永松 祥子 (ながまつ しょうこ)さんの自己紹介
小さい頃からの夢だった『千葉県にある某「夢の国」で働くこと』を叶えるため、千葉の大学に進学。大学在学中の4年間、アルバイトとして「夢の国」で働き、夢を叶える。その後、温泉旅館や車関係の会社へ就職を経て、実家の小さな宿屋の跡取り娘として新潟へUターン。お酒と相撲、アルビレックス新潟が大好きな若女将として、自分の「好き!」を全面に出し楽しく宿を経営中。趣味は「はしご酒」。新潟の食を中心に、日本酒やクラフトビール、ワインなどの素晴らしさを発信していけるよう、日々猛勉強中!(笑)
新潟県阿賀野市、五頭山の麓に「五頭温泉郷」と呼ばれる3つの温泉、「出湯温泉」「今板温泉」「村杉温泉」があります。その中で「今板温泉」は、お宿が1軒だけの温泉地。昭和初期までは複数の宿があり共同浴場もあったそうですが、今は1軒だけに。ただ、この「1軒だけ」が静かで特別な空間を生み出し、多くのリピーターに愛される「馴染みの宿」になっているそうです。今回はこのお宿「湯本舘」の若女将、永松祥子さんにお話を伺いました。
鯉料理が名物の「こぢんまりした馴染みの宿」
まずはお宿について、少しご紹介します。
最寄りの交通公共機関は、国道290号線沿いのバス停「今板温泉」。看板に従い細い坂道に一歩入ると、スッと静かな空間になり、空気もひんやりとしました。この坂道を上がった先の突き当りに「湯本舘」があります。
冒頭にお伝えした通り、今板温泉のお宿はここ1軒だけ。お部屋数も14室と、「こぢんまりしていて、ちょうどいい大きさ」とお客さまからは言われるそうです。常連さんも多く、自ら「山の馴染みの一軒宿」と称し、馴染みのお客様を大切にされています。
名物はここ阿賀野市笹神地区では昔から食べられてきた「鯉料理」。ハレの日のお料理として、昔は各家庭でも食卓に並んだそうです。鯉は滋養強壮に良く、薬膳料理にも使われる食材。五頭山から流れ出るきれいな水で育てた鯉は癖がなく、食べやすいのだとか。今でもこの地域のスーパーには、鯉の切り身や洗い(お刺身)が普通に売られているそうですよ。
全国でも珍しい「ラジウム温泉」
温泉は全国でも珍しい「ラジウム温泉」。「ラドン」という物質を微量に含むお湯で、お湯に浸かることで得られる効能だけでなく、空気中に放出されたラドンを吸うことで、体の内外から細胞を刺激し、細胞の酸化を防ぐとのこと。「健康の湯」と言われる他に、「美肌の湯」、「アンチエイジングの湯」とも言われているそうです。
3つのラジウム温泉が集まる五頭温泉郷の中でも、「今板温泉」のお宿はこちらの湯本舘さんだけ。1つの温泉の源泉を独り占めできちゃうのは、一軒宿である湯本舘さんの特権ですね!
「私ならもっといい宿にできる!」姉弟会議で決まった後継ぎ問題
「後継ぎ問題」というと少しドキッとしますが(笑)、湯本舘さんの後継ぎ問題は何のトラブルもなく、永松さんが高校生の頃の「姉弟会議」で決まったそうです。
永松さんの姉弟は、永松さんと弟さんが2人の3人姉弟。2人の弟さんは共に「継ぐ気はない」と言うので「じゃあ私が!」となったそうです。でも、「仕方がないから…」という意味ではなく、昔から「私が…!」という思いがあったと言います。
「両親の苦労も知らずに…なんですけど、昔から“私だったら、もっといい宿にできる!”と思ってたんですよね(笑)。だから、自然な流れでした」
と、永松さん。
お話を伺っていたロビーの奥に広がるこのお庭のことも、永松さんは大好きだそうで、「うちのお庭がホントに好きなんです」と仰います。自然の山の勾配を活かしたお庭で、奥に流れる滝も山からの湧き水を引いて作ったもの。四季折々の表情があり、年中見ても飽きないとのこと。
自然な流れで家業を継ぐことを決心されたのも、小さな頃からずっと当たり前にあった、お宿のこの環境に対する愛着とか愛情とか、そういう目に見えないものの影響も大きかったんじゃないかな…と、お話を聞いて思いました。
結婚のお相手も宿を継ぐことを前提に
この高校生の頃の姉弟会議の後、千葉県の大学に進学され、卒業後は静岡の旅館に勤務。その後「将来の宿のことを考えて、人事系の経験もしておきたいな…」と思い、自動車関係の企業へ就職。そこで今の若旦那であるご主人と出会われたそうです。
「一緒に宿を継いでくれる人を見つけて、なるべく早く帰ろう…とは思っていたので、“この人なら!”とビビッと来て、結婚と同時にすぐ帰ってきました(笑)。彼の雰囲気や性格が、新潟での生活に合っている…という確信も、結婚の決め手の1つでした(笑)」
と笑う永松さん。
すごい…。結婚の決め手の1つに、新潟に戻って来られてからの生活を描いてらっしゃったなんて。そして、この「確信に近いもの」は大当たりだったようで、ご主人は新潟に来られてから「肌荒れも花粉症も治った!」と喜ばれているとのこと。
「もともと彼が持っていた人当たりの良さも、思った通りピッタリで、若旦那としてスッと宿に馴染んでくれて、ホント良かったです」
若旦那さんから頂いた名刺にも「(新潟にやってきて)当りクジを引いた気分です♪」と書いてあり、微笑ましく幸せいっぱいの様子が見てとれて、思わず頬が緩んでしまいました。
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笑う宿には福来る
実は私ごっつぉライター、若女将の永松さんとは5・6年前からのお友達なんです。最近はお会いする機会があまりなかったのですが、ご活躍の様子はSNSで拝見していました。SNSでのご様子や、時々お会いした時の印象は「いつも変わらず、この笑顔」。
「笑う宿には福来る。…と真剣に思っているんです。ムスッとした顔をしている人にはムスッとした顔の人が集まってくるし、ニコニコした顔をしている人にはニコニコした顔の人が集まってくる。だから私はニコニコ、笑顔でいようと決めています。もちろんイライラする時もありますが、それって周りに伝染させちゃうので、なるべく見せないようにしています」
とのお答え。
これは誰に教えられたことでもなく、自分自身で感じてやってきたことだそうです。でも、どうやって、その気持ち・笑顔をキープするんですか?秘訣はありますか?
「キープするためのコツはストレス解消。私にとっては“おいしいものを食べに行くこと”です。これはストレス解消だけでなく、宿の若女将としては勉強にもなるので一石二鳥なんです。宿でお料理を提供するにあたり、お客さまに自信をもってお出ししたいので、自分の舌も肥えさせておかないと!でしょう?(笑)」
毎月内容が変わる湯本舘さんのお料理。その試食も大事な若女将のお仕事ですもんね。時には「あそこのお料理がおいしいらしいから、食べに行ってきて」と、お料理担当の方に食事に行ってもらうこともあるそうです。若女将を始め、湯本舘の皆さんの肥えた舌があるからこそ、おいしいお料理が提供されている…ということですね。
「仕事は楽しく、遊びは本気で」
永松さんは自身の座右の銘を地で行く、素敵な方なのです。
氏神さま「旦飯野(あさいいの)神社」が、
ここ数年で大変なことに!?
最後に永松さんから、阿賀野市の魅力的な人・場所を教えていただきました。
1つ目は、阿賀野市笹神地区の氏神さま「旦飯野神社」さん。
「ここ数年で“旦飯野神社さんにお詣りに来ました”と仰ってお泊りになる方が増えたんです。私にとっては初詣やお宮参りや七五三など節目節目にお詣りする場所であり、当たり前のようにあった “地域のお宮さま”なので、正直ビックリしてるんです。なんでそんなに有名になったのか、ぜひその秘密を探ってきてください(笑)」
と、永松さん。
どうやら「知る人ぞ知るパワースポット」として、全国からたくさんの方がお詣りに来られているようです。私も全く知りませんでした。これは楽しみです…!
“今”を取り入れつつ伝統を守る
染物屋「藤岡染工場」さん
もう1つは、湯本舘さんの売店にも商品を置いているという、阿賀野市水原地区の染物屋「藤岡染工場」さん。
「 “今”を取り入れつつ、昔ながらの伝統技法を守り伝えてらっしゃるところで、昔から注目をしていました。2012年にうちが100周年を迎えた時には、オリジナルの手ぬぐいを作ってもらったんですよ」
と言って永松さんが見せてくださったのが、こちらの手ぬぐい。
おぉ、なんともかわいらしい…。記念品にありがちな「100周年」と文字を入れるスタイルではなく、さりげなく柄の中に「百」を入れて散りばめてあるところが粋ですね!大学でデザインを勉強された女性の染物職人さんが、このような現代的なセンスで染物を作られているそうです。こちらも楽しみです…!
では、今板温泉「湯本舘」の若女将、永松さんから教えていただいた、阿賀野市の魅力的な人と場所、旦飯野神社さんと藤岡染工場さんに行ってきます!
永松さん、ありがとうございました!