
石川 英理香 (いしかわ えりか)さんの自己紹介
JR津川駅の近く、阿賀町角島出身です。赤ちゃんの頃から引越しが多い家庭で育ち、小学校5年の時に父の実家がある旧津川町で暮らし始めました。小・中学校を阿賀町で過ごし、高校は町外へ。高校生の時に経験した、津川温泉の食堂でのアルバイトがおもしろくて!飲食業っていいなとは思っていましたが、まさか自分の店を持つとは思ってもみませんでした。高卒で新潟市内のカフェで働き、1年後に阿賀町へ帰郷。2007(平成19)年から10年間直売所で働き、毎日のように出てしまう食品ロスを何とかしたいという気持ちから、2017(平成29)年、直売所の隣に「ジェラートの店 Refeli(レフェリ)」をオープン。農家さんたちを笑顔にするため、阿賀町の農産物を活用したジェラートを作っています。
PROLOGUE
「暑い夏はもちろん、季節を問わず食べたくなるジェラートが阿賀町にある」と聞きつけ、向かった先は「ジェラートの店 Refeli(以下、レフェリ)」。
国道49号を福島方面に向かって直進していると見付けられる、「津川地区農林水産物直売所」のお隣で営業しています。

入り口前にメニュー看板が立っているので、こちらをチェックしてから入店!

ショーケースを覗いてみると、そこには見たことのないフレーバーが並んでいました。


町の特産品・エゴマに、発酵文化が盛んな阿賀町らしい「塩糀(しおこうじ)」や「みそ」。
地元愛あふれるジェラートは、一体どのようにして生まれたのか……?
製造秘話に迫ります!
INTERVIEW
若者に「エゴマ」が人気!阿賀町食材を知るきっかけに。
お会いしたのは、手作りジェラートを販売する店主の石川英理香さん。
もともとは隣で営業する直売所で働いていたそうです。

「直売所には農家さんたちが毎日持ってきてくれる新鮮な地元食材が並びますが、売れ残りは少なからず発生していて。
『これはよろしくないな』と感じることがたくさんありました。
野菜は取って置けないし、山菜を天ぷらにして販売したところで、それだけでは食べ飽きてしまう。
長期保存ができて、年齢問わず楽しめるものを考えて行きついたのがジェラートでした」

地元特産品を活用したジェラートには、フキノトウやコシアブラ、コゴミといった山菜も使用。
これまで行き場を失っていた山の幸が、出合ったことのないジェラートに生まれ変わります。

「フキノトウが単体で売っていても『調理が手間だし、子どもが食べてくれない』という声が聞こえてきます。
エゴマも同じ。素材そのものが売っていたって、自宅に持ち帰ってどうしたらいいか分からない人がほとんどです。
調理方法が分からない食材も、レフェリならジェラートで楽しんでもらえる。
子どもも、大人も楽しめる魅力がジェラートにはあります」

取材中、若い女の子たちが続々と店を訪れ、エゴマのジェラートを購入していたのが印象的でした。
あまり馴染みのなかった食材が、レフェリでは気軽に味わえるからおもしろい!

阿賀町の食材が生まれ変わる珍しいジェラート店。
地元食材を活用するようになったきっかけには、「子育て経験も活きている」と石川さんは言います。

「子どもが生まれてから健康的な食事を意識するようになり、甘いものを食べすぎないようにお菓子を手作りする機会が増えました。
もっと栄養価の高いものを作ろうと思った時に使うようになったのが、阿賀町のエゴマや野菜です。
直売所で売られている規格外のニンジンや山菜を購入して焼き菓子に使っていたのは、レフェリのベースになっているかもしれませんね。
学生時代のアルバイトや、カフェでの飲食業経験はありましたが、まさか自分のお店を開くことになるなんて、当時では考えられませんでした!」
レフェリの営業を始めると、次第に地元生産者さんがフキノトウやコシアブラを摘んでは「よかったら使ってね」とお店に持ってきてくれるようになったと言います。
直売所から仕入れた食材だけでなく、地元の方々のご好意から集まる食材も多数使用されているレフェリ。
季節ごとにラインナップががらりと変わるので、ジェラートから四季の移ろいを感じられそうです。
地元企業とのコラボで完成した魅惑のフレーバー。
春先には人気の山菜シリーズに加え、雪下にんじんや阿賀町のシンボルとなっている雪椿。
夏はカボチャやピリッと辛い青なんばんのジェラートが登場します。

これから始まる秋シーズンは、サツマイモや大人気の栗、冬の自然薯も外せません。

地元生産物以外に、冬は雪深い阿賀町で発展してきた発酵食品を取り入れたジェラートもあります。
雪国の文化が感じられるフレーバーが豊富にそろうのもレフェリの特徴です。

オリジナルの黄色い糀(こうじ)から商品をつくる山﨑糀屋とのコラボから生まれた「塩糀」「みそ」「しおいちご」、地元酒蔵の麒麟山酒造とは酒粕を使用した「甘酒」「地酒」を製造。
ちなみに、人気No.1フレーバーは山﨑糀屋の塩糀とイチゴピューレを合わせた「しおいちご」のようです。


「ミルクとイチゴピューレを混ぜようとしたら、間違えて塩糀と混ぜちゃって。
大量に作ってしまったのでへこみましたが、食べてみたら絶妙なおいしさで驚きました。
あっという間に定番フレーバーになったんですよ」と石川さん。
糀の優しい甘味の中に、ほんのり塩味が感じられる「しおいちご」。
このおいしさが偶然の産物だったなんて、信じられません。
その他にも気になるコラボフレーバーはまだまだあります。

「レフェリをオープンしてすぐに、地元企業さんへコラボのご相談をさせていただきました。
お茶の間 久太郎さんが自家栽培されている古代米を使ったジェラート、御神楽温泉 ブナの宿 小会瀬さんのどぶろく『金よし』を使ったジェラートもあります。
他にも、地域おこし協力隊の方が『こんな食材もジェラートにできる?』と持ってきたり、少し前には地元生産者さんが自家菜園のパクチーを持ち込んでくれたりしたこともありました。
パクチーは香りが強すぎて、残念ながら定番フレーバーにはなりませんでしたが(笑)。
どんな食材でもジェラートに変えちゃうのが強み。
オープン当初は食品ロスの削減が一番の目的でしたが、最近ではどこのジェラート店でもやっていない、珍しい味わいを表現するのが店のコンセプトにもなってきています」
阿賀町の食材ならなんでもジェラートに変換してきた石川さん。
新作フレーバーにはどんなものが登場するのか注目です。
EPILOGUE
阿賀町は“自然のごちそう”であふれている。
初めて阿賀町を訪れた人が「これは何!?」と驚くようなフレーバーと出合えるレフェリ。
「阿賀町には人々を引き寄せる力がある」と石川さんは言います。

「阿賀町には、エゴマやコゴミ、コシアブラなど、おいしいのにどんな味なのか名前だけでは分からない食材がたくさんあります。
でも、地元の人々にはそれが日常的すぎて、珍しいとも、すごいことだとも思われていない。
実際は、外から来た人たちが高いお金を払ってでも食べたいものばかりなんです。
栗、クルミのような高級食材が身近に落ちていることだってすごいこと。
そんな身近な食材が『栄養豊富で高級なんだよ』ということを伝えたいです。
珍しいジェラートをつくることで、お客さんをワクワク楽しませることが私の生きがいです」

レフェリをオープンして7年。
最近では遠方から石川さんのジェラートを求めて来店するお客さんも増えたと言います。
イベント出店にも積極的に参加し、町内外で阿賀町食材のおいしさを紹介されていますが、「小売りは絶対に町内だけ」というのも石川さんのこだわり。
レフェリ店頭の他、「お茶の間 久太郎」「道の駅 阿賀の里」など、町内各所でも購入可能です。

「どんなに物価が上がっても、甘さ控えめ、絶対に安い材料にはしません!」と笑顔で話す石川さんを見ていて、 “阿賀町を盛り上げる芯の強い女性”という印象が強く残りました。

「阿賀町はかっこいい女性がたくさん活躍しています。
御神楽温泉 ブナの宿 小会瀬の長谷川さんもそうですし、山﨑糀屋さん、お茶の間 久太郎さんもそう。
憧れる人がいっぱいいるから、年齢を重ねるのが楽しみだなって思えます。
これからも新しいジェラートを開発して、阿賀町を盛り上げられるように私も頑張りたいです」

