佐藤 潤一 (さとう じゅんいち)さんの自己紹介
新潟県立加茂農林高等学校を卒業して、新潟県農業大学校(新潟市西蒲区)に進学。農業の知識を深めてから実家である「佐藤農園(田上町)」に入り、9代目佐藤重松(じゅうまつ)を襲名しました。田んぼや畑作業を手伝いながら育ったので、農業は仕事というよりも日課。朝起きて朝ごはんを食べるのと同じくらい、佐藤家では当たり前の光景です。米を中心に、田上町の特産品であるタケノコの収穫、梅、モモを栽培する他、トマト、長ネギ、里芋、春秋のブロッコリー、ニンジンなどを生産しています。たくさんの人が田上へ遊びに来たくなるように、これからもおいしいものをつくり続けます!
PROLOGUE
田上町の特産品といえば……
ブランド梅「越の梅」やあま〜いモモ、そしてやっぱり外せないのがタケノコ!
旬を迎える5月になると、町内の飲食店や地元の直売所にもずらりと並びます。
「春の風物詩・タケノコを最高においしい状態で味わってほしい!」と2019年4月にイベントを企画したのは、田上町で親子代々農業を続けてきた、佐藤農園9代目の佐藤潤一さん。
県央エリアを中心に、農家仲間で展開する燕三条「畑の朝カフェ」を田上町で開催し、話題を呼びました。
涼しさが心地いい早朝に、竹林にテーブルを並べ
自分の手で収穫したタケノコを、グリルで焼いてみんなで味わう――
それはもう、最高の贅沢です。
2023年夏は、「たがみバンブーブー2023」の開催に向け、実行委員会メンバーとして奔走されていました。
道の駅たがみの道の駅切符にも起用された佐藤さん。
その活動の背景には、どんな想いが込められているのでしょうか?
INTERVIEW
町を活気付ける、若手農家の挑戦。
モモの出荷も終盤となる8月某日、佐藤さんとお会いしました。
道の駅たがみの駅長・馬場さんが「間違いなく、田上のキーマン!」と教えてくれたとおり、得意なこと、好きなことをフル活用して町を盛り上げています。
サウナの聖地として親しまれるホテル小柳でサウナにハマったことをきっかけに、2022年秋には個人でテントサウナイベントまで開催。
佐藤さんを突き動かしているのは、「田上を楽しんでほしい」という純粋な想い。
「田上」をキーワードに、地元の人も、町外から遊びに来た人にも、地域の魅力を体験できる企画を提供してきました。
「田上は、住んでいて幸せな気持ちになれる自慢の町!
町内で一日思いっきり過ごせます。
地元のおいしさ、おもしろさをたくさんの人に知ってもらいたいと思い、イベント開催にも力を入れてきました。
心を満たしてくれる田上の魅力を実感していただけたらうれしいです」
道の駅たがみ駅長の馬場さんが取材時に「ものすごくおもしろい方ですよ〜!」と言っていたこともあり、「すごくおしゃべり好きな人なんだろうな〜」なんて思っていたごっつぉライターの私。
実際に会ってみて感じたのは、多くは語らないけれど、その行動に“あふれんばかりの地元愛がある”ということ。
それは、本職である農業でも同じです。
実は佐藤さん、町内では誰も挑戦してこなかった「年間農業」を実現されたすごい人。
農閑期となる冬に長ネギや里芋を出荷し、通年雇用を生み出しています。
先代もあえてやってこなかった冬の農作業になぜ挑戦するようになったでしょうか?
「就農して5、6年が経った頃、春から秋にかけて忙しく働いていましたが、どうしても冬になると作業がストップしてしまうことに違和感を感じていました。
同世代の農家仲間たちが除雪作業やスキー場で働くのと同じように、僕も働きに出ていましたが、冬にも農業をできないだろうかと考えるようになったんです。
そこからスタートしたのが、冬の雪下ネギです」
「育てた長ネギを雪下で熟成させてから収穫する雪下ネギの生産は結構大変。
すごく手間がかかるし、収穫してから皮を剥いて売る姿にして、配達にも行かなければいけない。
農作業のほとんどは自分との戦いですが、誰かがいてくれたら頑張れる。
そう思って、周囲に声を掛けて仲間たちと一緒に働くようになりました。
秋になって気温が下がってくるとネギの柔らかさと甘みが増してより一層おいしくなります。
全国的にも珍しい雪下ネギのおいしさ。
皆さんにも食べていただきたいです」
田上町以外では購入できないという佐藤さんの雪下ネギ。
鍋の具材に、そのままグリルで焼いて、味わってみてください。
山の傾斜で育つ、田上産の甘いモモ。
田上町では、平場の才勝川(さいかちがわ)周辺で特においしい米が育つと言われています。
それとは対照的に、山手の傾斜を活かしておいしく実っているのが、田上産のモモです。
「昭和30〜40年代に果樹の団地ができて、スプリンクラーをいち早く取り入れたのも田上の農業だったと聞いています。
『こんな奥地で?』と驚くような場所にモモ畑ができて、当時はバスで農家さんたちは移動していたそうです」
山の土壌を活かした難所でのモモ栽培は、日当たりが良く、水捌けがいい斜面であることから、甘くおいしく育つと言います。
昭和から続く、田上のモモ産地としての歴史。
夏になると直売所がモモでいっぱいになり、町内外からお客さんが訪れます。
「地形を活かして甘く育った田上のモモは、どこよりもおいしいですよ」と笑顔で教えてくれた佐藤さん。
髪型をピンクと黄色にしているのは、「モモの最盛期だから」なのだとか。
タケノコの時期には緑、米の収穫時期には金色になるそうなので、佐藤さんを見かけたら髪の色にも注目です(笑)。
EPILOGUE
「おいしい田上」に遊びに行こう!
21歳から農業を始めた佐藤さんも、今年で38歳。
30代目前に始めた冬の農業から働き方を一新し、春夏秋冬の田上のおいしさを人々に提供してきました。
「世界人口の中で、一生のうちに出会える人はそこまで多くありません。
僕と関わった人たちに『出会えて良かった』と思ってもらえるように、これからも仕事を続けていきたいです。
1日3食という食事の機会は、多いようで実は少ない。
その中で、『あぁ、おいしかった!』と感動してもらえるものをこれからもつくります」
佐藤さんが手がけた野菜や米は、道の駅たがみ、佐藤農園で販売されている他、ふるさと納税の返礼品としても選ばれています。
口にした時のおいしさはもちろん、見た目の美しさにも注目してみてください。
一つ一つ、丁寧に育てられたことが伝わってきます。
仕事も、遊びも、全力で楽しむ佐藤さん。
次はどんなイベントが開催されるのか……!?
新しい展開にも期待しましょう。
佐藤さん、ありがとうございましたー!