
あの時、原材料がたった2つ「カカオ豆、砂糖」だったことに驚いたこと、そして取材当日の夜、ものすごく疲れていた私を、あのチョコレートが癒してくれたことをお伝えすると、
「そうなんです。本来チョコレートはその2つだけで作れるんです。でも、今世の中に出回っているチョコレートは、他のいろんな材料を混ぜてあるものが普通になっていて…。本来カカオ豆は、栄養価の高いスーパーフードなので、できるだけ他のものを混ぜずに味わっていただきたいです」
と金田さん。
カカオ豆はマグネシウム・カルシウム・亜鉛・鉄分などが豊富に含まれており、スーパーフードとして特に欧米で人気が高いそうです。グッタリして動けなかった私が、勝田さんのチョコレートを食べて元気になったのは、気のせいではなかったんですね!
コーヒーやお茶のように、チョコレートも品種で選ばれる時代が来る
本来、栄養価が高く、さまざまなアロマが楽しめる高品質カカオ豆を日本に届けるため、ロメロご夫妻がこだわってらっしゃるのは、カカオの木の育て方にまで及びます。
カカオの木は自然に品種が混ざってしまう植物だそうで、品種別にしっかりと育てる場所を分け、間隔を空けて品種が混ざらないように、単一品種で育てるようにお願いしているそうです。手間もかかりますが、その分、高価格で取引ができる高品質のカカオ豆ができる。その重要性に生産者の方も気付き、協力してくださっているとのこと。
「チョコレート業界は少し遅れていて、原材料のカカオ豆が品種で選ばれていないんです。カカオ豆も品種によって味も香りも違うので、チョコレートも必ずコーヒーやお茶のように、品種で選ばれる時代が来ると思っています」
と金田さんは仰っていました。
ロメロトレードさんが取り扱う商品には、全て産地と品種が書かれています。これは業界的にも珍しいことだそうです。チョコレート業界の先駆者が、ここ新潟にいらっしゃるなんて…。考えてもみなかったな…。
おふたりの出会いも、ここ新潟
カカオ豆のこと、チョコレートの今についてはよく分かったので、次はおふたりについて伺ってみました。中米の国、ホンジュラス生まれ、コスタリカ育ちのロメロさんと、新潟市生まれの金田さんが、どこで出会い、そしてなぜ新潟でビジネスを始められたのか?
「16歳の時に、父親の仕事について来たのが、初めての日本でした。その時、新潟のことは全く知らなかったので、文部科学省の国費留学生として新潟大学の大学院への入学が決まった時、“え?新潟?どこそれ?”と思って調べました(笑)」
とロメロさん。
16歳の時、お父様の商談に立ち会う中で見た、東京を中心とした日本企業の洗練されたオフィスや技術に触れ、日本に良いイメージを持って帰ってくださっていたものの、新潟はご存じなかったみたいです(笑)。
「でも来てみたら、すごく良かった。食べ物はおいしいし、山も海も近くにある。人はみんな親切。雪はアメージング!女性はみんなキレイ(笑)」
妻の金田さんと出会ったのもこの頃で、金田さんのバイト先でゲストとして、ロメロさんがチェロの演奏をしていたのが初めて会った日。その後「スペイン語を習いたい」と言う金田さんに、知人から紹介されたのがロメロさんだったそうです。
「でも、結局教えてくれなかったんです(笑)」
と金田さん。
…え?(笑)
「教え方っていうんですかね?なんか、そういうのが合わなくて(笑)」
…でも、金田さん、スペイン語を教えてもらえないまま、一緒にコスタリカに行って、ご結婚されて、現地でお仕事もされていたんですよね?
「そう。すごく優秀でしょう?彼女。コスタリカで日本語の先生もしていたし、彼女が教えた生徒さんがコンテストで表彰されるくらい、素晴らしい先生だったんですよ」
と笑うロメロさん。
いや、ほんと優秀。そして度胸がある。すごいなぁ…。こういう女性が新潟にいらっしゃること、なんか、うれしく思いました。カッコイイ!
「日本に帰りたい」とロメロさんが言う(笑)
2010年に大学院を卒業し、コスタリカに帰国後、金田さんと結婚したロメロさん。コスタリカでの生活を始めた後も、何度も「日本に帰りたい」とロメロさんが言っていたそうです(笑)。
「コスタリカで私たちが住んでいた場所はシティだったんですね。私がしたいライフスタイルに合わなかった。自然が近くにあって、食べ物もおいしい、新潟を恋しく思っていました」
とロメロさん。
「私も改めて海外へ出て、日本での安全な暮らしの貴重さを感じましたし、新潟のおいしいお米・お酒、温かい人たちが好きだなぁと。東京のような都会の生活は、私たちのライフスタイルには合わないと感じていたので、日本で起業するなら新潟で!と決めていました」
と金田さん。
結婚当初から考えていたという、日本での起業。しかし、事業を中心に考えるのではなく、「自分たちが送りたいライフスタイル」を中心に考えたおふたり。だから、東京ではなく、新潟だったんですね。
肥えた舌を持つ新潟県民が登竜門に?!
ご結婚後数年が経った2016年、おふたりは日本で立ち上げる事業を、「中米産の高品質カカオ豆とチョコレートの輸入販売」に決めました。
この最初のきっかけは、ロメロさんのお父さまからもらったチョコレート。地元コスタリカ産の高品質カカオ豆を使用した「シブチョコレート」というチョコレートでした。そのおいしさにおふたりとも衝撃を受けたそうです。そして、シブチョコレートの農園・工場へ見学に行き、カカオ豆の魅力に引き込まれたそうです。(現在この「シブチョコレート」の商品は、ロメロトレードさんが日本総代理店として輸入販売を行ってらっしゃいます)
衝撃を受けた、本物のチョコレートのおいしさ。
大切なのは、このおいしさを理解してくれる人。
新潟で事業を立ち上げたもう1つの理由は、ここにあるそうです。
金田さん曰く、
「高品質カカオ豆とチョコレートの輸入販売を日本で成功させるためには、この“本物のおいしさ”を分かってもらえる人が必要です。そう考えた時、新潟の皆さんは、普段からおいしいものを食べているので、舌が肥えている。その舌の肥えた皆さんに認めてもらえれば、東京を始め日本全国通用すると、私たちは考えています」
とのこと。
新潟県民の皆さん!皆さんが登竜門です!
新潟県民の舌を唸らすことができれば、日本中に通用するということ。
確かに、当たり前のようにおいしいものを普段から食べている私たちの舌は、知らぬ間に肥えているんでしょうね。自信持っていいんだわ。うわー、なんか、すごい能力を手に入れた気分!(笑)
夢は「新潟カカオ計画」の実現
最後におふたりの夢を聞いてみました。
「新潟でカカオの木を育てて、そのカカオ豆でチョコレートを作ること。題して、“新潟カカオ計画”です!(笑)」
とロメロさん。
そう言えば、新潟市秋葉区にある新潟県立植物園にも、カカオの木があると聞きました。それも関係しているのかしら…?
「植物園さんのカカオの木にも関わらせていただいています。木自体は以前からあったみたいなんですが、“上手く育たなくて…”とご相談いただいたことがきっかけです。その後、私たちが持ってきたコスタリカ産のカカオの木も育てていただいています。どちらも実を付けるところまではいったんですが、大きくならずに落ちてしまって…。これからですね!」
と、金田さん。
カカオ豆やチョコレートに関するセミナーやイベントなど、さまざまな体験型の情報発信を積極的にされているおふたり。これからも精力的に、カカオ豆とチョコレートの魅力を伝えて行かれることでしょう。
ロメロトレードさんが扱ってらっしゃる商品は、一般の方でも公式サイトのオンラインショップから購入ができます。気になった方は一度召し上がってみてください。特に新潟県民の皆さん!肥えたその舌で、確かめてくださいね!
ロメロご夫妻、楽しいお話、おいしいチョコレートをありがとうございました!