
中島さんご夫妻の自己紹介
中島 健太(なかじま けんた)さん(左)
東京都出身。調理師専門学校卒業後、イタリアンレストランで経験を積み、東京都・千歳烏山のイタリアン「aperto(アペルト)」のシェフとして約7年間腕を振るいました。2023年、妻子とともに三条市へ移住し、「ポルテ」をオープン。旬の食材を用いた料理や焼き菓子づくりに励んでいます。休日は農産物直売所などを巡り、季節の食材を探すのが楽しみです。
中島 美紗(なかじま みさ)さん(右)
三条市出身。大学進学を機に上京し、音楽関係の仕事に従事しました。結婚・出産を経て、故郷の三条市へUターン。「ポルテ」では接客を中心に、クッキーなどの焼き菓子づくりも担当しています。休日は家族でおいしいものを食べに出掛けたり、公園で子どもと過ごしたりする時間を大切にしています。
PROLOGUE

「世界大会でグランプリに導いてくれた恩人の一人です。家族ぐるみでも仲良くさせてもらっています」
前回ご登場いただいた「ジェラテリアココ」の佐久間康之さんにそうご紹介いただきやってきたのは、「ただいまーと」から車で約20分。三条市興野にある「カフェ ポルテ」です。
扉を開けると、目に飛び込んでくるのは天井いっぱいに飾られたドライフラワー。

木のぬくもりと柔らかな灯りに包まれた店内には、どこか肩の力が抜けるような穏やかな雰囲気が漂います。ごっつぉライターの私も、思わず「かわいい~!」と声が漏れてしまうほど、乙女心をくすぐられる空間です。(お、乙女?)

この店を営むのは東京都出身のシェフ・中島健太さんと、三条市出身の美紗さんご夫妻。東京の人気イタリアン「aperto(アペルト)」の2号店として2023年にオープンしました。
今回は、中島さんご夫妻に、三条で店舗を構えることになった経緯や、お店づくりへの思いについて伺います。心地よい空間の裏側には、二人が大切に育んできた人とのつながりがありました。
INTERVIEW
地域とともに育つカフェ

「ポルテ」で提供しているのは、具だくさんのサンドイッチや香ばしく焼き上げたフォカッチャ、季節ごとに内容が変わるパスタ、焼き菓子、ケーキ、ドリンクなど。イタリアンをベースにしながらも、気軽に味わえるメニューがそろっています。
単品はもちろん、セットメニューも充実しているので、その日の気分やお腹の具合に合わせて選べるのも魅力。友人とのランチや家族との食事、おひとりさまのカフェタイムなど、さまざまなシーンで利用されています。

料理を担当するのはシェフの健太さん。妻の美紗さんは接客や店作り、そしてクッキー作りを担っています。飲食店での経験はありませんでしたが、健太さんからレシピや焼き方を教わり、店に並ぶ焼き菓子を一つひとつ手がけるようになりました。
ネコやクマ、お花など、かわいらしいモチーフのクッキーは、美紗さんの感性が生かされた一品。店内のやさしく温かな雰囲気をそのまま映したような愛らしさで、幅広い年代のお客様に親しまれています。

2023年、コロナ禍の中でスタートした同店。外食よりもテイクアウトの需要が高かったことから、持ち帰りやすいサンドイッチやフォカッチャを中心としたメニュー構成で店作りを始めました。
その後、お客様の声や季節の食材を取り入れながら少しずつ増やし、これまでに考案してきたメニューは、なんと700種類にも上るといいます。
「最初は今ほどメニューも多くなかったんです。でも、『プレートは食べきれないからサラダだけ欲しいな』という声があればサラダセットを作ったり、『持ち帰れたらうれしいな』というママさんの声があればテイクアウトボックスを始めたり。お客様の声を聞きながら少しずつ増やしていったら、今の形になりました」と美紗さん。

店内で提供しているランチのほとんどがテイクアウトにも対応。子育て中で外食が難しい人はもちろん、仕事の合間に車の中で手軽にランチを済ませたい人など、さまざまなライフスタイルに寄り添っています。
また、ポルテの魅力の一つが、旬の食材を積極的に取り入れていること。その時手に入る食材によってメニューを考えるため、季節はもちろん、日によってラインアップが変わることも珍しくありません。

「農産物直売所へ行くと季節の野菜がたくさん並んでいて、『今日はこれを使ってみようかな』って考えるのが楽しいんです。『次のサンドイッチの具材は何?』『クッキーサンドは何味?』って新作が出るのを楽しみにしてくださるお客様も多くて。その反応を見るのもうれしいですね」
そう話す健太さんの表情からは、お客様の期待に応えることへの純粋な楽しさが伝わってきます。
地域の食材、お客様との会話、そして日々の暮らし。その一つひとつを大切にしながら、「ポルテ」は少しずつ、この街ならではのカフェへと育ってきました。しかし、東京で料理人として経験を積んできた健太さんが、なぜ三条で店を開くことになったのでしょうか。
東京から三条へ 夫婦で選んだ新たな暮らし

東京・千歳烏山にある人気イタリアン「アペルト」で、約7年間シェフを務めてきた健太さん。料理人として経験を積みながら、いつかは自分の店を持ちたいという思いを抱いていたそうです。
一方、美紗さんは三条市出身。大学進学を機に上京し、「もう新潟には帰らない」と家族に話していたくらい、東京で暮らしていくつもりだったといいます。ところが、結婚をした頃にお父さまが他界し、「地元にいる家族のそばで暮らしたい」という思いが少しずつ芽生え始めます。さらに、そこへ重なったのが、新型コロナウイルスの流行でした。

「コロナ禍で外食や外出も思うようにできなくて、どこへ行くにも気を使っていました。でも三条に帰ると、自然がたくさんあって、公園も広い。人との距離も取りやすいですし、車ですぐ出掛けられるのもいいですよね。そしてやはり、母の近くにいたいという思いもあったので」と当時を振り返る美紗さん。
家族のこと、子育てのこと、そしてコロナ禍。さまざまな出来事が重なり、お二人は三条への移住を決意します。そのことはもちろん、東京生まれ東京育ちの健太さんにとっては、大きな決断でした。
「最初は『燕三条駅には新幹線が止まるし、結構栄えているんだろうな』と思って来たんです。実際は想像していた街とは少し違いましたが、山も海も川もあって、都会過ぎず田舎過ぎず。暮らしてみると本当にちょうどいい場所だなと思いました。初めて来たのが冬だったんですが、新幹線を降りた瞬間のあの冷たい空気には驚きましたね。『寒っ!』って(笑)」

しかし、三条への移住を決めてから、店作りがすぐに動き出したわけではありませんでした。当初、健太さんが目指していたのは、「アペルト」を離れて自分のイタリアンレストランを開くこと。住居を兼ねた店舗を探すため、東京と三条を何度も往復しながら物件探しを続けました。
「本当は、イタリアンレストランを開くつもりで物件を探していました。でも、条件に合う物件がなかなか見つからなくて。本格的な調理をするには排水設備の問題があったり予算が合わなかったりなど、理想の物件には出会えず難航していたんです。そんな時に、『アペルト』のオーナーから『三条に2店舗目を出したい』という話をいただいて」と健太さん。

こうして、長く続いた物件探しの末に現在の物件と巡り合い、2023年、新たなスタートを切りました。
店名の「Porte」は、フランス語で「扉」を意味する言葉。「開く」という意味を持つ「aperto」と同じように、新しい一歩を踏み出す場所になればという思いが込められています。
ここから広がる、おいしいつながり

三条へ移住し、店を構えて約3年。「ポルテ」は地域に根差したカフェとして歩みを重ね、新しい人とのつながりも少しずつ広がっています。
その一人が、前回ご登場いただいた「ジェラテリアココ」の佐久間さんです。家族ぐるみで親交があり、互いの店を行き来しながら料理や食材について語り合う仲。何気ない会話が、新しい発想につながることも少なくありません。
実際、佐久間さんが世界大会でグランプリに輝いたジェラートに使われたフレッシュチーズ「フロマージュブラン」に着目したのも、健太さんとの会話がそのきっかけの一つだったとか。互いに刺激を受けながら新しい味を探求する関係は、今も続いています。

そして、交流は新潟だけにとどまりません。東京・千歳烏山の「アペルト」では、新潟の枝豆や舞茸など旬の食材を使ったフェアを定期的に開催するなど、新潟食材の魅力を東京へ届ける取り組みも行っているのだそう。
三条での日々が新しい料理や人との出会いを生み、その積み重ねが新たな挑戦を後押ししています。「ポルテ」は今日も、この町でたくさんの人とのつながりを広げながら、ゆっくりと成長を続けています。
次回のLIFE STORYでは、中島さんご夫妻それぞれの歩みや、東京から三条へ移り住んだ暮らしについて伺います。お楽しみに!








