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明治から続く、阿賀町・室谷青年会。 地域の祭りもカレーもコリアンダーも ゆるく、楽しく、続けていく。

明治から続く、阿賀町・室谷青年会。地域の祭りもカレーもコリアンダーもゆるく、楽しく、続けていく。

あがまちagamachi

室谷青年会 (むろやせいねんかい)さんの自己紹介

私たち室谷青年会は、阿賀町の最奥の地「室谷集落」に生まれ育った20代から40代の男子で構成している団体です。現在は、室谷に所縁のある男子や会の活動に賛同する町内在住の男子も入会しており、13名で活動しています。私たちの主な活動は、地域を盛り上げる行事や伝統行事の継承です。秋の神社祭礼ではお神輿や出店を行い、冬には山の神様に感謝をあらわす「十二日講(夜中に川に入り身体を清め、餅をつき、集落全戸にお裾分けをする)」という伝統行事を行っています。また、室谷の伝統料理「たんぽ焼き(うるち米にくるみ味噌を塗り炭火で炙る)」を町内外の方にも食べてもらえるよう、町内のイベントに出店したり、このたんぽ焼きの「お土産商品」や「阿賀栗の渋皮煮」の製造をしたり、レトルトカレー(農×福スパイスカレー)のスパイス(コリアンダー)の栽培といった農業活動も行っています。これからも「ゆる~く、楽しく!」を合言葉に、これらの商品を宣伝ツールとして、室谷集落だけでなく、微力ながら阿賀町を盛り上げていけたらと思っています。

パンとおやつ 奥阿賀コンビリーの店主、柳沼さん(ごっつぉLIFE阿賀町1-1参照)からご紹介を受けた室谷青年会さん。会長さんと副会長さんが仕事終わりに取材を受けてくださるとのことで、夜7時のお約束で、室谷集落の集会所へと向かいました。

会長さんから「獣が出るので気を付けて来てください」と言われて進んだ道は、磐越道・津川インターを降りて約30分。県道227号(室谷津川線)を、ほぼ真っすぐの一本道でした。最後の5分くらいは道路沿いの街灯だけが灯る、真っ暗な山の中。なるほど、これは獣、出ますね(笑)。少しドキドキしましたが、何にも出会うことなく集会所に到着しました。


室谷集落は29世帯・86人が住む小さな集落。麒麟山酒造さんの本社脇を流れていた川、常浪川(とこなみがわ)の上流にありました(ごっつぉLIFE阿賀町1-2参照)。

迎えてくださったのは、室谷青年会の会長、清野正志(せいの まさし)さん(写真右)と、副会長の清野和幸(せいの かずゆき)さん(写真左)。同じ苗字ですが、ご親戚ではないそうで、「室谷に住んでいる人のほとんどが“清野さん”」だそうです。おふたりのことは「会長さん」「副会長さん」と呼ばせていただくことにしました。

「室谷青年会」とは何ぞや?

冒頭の自己紹介にもあった通り、地域の行事の担い手として活躍されている「室谷青年会」の皆さん。そもそもこの「室谷青年会」とは何ぞや?という素朴な疑問から、お話を伺うことにしました。

「“青年会”っていう団体・組織は、昔はどこの地域にもあったみたいですけどね。今はあまり残っていないんでしょうね。この辺りでもうちくらいです」
と、会長さん。

自治会とはまた別の組織なんですか?自治会の中の「青年部」という位置づけなのかと思っていたんですが。

「うちの場合、自治会費は使っていないので、別ですね。集落から林道整備などを請け負ったり、たんぽ焼きを作って町のイベントで販売したりして得た収入を、活動資金に充てています」
と、副会長さん。

おぉ…完全に独立した組織なんですね。
青年会会費を会員から徴収することも無いので、お金のやりくりは、今までの先輩方が貯めてこられたものと、副会長さんが仰ったような経済活動によって賄われているそうです。

(イベント販売時の「たんぽ焼き(うるち米にくるみ味噌を塗り、炭火で炙ったもの)」の様子。イベントへの出店予定は、室谷青年会のインスタグラムをチェック!※室谷青年会さんご提供写真)

「青年会」は、幼い頃からの憧れだった

おふたりが青年会に入会されたのは、高校卒業時。当時の会長さんから勧誘されたそうです。

「青年会は地域の行事の担い手として、幼い頃からその活躍を見ていたので、憧れでした。父や先輩たちの姿を見て“かっこいいな。いつか俺も…”みたいな気持ちが芽生えていたんでしょうね。二つ返事で青年会に入りました(笑)」
と、会長さん。

「私は、幼馴染だった正志が入るって言うんで、じゃあ入りますって感じでした(笑)。でも確かに、憧れはありましたね。だから抵抗はなかったです。先輩方も楽しそうでしたしね」
と、副会長さん。

※会長さんのこと。

(秋の神社祭礼のお神輿の様子。※室谷青年会さんご提供写真)
(毎年12月11日の夜から12日の朝にかけて行われる、山の神様に感謝をあらわす室谷集落の伝統行事「十二日講」。夜中に川に入り身体を清めたのちの、餅つきの様子。朝にはこのお餅を室谷集落全戸に配るそうです。※室谷青年会さんご提供写真)
(毎年1月の塞ノ神の様子。※室谷青年会さんご提供写真)

伝統行事の他にも自ら発案して、室谷を楽しく!

このような昔から続く行事の他にも、自ら「室谷を盛り上げたい」と発案されて、立ち上げた行事もあるのだとか。

「地区内唯一の学校、阿賀町立西川小学校神谷分校が2007(平成19)年に閉校した後、室谷みんなの楽しみだった“学芸会”がなくなったんです。それから数年後、なんとなく、室谷のじいちゃんばあちゃんの元気がないような気がして。それで、この学芸会を復活させようと思って始めたのが“室谷らしさ復活祭”。その後“室谷おもっしぇぞ祭”という名前に変えて、毎年10月半ば頃に開催しています。歌ったり踊ったり、ほんと学芸会ですよ(笑)」
と、語る会長さん。

※コロナ禍により、2020(令和2)~2022(令和4)年は中止。

(「室谷おもっしぇぞ祭」の様子。※室谷青年会さんご提供写真)

会長さんと副会長さんで、女装して歌って踊って、会場を沸かせたこともあるそうですよ(笑)。

明治時代から100年以上続く青年会が、これからも続く理由

室谷青年会についてお聞きしている途中、ポロッと会長さんが、

「明治から続いてるみたいなんですよね、うちの青年会」
と、仰ったんです。

え?明治?明治時代ですか?

「そう。青年会に残っている記録にある限りですが。あ、見ますか?」

そう言って奥の部屋から持ってきてくださったのは、年季の入った木箱。

箱の中には、室谷青年会に継承されてきた記録が入っているそうで、

「あ、これこれ。これです。ほら、ここに“明治”って書いてあるでしょう?」

確かに筆で書かれた活動記録の始めには「明治33年8月」の文字。本当だ…。明治33年は西暦1900年。122年前ですよ…。(この記録誌自体は明治時代のものではなく、のちに書き写されたものだろうとのことでした)

「これを見ると、俺らの代で途絶えさせたくないなって思うんですよね。100年以上続いているわけですもんね」
と、会長さん。

「途絶えさせないためにも、会の規約も時代に合わせて変えてきました。もともと“会員は、室谷集落在住・男性・独身・35歳まで”だったんですが、それだと今の会員も半分以上いなくなっちゃうので(苦笑)、室谷集落もしくは阿賀町在住で、私たちの活動を理解して、興味がある人ならだれでも会員になれるように規約を変更しました」
と、副会長さん。

現在の会員13名のうち、室谷集落に住んでいるのは4名。副会長さんも室谷集落には住んでいないと言います。

「21歳の時に室谷を出て津川に住み始めましたけど、その時、”青年会抜けるわー”なんて言うつもりは全くなかったですもんね。ずっと関わっていたい、携わっていたいと思ったもんな…」
と、振り返る副会長さん。

なんか、いいですね。
こんな地域は、今の日本にどのくらいあるんだろう。
住む場所が離れても、関わっていたい、携わっていたいと思う地域と、そう思う人。そして、それを可能にしてきた組織。柔軟に伝統と組織を守り続けている。

「ゆるさは、重要ですね。ゆるくやらないと続かない。ゆるく、楽しく、がモットーです。青年会の月に1回の集まりもゆるいですよ!全員そろうことなんてなかなかないんですから(笑)。それでもここに集まって、飲んで、しゃべって、楽しいんですよね。楽しいから、みんな離れていかないんです。行事は青年会メンバーじゃなくても、遠くからみんな駆けつけてくれますしね。半分同窓会みたいなもんです」
と、笑う会長さん。

「一周まわって新しい」と、ご紹介者の柳沼さんが仰っていた理由が少し分かったように思いました(ごっつぉLIFE阿賀町1-1参照)。おそらく全国的に見ても減少傾向にある「青年会」という組織が、形を柔軟に変えながらも存続している。「ゆるさ」と「楽しさ」と「地域愛」に支えられた自然な集まりは、どこか眩しくもありました。こういう場があること、仲間がいること、素敵です。

コリアンダーを育て、レトルトカレーを作っているって本当?

そうだ!柳沼さんから「室谷青年会さんは自ら畑でコリアンダーを育て、レトルトカレーを作っている」と伺ったのですが、本当ですか?

「えぇ、本当です。詳しくは副会長が説明します」
と、会長さん。

どうやらカレー担当は副会長さんのようです。
始められたきっかけは何だったんですか?

「1番のきっかけは、私が大のカレー好きってことですね(笑)。中でも前職仕事で交流があった、新潟市西区のラグーンカフェさんで提供されている“ラグーンカレー”が好きで、これをレトルトにできないかなーと思っていたんです。そうすれば、私が自宅で好きな時に食べられるなーなんて(笑)」

これも「楽しむこと」から入る、室谷青年会のスタイルですね!

「ちょうどその時、地域の特産品を使った商品開発をしていた柳沼さんと出会い、じゃあ室谷青年会でそれ作っちゃおう!室谷のPRにもなるように、室谷で作った何かを入れよう。コリアンダーなら作れそうだ。やってみよう!ってなったんです」

その頃、コロナ禍でイベント中止が相次ぎ、活動資金収入源の1つだったイベント出店が難しくなった室谷青年会。日保ちがして通販にも適したレトルトカレーは、新たな活路にもなる!とのことで、室谷青年会ラグーンカフェと柳沼さんの会社(山から株式会社)との共同開発という形で始まったそうです。

(コリアンダー畑の様子。※室谷青年会さんご提供写真)

「始めたはいいけれど、青年会のメンバーは誰一人農家がいなくて(笑)、コリアンダーを育てるのも全て手探りで大変でした。地区のじいちゃんばあちゃんにアドバイスをもらいつつ、耕作放棄地を借りて作り始めたのが2020(令和2)年。毎年6月上旬に種をまいて、11月下旬、雪が降る前に収穫します」

2022(令和4)年には9月中旬にも種をまいたそうで、越冬させて、2023(令和5)年の夏の収穫も計画中とのこと。

「今はカレーに使用されているコリアンダーの中で、私たちが作ったものは1割弱なんですが、年に2回収穫できれば、その割合も増やせるので楽しみです。収支はほぼトントンで、売れた分でまた作って…という感じ。でも、いいPRツールになっています。“室谷”という地域があること、“室谷青年会”という団体があることを知ってもらういい機会になっていてうれしいです」
と、副会長さん。

室谷青年会さんのカレー「農×福スパイスカレー」は、こちらでお買い求めいただけます

この室谷青年会さんが作ったコリアンダーが使用されているカレーは、「農×福スパイスカレー」という商品名で販売されています。こちらは、2023(令和5)年1月現在、柳沼さんが経営されているパンとおやつ 奥阿賀コンビリーさんを始めとする阿賀町内の小売店・売店・直売所と、レシピ提供者であるラグーンカフェさんを始めとする新潟市内とその周辺各所(いわむろやそら野テラス新潟伊勢丹いっぺこ~と農産物直売所やひこTaibow coffee & gelato soft)、県内3カ所のぽんしゅ館(新潟駅・長岡駅・越後湯沢駅)、にて販売中。また、新潟直送計画にてWEB販売もされています。

時期によっては店頭に並んでいないことがありますので、詳しくは各店へお問い合わせください。

(阿賀町津川の酒屋さん「桝屋商店」さん店頭に並ぶ「農×福スパイスカレー」。)

ゆるく、楽しく、をこれからも

最後に今後の抱負を伺いました。

「とにかく、ゆる~く、楽しくやっていくのがモットーです。ゆるくやっていかなきゃ続かない。100年以上続いてきた会を、うちらの代で途絶えさせたくない…という思いが強いですが、あんまりガツガツやっても、若い子たちはついてきてくれないですしね。うちらが先輩の青年会の人たちに抱いていたような憧れを、これからも感じてもらえるように頑張りたいです」
と、会長さん。

「農×福スパイスカレーの話になりますが、もっと、室谷産コリアンダーの割合を増やしていきたいですね。味は私が大好きなラグーンカレーにかなり近い味になっていますし、販売店さんからも“おいしいと好評だよ”と言ってもらえているので。こっちも、ゆる~く、楽しくで、やっていきます」
と、副会長さん。

とにかく終始、仲の良さがにじみ出てくるおふたり。別れ際にそれを伝えると、「お互い、嫁より長い付き合いですから」と、笑って答えてくださいました。

これからも、ゆるく、楽しく、続く、室谷青年会が目に浮かびます。
たくさんのお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

室谷青年会さんの特別なこと
大好きな室谷と
青年会の仲間たち
お腹いっぱい頂きました!
ごっつぉさまでしたー!!

室谷青年会さんの#マイごっつぉ

めん処いなばの「激辛味噌ラーメン」

室谷青年会会長の清野さんにとって特別なこと「マイごっつぉ」は、阿賀町立上川小学校の近くにあるラーメン屋さん、めん処いなばの「激辛味噌ラーメン」。10年くらい前にオープンしたお店で、マスターは元「七福温泉 七福荘※」の料理長さんだったとか。「時々無性に食べたくなるんですよね」と会長さん。…分かります。中毒性のあるラーメン、ありますよね。私も辛味噌ラーメン大好きなので、食べてみたいです!…でも「激辛」かぁ…大丈夫かなぁ…(笑)「マスターは歌手でもあるんですよ。めちゃくちゃ歌上手いです」と、裏話まで飛び出しました。ますます興味をそそられます…!ありがとうございます! ※阿賀町の日帰り温泉施設。施設内に、手打ちそばや定食などが頂ける食堂があります。

七福温泉 七福荘のカツカレー

室谷青年会副会長の清野さんにとって特別なこと「マイごっつぉ」は、お勤め先のNPO法人七福の恵(さと)が運営されている「七福温泉 七福荘」のカツカレー。七福荘は手打ちそばや定食などを提供する食堂も営業されているそうで、カツカレーはそのメニューの中の1つ。「そば屋のカレーはうまい、とよく聞きますが、まさにそれです!私はカレーが大好きなので、行く先々でカレーを食べますが、今まで食べたカレーの中で1番おいしいと思ったカレーです。甘さと辛さの両方を楽しめる1品で、1週間に1回は必ず食べてしまいます」と熱弁してくださいました。カレー好きの清野さんが仰るのだから間違いないですね!!次の目標は、この七福荘のカツカレーのカレーを「七福カレー」としてレトルトにすることだそうですよ。夢が広がりますね!

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