小栁 雄一郎 (おやなぎ ゆういちろう)さんの自己紹介
加茂生まれ加茂育ち。20・30代はサラリーマンとして働いていましたが、リーマンショックで実家の縫製業が廃業危機となり、実家の事業を引き継ぐ形でG.F.G.S.を立ち上げました。自分好みにカスタムした高品質なボーダーカットソーを商店街内の工場と近隣の職人さんとの協業でつくる、完全受注生産の「ORDER BORDER®」、さまざまなアーティストさんやデザイナーさんとのコラボ、音楽製作、雑誌編集など、G.F.G.S.のスタッフをはじめ、これまで多くの方々と一緒に取り組んできました。
玉川堂の山田さん(ごっつぉLIFE県央1-1参照)から「県央の魅力的な人」としてご紹介いただいたのは、加茂市のボーダーカットソー専門メーカー、株式会社G.F.G.S.代表の小栁雄一郎さん。「G.F.G.S.」は「Good Feel, Good Style.」の頭文字で、「心が動くことを、私たちらしいやり方で」という思いが込められているそうです。
G.F.G.S.さんが手がけてらっしゃるのは、受注生産のみ。アパレルブランドからの注文だけでなく、一般の方もオンラインショップで形とボーダーの太さと色を選び、1着から「自分だけのボーダーカットソー」を注文することができます。
G.F.G.S.ボーダーカットソー注文方法
G.F.G.S.さんのオリジナルボーダーカットソー「オーダーボーダー」は、G.F.G.S.オンラインショップから簡単に注文ができます。
トップページに掲載されている6つの型(女性向けに3つ、男性向けに2つ、子ども向けに1つ)から型を選びます(写真を選択すると型を選択したことになり、次の画面に進みます)。次の画面で、サイズ・袖の長さ・ボーダーの幅・ボーダーの色を2色まで選ぶことができます。全て画面上で選択するだけ。選択するたびに、画面に「仕上がりイメージ」も同時に表示されるのがおもしろい…!
イメージ通りのボーダーが完成したら、右下の「ORDER BORDER」ボタンを押すだけ。価格は袖丈などによって異なり、だいたい税込10,000円から14,000円くらい。納期は時期によって異なるようですが、最短で1カ月くらいかかります。素材はオーガニックコットン100%。肌ざわりがよく、洗濯しても型崩れせず長持ちする、と好評です。
加茂の商店街にある、小さな工場
こんな風に個人がオンラインショップで注文したものも、アパレルブランドからの依頼で作るものも、全て、新潟市加茂市にあるこちらの本社兼工場で、生地を編み立てるところから縫製まで行っているとのこと。
扉を開けると、カラフルなショップスペース。
その奥に工場があります。
写真手前は事務スペースで、その向こうは全て縫製作業のためのスペース。
1番奥の扉の中には、4台の編機(あみき)がありました。
このカラフルな糸も新潟県内の工場で染めてもらっているそうで、糸の素材のオーガニックコットンは海外製ですが、その他は全て「Made in Niigata」。最初から最後まで、目の行き届くところで丁寧に作られていることが分かります。
そうそうたるコラボ歴
G.F.G.S.さんと言えば、
■漫画家・イラストレーターの江口寿史【販売終了】
■ほぼ日(コピーライター糸井重里)【販売終了】
■アダム エ ロペ
■インスタグラマー bonpon
■Noism(新潟のダンスカンパニー)
など、全国的・世界的に有名な会社やアパレルブランド、アーティストや著名人とのコラボでも有名です。
G.F.G.S.製品の質の良さが認められているだけでなく、これは何か秘密がありそうですよね…。どんな営業をされているんだろう。
そして、アパレル業界の主流「大量生産」とは正反対の、「必要な時に、必要な分だけ作る」完全受注生産スタイルを、この加茂の商店街の一角で展開する。
この辺り、G.F.G.S.代表の小栁さんに「その心」を尋ねてみました。
G.F.G.S.を立ち上げた経緯
生まれも育ちも加茂だという小栁さん。ご両親が営んでいらっしゃった縫製業を引き継ぐ形で、2013(平成25)年に新たに株式会社G.F.G.S.を立ち上げます。下請けで縫製を行うOEMのみだった業態を改め、現在の社内で一貫生産ができる形に。大量生産・大量廃棄されるアパレル業界の常識にも疑問を抱き、無駄のない完全受注生産にしたと言います。
「とにかく、流行に振り回されるのが嫌だったんですよね。自分が好きだと思ったものはずっと着ていたいし、ずっと売っていて欲しい。だから、うちはずっとボーダーしか作らないし、ずっとボーダーだけを売り続けます」
と、小栁さん。
そうそうたるコラボ歴は全て営業ではなく「ご縁」
小栁さん、G.F.G.S.のコラボの豪華さ、すごいですね。
江口寿史さんとかほぼ日さんとか、熱烈アプローチをされたんですか?
「いや、うちは基本営業しないからね(笑)。展示会もほとんど出ない。コラボは何かのご縁があった方々ばかり。江口さんは昔、僕が抽選で当たって、新潟で開かれたライブドローイングのイベントに行ったの。その時に、うちのボーダーカットソーをお土産に持って行ったら気に入ってくれて、後日連絡をくれたのが始まり。それから、ずっと交流があって、もう3回かな?コラボしてるね」
おぉ…
抽選で当たるという運から始まったご縁。
「ほぼ日さんは、ほぼ日のスタッフさんがうちのカットソーを着てくれていて、そこから声がかかったの」
おぉ…
個人的な好みから始まったご縁。
「ほんと、不思議だよね。僕はね、ほぼ何もしてない(笑)。みんながおもしろがってくれる。基本、みんな、過大評価だと思うんだよね、僕のことも、うちのことも(笑)」
いやいや、そんなことはないでしょう(笑)。キチンといい仕事・いい製品を生み出してらっしゃるから、評価されているんだと思います。
小栁さんの「引き寄せ力」と金髪の理由
あとはやっぱり、小栁さんの「引き寄せ力」じゃないでしょうか…。
その金髪も何か、その、験担ぎみたいなものがあるんですか?
「ないない(笑)。この髪の色は、G.F.G.S.を立ち上げて初めて出た東京の展示会のブースの場所がとんでもなく悪いところだったから、これは何かしなきゃ注目してもらえないな、と思って、前日に金髪に染めて行っただけ。革ジャン着た金髪のおっさんが、肌触りの良いオーガニックコットンのカットソーを売ってるっていう、いいでしょう?ギャップもあって(笑)」
えぇ、おもしろすぎます(笑)。
でも、それからずっと、金髪なんですよね?
小栁さんのトレードマークでもあり、G.F.G.S.のアイコン的な役割もあるような…。
「そうなんだよね。僕は金髪じゃなくてもいいと思ってるんだけど、変えようとすると“いや、金髪でいてください”とか、取材前に“必ず金髪でお願いします”とか言われちゃうんだよね…」
そうなんですね(笑)。
てっきり小栁さんのこだわりかと思っていました。
「ロックなのは僕の内側にあるものだけであって、外側はそんなに…なんですよ」
ロックと言えば、公式WEBサイトにも「何かが面白くない、面白くなければ作ればよい、既存の仕組みを壊したいなど、僕のアイデンティティは創造と破壊という事になるかもしれません」と書かれていました。そうか、これも小栁さんの内面的なお話なんですね。
「無いから有るところへ出ていくのは嫌。無いなら作ればいい」
小栁さんの内面的なロックは、こんなところにも…
「昔からそうなんですけど、“無いから有るところへ出て行く”みたいなのが、好きじゃないんですよね。“無いなら作ればいい”と思う」
だからG.F.G.S.さんも、ここ加茂の商店街の一角に誕生したんですね。
「そうだね。田舎は何もないから、東京へ行かなきゃダメ…みたいなのも嫌だったからね。イギリスのパンクバンドなんかも、田舎でムズムズ・沸々と沸き上がるパワーを若者たちが発信して誕生した音楽ですし、田舎が生み出すパワーとか発信する意味って大きいと思っています。…まぁ、僕にとっては、“生まれ育ったまちにいるだけ”なんですけどね(笑)」
無いから作ったものの1つ「BBC Kamo Miyagemono Center」
2021(令和3)年4月、G.F.G.S.から徒歩1分の商店街の一角に、おしゃれなカフェ兼加茂のお土産ショップが誕生しました。実はこちらもG.F.G.S.さんが、元々あった「加茂土産物センター」を改装して、プロデュースしたお店。今回お話を伺った場所も、このカフェです。
これも小栁さんの「無いから作ったもの」の1つだそうで…
「加茂は大学や学校もあって、学生さんも多いんです。でも、市外・県外から加茂に来られる方を含めて、若い人たちが立ち寄れる場所がなかったんだよね。だから作った。加茂の外からも来てもらえるように…と、こだわりのコーヒーとオリジナルドーナッツの販売も始めましたし、もともとある加茂のお土産も、おしゃれなパッケージにデザインを変えたりして、注目してもらえるようにリブランディングしながら売っています」
とのこと。
こちらのドーナッツ、私も取材終わりに買って帰り、おうちで頂きました。上の写真の、右上のカスタードクリームが入っているものを頂いたのですが、ふわっふわの触感とボリューム感、そしてしっかりした甘さが印象的でした。これはコーヒーにピッタリ!おいしかったです♪
このお店「BBC Kamo Miyagemono Center」を任されているのは、小栁さんの奥さんの恵美子さん。
商店街は多様性があってカッコイイ
最後に、小栁さんに加茂の魅力をお尋ねすると…
「商店街が明るいことだと思います」
と、ひとこと。
「商店街の良さを分かって、生活している人が加茂にはいるんですよね。ここだけである程度商圏が成り立っている。僕は昔から“加茂は商店街がカッコイイ”と思っていて、“商店街は多様性”だとも思っているんです」
確かに、専門店が軒を連ねる商店街は、多様性を体現していますね。
そして「商店街が明るい」と表現された理由も分かる気がします。加茂駅から約1kmに渡って続く8つの商店街。取材に伺った日も、車も人通りも絶えることはなく、「人々の生活の場」であることが伝わってきました。
「たまに“文房具屋さんがあるんですか!?”って驚く人もいるんだよ。もちろん皆さん現役でお店を開けていらっしゃるし、ここで生活する人たちは、商店街で買い物をする人が多い。加茂の商店街はまだまだ必要とされていて、元気だと思いますよ」
「生まれ育ったまちにいるだけ」
この取材、私ごっつぉライター、人生最大のギャップ萌えとなりました。
…と言うのも、事前に調べた情報から想像していた小栁さんと、実物が全く違ったから。どんなにファンキーでロックでとがった人が出てくるんだろうと思ったら、小栁さんの語り口は常に柔らかく、控えめ。全く飾ることなく、終始自然体。
特に、取材の途中でサラッと仰った、「生まれ育ったまちにいるだけ」という言葉が印象的でした。何かを成し遂げようとか、自分がこのまちの未来を背負って…というようなものではなく、ただただ、「生まれ育ったまちにいるだけ」。それが必ずしも当たり前ではない現代において、「それでいいんだ」「それがいいんだ」と改めて気付かされたように思いました。
だって、小栁さんはこんなに楽しそうなんだもん!
次は車!G.F.G.Sさんの今後にご注目!
そして小栁さんには「引き寄せ力」がある。
それは今も現在進行形でいろんなつながりを生み、新しい動きを起こしています。
小栁さん曰く、G.F.G.S.の次のキーワードは「車」だそうで、そのデザインセンスが買われて、某車メーカーとのコラボが動き出しているとのこと。
「これからは、“衣食住”じゃなくて、“衣食車”も良いな~と思ってるんです。車が移動手段でもあり、暮らしでもある。それに、車も洋服と一緒で、日本では古くなるとすぐ新しいものに買い替えられてしまうでしょう?僕は車も洋服と一緒で、古いものをずっと長く、大切に乗る文化を作っていきたいと思っているんです」
と、小栁さん。
洋服の次は車…!その展開は想像できなかったです…。どんどんとアップデートされるG.F.G.S.さん・小栁さんの今後に注目です!
各種SNSで近況の動きを発信されているので、ぜひチェックしてみてください。
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■G.F.G.S. Instagram
小栁さん、ありがとうございました!
まずは私も夏に向けて、ボーダーTシャツオーダーしまーす!