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佐渡第一号ブルワリー 島と本土をつなぐ アメリカンスタイルのビール。

佐渡第一号ブルワリー島と本土をつなぐアメリカンスタイルのビール。

さどsado
t0ki brewery

藤原 敬弘 (ふじわら たかひろ)さんの自己紹介

苫小牧工業高等専門学校を卒業するまで22年間北海道にいました。新卒で「日立製作所(神奈川県)」にシステムエンジニアとして就職し、1年で退職。フリーランスでサービス開発をしていました。飯を食えないような苦しい時期もあったものです。2011(平成23)年に高専時代の仲間たちとデジタルプロダクトを行う「フラー」を柏の葉(千葉県)で共同創業。10年ほど一緒に働いた後、佐渡初のクラフトビール造りを目標に「ビアパイント」を創業。2021(令和3)年から、佐渡の地酒「天領盃酒造」の敷地内で「t0ki brewery (トキブルワリー)」を営業しています。IPA(インディア・ペールエール)というアメリカンスタイルのビールにこだわり、佐渡ならではのビール造り、事業展開を目指します。

日本最大の離島・佐渡島。
人々を魅了して止まないこの島に、佐渡第一号のクラフトビール醸造所「t0ki brewery(以下、トキブルワリー)」があります。

代表の藤原さんは北海道出身。
美しい黄金色の一杯にどんな思いが込められているのか…!
ごっつぉLIFE編集部は佐渡に渡り、お話を伺ってきました。

トキブルワリーがあるのは、国道350号沿いにある天領盃酒造の敷地内。
なぜ日本酒の酒蔵内にあるのかも気になります…!

全国最年少蔵元との出会いから始まった、佐渡でのクラフトビール造り

北海道出身の藤原さんが、なぜ佐渡でクラフトビール醸造を始めたのか。
気になる経緯についてお聞きしました。

「クラフトビールの本場としては、ドイツ・イギリス・ベルギー・アメリカなどが挙げられますが、先進的にビールを造っているのはアメリカ西海岸。
クラフトビール文化が盛んなシリコンバレーには、IT技術を学んでいた学生時代から合宿や視察で訪れていました。
現地のクラフトビールを飲んで『自分で造ってみたい』という想いがずっとありました」

好みの味わいをとことん追求できるクラフトビールの世界にのめり込んでいった藤原さん。
システム開発でも、ビール造りでも、“自分の好きなものをとにかく作るスタイル”は変わりません。

「クラフトビールはいろんな素材をミックスするカルチャーがあるので、まだブルワリーのない佐渡ならおもしろいビール造りができるだろうと思っていました。
あとは人の縁があったことも大きなきっかけです」

実は、2011(平成23)年に高専時代の仲間と共にIT企業「フラー」を共同創業している藤原さん。
新潟県出身の創業仲間と一緒に佐渡を訪れたとき、出会ったのが「天領盃酒造」の社長である加登仙一さんでした。

(タップルームからのぞける醸造所。 ※藤原さんご提供写真)

「佐渡でクラフトビールを造るということは決心していて、あとはどこで造り、どこで販売していくかが課題でした。
天領盃酒造の加登さんとはその時初めてお会いしましたが、ビジョンを伝えると『うちの敷地が空いているから使っていいよ』と二つ返事をもらえて。
もともと応接間だったスペースをフルリノベーションしてできたのがこの醸造所です」

天領盃酒造の加登さんは2018(平成30)年に24歳という若さで天領盃酒造の社長となった、日本酒業界では話題の人物。
日本酒とビール、製法は違えど同じ醸造酒というジャンルで佐渡を盛り上げる二人の新たな挑戦の始まりでした。

ほぼ独学で得たクラフトビール造りの技術

(写真左から、「CLEAN CODE v2.0」と「MANO MACHINE v 2.0-b.Koji」)

クラフトビール好きが高じてブルワー(ビール醸造の職人)になった藤原さん。
ビール作りの技術は自分の目で見て、実際に造りながら習得したものだと教えてくれました。

「フラーで働いていた時、会社の近くにある『BEER BRAIN(ビアブレイン/千葉県柏市)』でビール造りを教えていただきました。
ヘッドブルワー(ビール醸造責任者)の方が新潟出身だったことにもご縁を感じています。
とはいえ、すぐに佐渡に行かなければいけなかったので、教えてもらえた期間はほんの少しだけ。ほとんどは独学です。
海外ではビールの自家醸造が当たり前なので、海外のサイトや専門誌を読みながら知見を深めていきました」

(ブルワリー内に置かれていた海外のビール情報誌)

アメリカンスタイルのクラフトビール一筋。

クラフトビールの定義は、
“小規模の醸造所で造られていること”
“独立していること”
“伝統的であること”。

多彩なスタイルと味わいが特徴的ですが、トキブルワリーではアメリカンスタイルの「IPA(India Pale Ale:インディア・ペールエール」)のみにこだわり、繰り返し造っています。

「ビールの原材料であるホップを大量に使用するIPAは苦味が強いビール。
ホップ自体に殺菌作用があるので、ビールを腐らせないためにたくさんのホップを入れたことがIPAの起源と言われています。
IPAの中でもさまざまな派生スタイルがあり、その一つがフルーティーなアメリカンスタイル。
ホップによってパイナップルやグアバ、トロピカルフルーツ系などの香りを楽しめます。
僕自身、アメリカンスタイルのビールが好きなので、自分なりのIPAの解釈を軸に逆算してレシピを造っています」

(タップルームで試飲ができます。2種の飲み比べもOK!)

“訪れたそのトキにしか味わえないビール”をコンセプトにビールを醸すトキブルワリー。
商品ラインナップには、あえて定番がありません。
IPAだけをさまざまな製法で作り、ビールのおもしろさを提案しています。

「常に新しいビールを造っているので、訪れるたびに新しい味わいをお楽しみいただけます。
同じIPAでも、ホップの種類、モルトのベースを変えることで全く違う味わいを生み出せるので、ぜひ飲み比べてみてください」

(缶入り350ml、ペットボトル入り500mlを店頭で販売。 ※藤原さんご提供写真)

スタンディングバー形式でビールを味わえるタップルームでは、常時8種類前後のビールを提供。自社ビールだけでなく、他社製造のゲストビールもその時々でラインナップを変えながら飲むことができます。ビールサーバーから注がれたばかりのビールをテイクアウトできるペットボトル入りや、オリジナルラベルを貼った缶入りもあり、お土産にも喜ばれそうです。

佐渡のフルーツで、佐渡だけの味わいを表現

ブルワリー前にはテラス席があり、温かい季節には屋外での試飲、BBQも楽しめます。
2022(令和4)年春、「佐渡の四季を感じながら、佐渡のクラフトビールを味わって欲しい」という藤原さんの思いが形になったものです。

(トキブルワリーのテラス席)

「佐渡にはおいしいものがたくさんあるので、ビールを一つの媒体として佐渡の豊かな食材を発信していくことは常に意識しています。
今、新しく挑戦しようとしているのは、佐渡の越後姫を使ったヘイジー(濁りのある)IPA。
トロピカルフルーツ系のビールになります。
佐渡はりんごやル レクチエなど、年間通して果物が豊富に採れるので、島の旬の味覚をビールで表現していきたいです」

現在販売中の「MANO MACHINE(マノマシン)v 2.0-b.Koji」は、佐渡にある酒蔵・尾畑酒造とのコラボビール。
学校蔵で作られた米麹を使ったヘイジーIPAも実験的に販売されています。
今後は佐渡島内にある5つの酒蔵とのコラボレーションも視野に入れているというのですから、今から楽しみです!

佐渡島を実感できるリアルイベントを主催

この一年は、ビールの製造・販売だけでなく、月に一度イベントを開催して島内外で佐渡の魅力を伝えてきました。
藤原さんの思いに共感した人々が集まり、回を重ねるたびにイベントの勢いは増しています。

(これまで行われた「トキと酒」のビジュアル。 ※藤原さんご提供データ)
(2022年に開催された「トキと酒 in Kyoto」の様子。 ※藤原さんご提供写真)

「地域活性化につながればという思いから、『トキと酒』というリアルイベントを2022(令和4)年から開催しています。
島内でイベントを行う際は島外の業者さんを集い、佐渡の人々が新しい文化に触れるきっかけづくりを。
逆に、島外で行う時は、佐渡の飲食店や観光業の皆さんと一緒に島外の人々へ島の魅力を提供しています。
佐渡に新潟大学のサテライトが完成したばかりなので、学生さんとのコラボ計画も進行中です。地域との交流は今後さらに力を入れていきたいですね」

2023(令和5)年の「トキと酒」は、3月に新潟市江南区、4月に東京都下北沢で行われました。
今後の予定としては、5月21日(日)に佐渡島内で開催される「2023佐渡ロングライド210」に出店し、6月は北海道、8月下旬頃には佐渡島内で本祭を、秋には東京都東日本橋と続く予定です。

トキブルワリーの新作ビールを島外で飲めて、他の出店者さんとも交流を深められる画期的な企画に期待が高まります。

「僕は元々システムエンジニアなので、ビール醸造の管理を一気通貫できるソフトウェアの開発も並行して行っています。
ビール造りは酒税関連の申請が大変なので、ソフトウェア化して同業者の負担軽減というニーズにも対応できればと考えています。
ビール醸造、イベント開催、ソフトウェア開発も、まだまだ立ち上げたばかり。
これからも好きな人たちと、おもしろいことを追い求めながら、佐渡島内の滞留人口を増やしていきたいです」

限界集落にオープンした、島薬膳レストラン

最後に、佐渡市の魅力的な人をおふたりご紹介いただきました。

1人目は、レストラン営業とイベントの企画運営を行う、メレパレカイコの舘さんご夫婦。
2022(令和4)年に佐渡に移住され、島北部にある虫崎集落に唯一のレストランをオープンしたばかりです。
「店舗をリノベーションした大工さんが一緒で、いつも良くしてもらっています。
限界集落で新たな取り組みを始めたご夫婦の今後の展開に注目しています」と藤原さん。

ぜひ会いに行ってほしい、佐渡でおもしろいことをやっている人

2人目は、HOSTEL perch(ホステルパーチ)代表の伊藤渉さん。

「伊藤さんとは知人からの紹介で、初めて佐渡を訪れた時に出会いました。
伊藤さんの手掛けるゲストハウスでは、トキブルワリーのビールもお楽しみいただけます。
古旅館をリノベーションして完成した館内には、蔵サウナもあり、佐渡でこんなにおもしろいことをやっている人がいるんだって驚きました」

年々おもしろさが増している佐渡島内。
そのキーパーソンとも言える皆さんにお会いできるのが楽しみです。

藤原さん、フルーティーなビールが香る、すてきな時間をありがとうございました!
新作ビールに、イベントも、楽しみにしています!

 お店の情報 
t0ki brewery –トキブルワリー
佐渡市加茂歌代458
電話番号:050-3311-1010
営業時間:金曜16:00〜21:00 ※土・日曜・祝日は12:00〜
定休日:月〜木曜
HP:https://t0ki.beer
Instagram:https://www.instagram.com/t0ki.brewery/

 参考情報 
・フラー株式会社 – 藤原さんが共同創業された会社
 HP:https://www.fuller-inc.com
・天領盃酒造 – 佐渡島の日本酒蔵
 HP:https://tenryohai.co.jp/
・トキと酒 – 佐渡島内外の酒・食・文化を楽しめるイベント
 HP:https://sake.t0ki.beer/




藤原さんの特別なこと
佐渡市と全国、世界をつなぐ
新たな取り組みに今後も注目です。
お腹いっぱい頂きました!
ごっつぉさまでしたー!!

藤原さんの#マイごっつぉ

二ツ亀の看板

トキブルワリー藤原さんにとって特別なこと「マイごっつぉ」は、「環境省選定 快水浴場百選」にも選ばれる二ツ亀の看板。北海道で育ち、社会人になってからは関東圏で長年暮らしていた藤原さんにとって「二ツ亀から北海道577km、東京311km」という表示には特別な感情が湧いたそうです。「住んでいた地域と佐渡との距離を知れたのがうれしくて、うちのビールと一緒に撮影しました。北海道の表示は特に感慨深いです」。島内一美しい海水浴場で遭遇した、うれしい発見でした。「ビール缶は写真撮影後回収しているのでご安心ください(笑)」。

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