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会津はおいしい、おもしろい! 大好きな地域の魅力を 手作りのお菓子に込めて

会津はおいしい、おもしろい!大好きな地域の魅力を手作りのお菓子に込めて

あいづaizu
空色カフェ

齋藤 真弓 (さいとう まゆみ)さんの自己紹介

1976年、福島県いわき市生まれです。現在は喜多方市で夫と子どもと3人暮らしをしています。新潟の大学を卒業後、紆余曲折を経てWebデザインの専門学校に入学しました。その後は故郷のいわき市で就職しましたが、仕事でご縁があった奥会津の魅力に惹かれて移住。その後、もともと好きだったお菓子づくりの経験を活かして「空色カフェ」をオープンしました。2018年に喜多方市に再移住し、現在に至ります。趣味は、ランニングと登山です。

PROLOGUE

11月上旬、心地よい秋晴れに恵まれた日。私たちごっつぉLIFE編集部は新潟市から車を走らせ、福島県喜多方市へ向かいました。

「これから取材に伺うお店の名前にピッタリなお天気ですね~」なんて話していたら、到着してびっくり。

青空と同じ色の建物が現れたではありませんか! こちらが今回お邪魔した「空色カフェ」さんです。

紹介してくださった「おぜしかプロジェクト」の小山さんによると、おいしくて体にやさしいお菓子を提供しているとのこと。どのようなお菓子に出会えるのか、楽しみにしてきました。

テーブル席と小上がり席があり、小上がり席には絵本やおもちゃなど子どもが楽しめる工夫も

自宅の納屋を改装した店内は、和の雰囲気の中に北欧テイストが溶け込み、おしゃれな雰囲気。旦那さまとともにDIYしたのだそうです。

同店がオープンしたのは2005年。当初は別の場所でスタートし、今年でなんと20年目を迎えました。来店するお客さんの9割はリピーターさんとのことで、会津地域だけでなく、福島市や県外など遠方から車で数時間かけて訪れるお客様も多いそうです。

この素敵な空間で、一体どのようなものが味わえるのでしょうか♪

写真左:超低農薬・超低化学肥料のいちごで作る「いちごパフェ」 
写真中:自宅で採れた栗をたっぷり使った「渾身のモンブラン」
写真右:くだもの王国ふくしまの桃をたっぷり味わえる「桃パフェ」
※ご提供画像

旬の果実を使ったパフェやケーキは、毎年待ちわびているファンも多いという、季節限定メニュー。

季節の野菜をふんだんに使った「キッシュプレート」 ※ご提供画像

数量限定のランチメニューは、週末のオープン時のみ。キッシュやカレー、タコライスなどを日替わりで提供しています。

写真左上から、ピーナッツバタークッキー、いちじくマフィン、山塩キャラメルバナナマフィン・みかんカカオマフィン、スコーン ※ご提供画像

その他、マフィンやクッキー、スコーンなど季節やイベントに合わせたお菓子が盛りだくさんです。

こちらが、「空色カフェ」を営む齋藤真弓(さいとうまゆみ)さん。お菓子の製造やカフェ営業、イベント出店の他、暮らしを楽しむ講座や会津暮らしを楽しくするイベントを企画しています。

今回は齋藤さんに、移住して会津暮らしを始めた経緯や空色カフェの特色、そして会津暮らしの魅力などについて、お話をお聞きしてきました。

「何を食べてもおいしい」と多くのファンを惹きつけるのには、齋藤さんならではの素材選びへのこだわりと、会津への思いが大きく関わっていたのです。

INTERVIEW

身近にあった手仕事のぬくもり

齋藤さんは福島県いわき市のご出身。サラリーマンのお父さまと、洋裁学校を出て専業主婦だったお母さまの下で生まれ育ちました。

「母は洋裁が得意だったので、父が着なくなった背広をほどいて私と妹によくワンピースを作ってくれ、私も母の隣でチクチクとお人形の洋服を縫っていました。父は日曜大工が得意でドールハウスや中に置く小物を作ってくれていましたね。ご飯やおやつもそうでした。物が買えないわけではなくて、買えるけどあえて手作りのものを好む、手仕事が大好きな家庭でした」と懐かしそうに話す齋藤さん。

小学生になると、テレビや本によってさらに趣味を広めることに。
齋藤さんが「この本を映像化したテレビ放送にすごく影響を受けたんです」と見せてくださったのは、1冊の本。世界の名作としても知られる『大草原の小さな家』(ローラ・インガルス・ワイルダー/作)でした。

『大草原の小さな家』は、アメリカ西部の大自然の中で暮らす一家を描いた物語。衣服や食べ物、家具、家までもが自給自足で、齋藤さんは主人公たちのたくましさや、人にも自然にも優しい生き方に憧れを抱いたそうです。「いつかこんな暮らしをしてみたい」との思いを心の片隅に置きながら高校、そして大学へ進学しました。

店内の手洗いおけには古い羽釜を利用

一方で、大学時代にはパソコンでホームページを自作するなど、IT分野も得意だった齋藤さん。大学を卒業後にWebデザインの専門学校に入学し、いわき市でWebデザインの会社に勤務。そこで齋藤さんの人生を変えるきっかけが訪れます。

「仕事で奥会津の地域振興に関わるWebサイトを作っていたんです。その頃は電話やFAXで担当者とやりとりしていたんですが、『このみどり色じゃない』ってダメ出しがすごくて。私が思う『みどり色』と、担当者が思う『みどり色』が合わなくて、何度もやりとりしました。そして実際に奥会津の三島町に遊びに行ってみて驚いたんです。奥会津の緑の深さに!」

実際に足を運んで目にしたのは、奥会津の山々のみどり、畑のみどり、奥只見湖のみどり。同じみどりでも鮮やかさや深さ、また朝と夕の陽の当たり方でもみどり色の見え方が異なることを、齋藤さんは身をもって体感したのです。なんて素敵な気付きなのでしょう……!

自然の美しさと、奥会津の人たちが大切にしている暮らしや文化に触れた齋藤さんは「ここで暮らしたい」と、旦那さんとともに移住を決意。ずっと心の片隅にあった「田舎暮らし」への憧れが、現実のものとなったのです。

会津の魅力をお菓子に込めて

豪雪地帯ならではの知恵や食文化、手仕事などが今も色濃く残る奥会津。先週のごっつぉLIFEでご紹介した「ティールーム山ねこ」の金子さんは、齋藤さんが会津暮らしで影響を受けた人物のお一人なんだとか。なんと金子さんともお知り合いだったのですね!

そして奥会津では、もう一つ密かに齋藤さんが持っていた夢を叶えるチャンスが訪れます。

それは、カフェを開くこと。

「奥会津は住んでみると自然が深くて本当に食べ物がおいしくて、とってもいいところだなと思いました。私は、ホームページを作るWebデザインの仕事で奥会津の魅力を発信してきたのですが、ある時本当に自分がやりたいことを考えたんです。それで出てきたのがもともと趣味だった料理やお菓子作りを活かした“カフェ”。おいしいものは人を惹きつけるし笑顔にもする。そして、地域の魅力をお菓子に込めて発信すれば、ストレートに奥会津の良さを伝えられるんじゃないかと思ったんです。地域の魅力をお菓子に込めて発信したい、それが空色カフェを始めたきっかけでした」と齋藤さん。

2005年、奥会津の三島町にある美坂高原の空きテナントを借りて「空色カフェ」をオープン。「作り方は至ってシンプルなんです」と齋藤さんがいうお菓子の特徴は、なんといっても素材選びにあります。

「プリン」の生地には、会津中央乳業べこの乳、会津美里町の有機農家さんの自然卵、沖縄のきび砂糖を使用 ※ご提供画像

使用する素材は、有機栽培、無農薬栽培、自然栽培の野菜・果物またはその加工品たち。例えば小麦粉は、有機小麦粉や自然栽培古代小麦粉を。米粉は、自然栽培ササニシキ米粉を。甘みは素精糖や有機メープルシロップ、有機黒糖、米あめなど、厳選素材ばかり。

齋藤さん自身が小さな頃からアレルギーを患い食べ物で苦労してきた経験もあり、徹底してこだわった素材を選びぬき、体にやさしくおいしいお菓子を提供しています。
齋藤さんが作るお菓子は瞬く間に評判になり、リピーターさんも次第に増えていきました。

「サクサクビスケット」の生地には、喜多方産農薬不使用の小麦全粒粉、国産小麦粉、有機豆乳、国産きび砂糖、天日湖塩、天然重曹を使用 ※ご提供画像

日本でも有数の豪雪地帯のため、1年の中で営業できるのは5~10月という限られた期間。冬の間は数種類のお菓子をセットにした「おやつ便」を販売し、手書きを印刷したニュースレターを同封して、お客様とのつながりを大切にしてきました。

「おいしいものを食べると、これってどこのお店のものだろう、何の材料で作られているんだろうって気になると思うんです。その時に、会津地域で採れたものやこだわりの生産者さんのものだと分かれば、お客さまの興味が広がります。そうやって、おいしさの裏側にある会津の魅力を発信したいですね」

齋藤さんのお菓子は、「会津が大好き」という気持ちが詰まった、まるでラブレターのようなお菓子なのかもしれません。

再移住で見えた会津地域の魅力

奥会津の暮らしを楽しんでいた齋藤さんご家族でしたが、2018年、現在の場所である喜多方市熱塩加納地区に再移住します。それには、母になった齋藤さんの思いがきっかけでした。

「ずっと現在の家の近くにお米を買いに来ていて、この地域の話をよく聞いていたんです。熱塩加納地区は、昭和50年代から有機無・低農薬栽培を推進していて、環境にやさしい農業をしています。そしてこの地区の小学校では、30年も前から地元産の特別栽培米や有機野菜を使う、全国でも珍しいオーガニック給食を続けています。その子育て環境がとても魅力的で、この地区で子育てをしてみたいと思ったんです」

旧熱塩加納村で始まったこの取り組みは、「子どもたちに安全でおいしいものを食べてもらいたい」という、地元の大人たちの思いがきっかけだったのだそう。調味料にはこだわりの伝統調味料を使い、デザートは冷凍加工食品を使わない⼿作りのものを。メインのおかずだけでなく、おひたしも争奪戦になるぐらいおいしいんですって! 

「喜多方市は子育てをするのにちょうどいい田舎かもしれません。自然が近くにありながら、車で10分も行けばスーパーやドラッグストアもあります。スポーツや文化施設も整っていますし、この地域を楽しむイベントも多くて楽しいんですよ。奥会津の三島町での暮らしも、喜多方市での暮らしも、どちらもその地域にしかない魅力があって、つくづく会津って素敵な場所だなと感じています」

その場所に足を運んでみないと、そして暮らしてみないと分からないもの、見えないものってあるんですね。ごっつぉライターの私も、もっと会津を知ってみたくなりました。

EPILOGUE

大切な地域の宝を未来に残していくために

奥会津で開業してから20年目を迎えた「空色カフェ」。齋藤さんは、人と人、そして人と環境や自然との調和に目を向け、ひとつ一つの生命のことを大切に考えること、未来につなげていくことをテーマに活動してきました。

※ご提供画像

喜多方市に再移住した翌年に「空色カフェ」を再スタートしてから、カフェだけでなく会津の暮らしそのものを伝える活動も開始。たけのこ掘りや実山椒収穫、竹水体験、どくだみクリーム作り、ヒンメリのワークショップなど、親子で楽しめるようなイベントを多数開催しています。

お菓子の製造やカフェの営業だけでなく、実体験を通して自然の豊かさを感じてもらうことも大切にしてきました。

「今後についてはやりたいことはたくさんあるのですが、まだまだカフェ自体が未完成なので、まずはここを整えていきたいですね。薪ストーブを置きたいなとか、2階が空いているのでゲストハウスにしてみたいなとか、いろいろ考えはあるんです。また、会津の伝統食を少しアレンジして、若い方が親しみやすいレシピを作りたいです。会津暮らしのたのしさやおもしろさを伝えていけたら」と齋藤さんはほほ笑みます。

壮大な目標を掲げるのではなく、地に足をつけ、一つひとつ身の回りを整えていくことを大事にしているのが、齋藤さんらしいなと感じました。

「ずっと会津で生まれ育った人の中には『ここには何もない』と言う人もいるけれど、私にとっては宝の山に見えるんです。ニュータウンで生まれ育った私には、この自然が近くて季節の恵みを自分の手で活かせられる環境はありがたい限り。会津の日常風景こそが宝物だと思うので、これからもお菓子やイベント、ワークショップなどを通じて、発信していきたいですし、私自身も暮らしを楽しんでいきたいですね」

ご両親から受け継いだ手仕事のあたたかさを家族へ、友人へ、地域の人へ。

会津が大好き!──思いのこもった齋藤さんのお菓子は、これからも多くの人を笑顔にすることでしょう。

齋藤さんの特別なこと、
手仕事が好きになったきっかけ、
空色カフェのこと、
移住して分かった会津暮らしの魅力、
たっぷりと教えていただきました!
ごっつぉさまでしたー!!

齋藤さんの#マイごっつぉ

新宮熊野神社 長床(ながとこ)

齋藤さんがマイごっつぉに選んでくださったのは、喜多方市にある新宮熊野神社の拝殿「長床」。「空色カフェ」から車で15分ほどの場所にあり、齋藤さんやカフェのお客さんたちもよく訪れるという観光名所です。「『長床』は、平安時代の寝殿造りの建物で、全部吹き抜けになっています。この場所ではコンサートやヨガ、マルシェなどイベントを開催していて、市民にとって身近な存在なんですよ。境内にある、樹齢800年ともいわれる大イチョウの紅葉も見物。秋に限らず、一年を通して美しく清々しい雰囲気が漂うパワースポットです」と齋藤さん。選んでくださった写真は、喜多方市が主催している「長床ウォーク」というウォーキングイベントに参加した時のもの。黄金のじゅうたんに染まる晩秋の「長床」や喜多方路を、友人たちとおしゃべりをしながら散策したそうです。齋藤さん、素敵なマイごっつぉを教えていただき、ありがとうございました!

新宮熊野神社 長床(ながとこ)

齋藤さんがマイごっつぉに選んでくださったのは、喜多方市にある新宮熊野神社の拝殿「長床」。「空色カフェ」から車で15分ほどの場所にあり、齋藤さんやカフェのお客さんたちもよく訪れるという観光名所です。「『長床』は、平安時代の寝殿造りの建物で、全部吹き抜けになっています。この場所ではコンサートやヨガ、マルシェなどイベントを開催していて、市民にとって身近な存在なんですよ。境内にある、樹齢800年ともいわれる大イチョウの紅葉も見物。秋に限らず、一年を通して美しく清々しい雰囲気が漂うパワースポットです」と齋藤さん。選んでくださった写真は、喜多方市が主催している「長床ウォーク」というウォーキングイベントに参加した時のもの。黄金のじゅうたんに染まる晩秋の「長床」や喜多方路を、友人たちとおしゃべりをしながら散策したそうです。齋藤さん、素敵なマイごっつぉを教えていただき、ありがとうございました!

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空色カフェ

店名空色カフェ
住所福島県喜多方市熱塩加納町加納柿木田2862
地図
アクセス磐越自動車道「会津坂下IC」より車で約33分
「喜多方駅」より車で約13分
営業時間営業日はInstagramでご確認ください
定休日不定休
電話番号090-1938-8119 ※来店の際は要予約
HPhttps://www.sorairocafe.jp/
SNSInstagram: https://www.instagram.com/sorairooyatsu/
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