馬場 大輔 (ばば だいすけ)さんの自己紹介
田上町で生まれ育ち、中学生になると父の仕事の関係でマレーシアに移住しました。外からの視点で自分たちを見ること、海外では日本と違う時間の流れの中で人々の生活があることを感じながら、多感な時期に刺激的な時間を過ごしたと思います。大学卒業後は海外へ行く機会も増え、友人を介して台湾のあるコミュニティーに参加しました。そこで世界各国の人々と出会い、「自分の言葉で、自分の国の未来を語れるようになりたい」と感じた事を覚えています。その後、自分の生まれ育った日本、新潟の歴史文化を学ぶことができる職場として「北方文化博物館」で伊藤家8代目当主のもと地域文化継承の重要性を学び、2020年4月「道の駅たがみ」駅⻑に就任。2020年10月、町の皆さまに支えられ、道の駅をオープンすることができました。地域資源と地域コミュニティーを大切にし、地域を次世代につなぐ活動に挑戦しています!
PROLOGUE
新潟市と加茂市の間に位置する田上町。
皆さんは遊びに行きますか?
ごっつぉライターの私は、子どもと一緒によく訪れる大好きな町です。
地元パン屋さんでパンを買ってから、「田上町総合公園YOU遊ランド」の遊具で遊ぶ日もあれば、加茂市商店街や加茂山公園に行くのと合わせて「Sorriso(ソリッソ)」のジェラートを食べたり、「山cafe一歩(いっぽ)」のワッフルを食べに行ったり。
新潟市からもアクセスが良く、自然豊かで心身ともに癒やされる環境があります。
2020年3月に全線開通した国道403号小須戸田上バイパスを走っていると見つけられる、田上町の情報発信拠点「道の駅たがみ」もおすすめです。
店内には地元の特産品やオリジナル商品がたくさん!
採れたて野菜が豊富にそろうオープン直後の時間帯は特に見応えがあります。
田上らしい商品ラインナップに、思わずワクワクしてしまいます。
地元菓子店とのコラボで完成した田上のおやつも、おいしくてかわいいものばかりです。
併設する「たがみ食堂 おひるとおやつ」にも、ここでしか味わえない味がたくさん。
特産品の「越の梅」やタケノコなど、地元で採れた食材を使用した気になるメニューが目白押しです。
個人的に注文率高めの「チャーシューメン」は、田上のシンボルの一つ、アジサイを連想させる紫玉ネギがトッピングされたカラフルなラーメン。
先日、「田上町町民が選ぶ熱愛グルメ大調査」で4位を獲得したと聞いてうれしくなりました!
地元住民も認めた田上グルメ。
誘惑がいっぱいで悩むこと間違いなしですが、寄ってみると田上をもっと深く知ることができますよ。
INTERVIEW
地域文化継承の大切さを地元・田上で広めたい。
「やさしい道の駅」を掲げる道の駅たがみ。
愛らしいロゴデザインとカラフルな配色で、誰でも利用しやすい施設です。
駅長・馬場大輔さんの気さくでフレンドリーな接客も、「また行きたい!」と思わせてくれます。
以前は横越(新潟市江南区)にある豪農の館「北方文化博物館」で働かれていたそうですが、なぜ道の駅の駅長になられたのでしょうか?
「『北方文化博物館』は、明治時代に建てられた伊藤家の邸宅、庭園、そして今も続く伊藤家の生活を通して、新潟の生活文化を後世につないでいく為に運営をしています。
まさに、地域が一体となって、地域文化継承を大切にしています。
北方文化博物館では、地域の人たちと横越で何百年も続いているお祭りに携わることで、神楽という歴史ある祭り、五穀豊穣を祈る神事などに関わらせていただき、それらを受けついでいく人々の姿勢に感銘しました。
次第に、自分の生まれ育った田上の地域文化への関心が高まり、またそれをつなぐ関わりを持つことができないだろうかと考えるようになったんです」
どこの町にも何かしらの課題があり、それは田上町も同じ。
「自宅があり、自分の子どもたちが暮らす田上の未来のために働きたい」その想いが
駅⻑就任につながったと言います。
「駅⻑を任されてすぐに田上町の認知度調査を実施する機会がありましたが、新潟県に住んでいる方の55%が『田上町を知らない』という結果になりました。
さらに、田上町を知っている人の70〜80%は『田上町の特産品は何もない』と回答。
Web調査なので多少の偏りはあるとしても、なかなかショックですよね。
県内に調査対象を絞っても、田上町が認知されていない。
でも、町の人々からは『俺たちにはタケノコがある!』という声が聞こえてくる。
未だ知られていない強みがあることに『これは逆にチャンスじゃないか』と考えるようになりました。
そこから、田上の特産品を活かした商品開発、イベントの開催に力を入れています」
子どもたちの“心に響く祭り”を開催。
美しい竹の灯籠で“竹の名産地・田上”を盛り上げる「たがみバンブーブー」も、馬場さんが中心になって企画されたイベントの一つです。
2023年の開催は、9月16日(土)〜10月15日(日)。
メイン会場は前回開催と同じ7箇所。
原ヶ崎運動広場脇の竹林や椿寿荘、湯田上温泉の4施設に加え、道の駅たがみも含まれます。
前回大好評だった「バンブーブランコ」は、早くも道の駅たがみに出現。
安全対策として利用時間は9:30〜17:00までと限られていますが、大人も乗れると大人気!
道の駅たがみで働くスタッフの皆さんも気分転換に乗っているというから微笑ましいです。
開催2年目にして町を象徴するイベントとなった「たがみバンブーブー」。
どんな思いが込められているのでしょうか?
「常々考えていたのは、それぞれの町にはその地域を象徴する祭りや催事が必要だということ。
単純にお祭りを行うだけではなく、地域性に特化した、その土地の風土や歴史文化がちゃんと内包されたお祭りであるほど、地域の人たちが楽しみながら誇りを育て、人々が田上に訪れるきっかけにもなる。
かつては、アジサイや竹を活かして護摩堂山の頂上からそうめんを流す『大そうめん流し』があったそうなんですが、僕も記憶にないくらい昔のこと。
護摩堂山の標高は274mですから、よく流しましたよね(笑)。
そんな時、町内で放置竹林の課題を知りました。
高齢化や生活環境の変化により放置竹林が増え、特産品のタケノコが採れなくなってしまう。
祭りの課題と地域資源の課題。
2つの問題を解決するために動き出したのが『たがみバンブーブー』です」
イべントを成功させるために馬場さんが頼ったのは、世界を舞台に活躍する、竹あかり総合プロデュース集団「CHIKAKEN(チカケン)」。
はるばる熊本県から訪れた竹職人たちは、人里の近くに竹林がある田上町特有の地形に驚いたそうです。
「日本で竹林を会場にイベントを行っているのは田上だけなんです。
竹林は山奥にあるものですが、田上は町と竹林が融合している。
他の竹灯籠や竹あかりのイベントとは視点を変えて、田上にしかできないことをやろうと計画してきました」
「たがみバンブーブー」の「ブー」は、英語で「驚かせる」。
田上の竹を使って、訪れた人々を驚かす仕掛けを今年も検討中のようです。
2023年の見どころはどんなところでしょうか?
「今回は映像系の方、インバウンドチームも加わり、海外旅行者向けにも情報を発信していきます。
竹林の広さも、前回の倍以上と大きなアートにする予定。
昼間に歩いても美しい空間を作って、どの時間帯でも楽しめる仕掛けをご用意します。
イベントを開催できるのは、田上町商工会⻘年部をはじめ、地域の協力があってこそ。
子どもたちに地域資源である竹の魅力を伝えていくことで、『この町で何かやりたい』という想いが芽生えたらうれしいです」
夏祭りの要素も加えながらさらにパワーアップしていくようですから、期待しましょう!
EPILOGUE
田上町の魅力を伝え、つなぐために。
田上町に大きなムーブメントを起こしている馬場さんですが、新しい挑戦は他にもあります。
2022年12月から始まったのは、羽生田(はにゅうだ)小学校の創立150周年記念でスタートした「たがみガチャ」。
4年生の生徒たちと一緒にキャラクターを考え、道の駅のトータルデザインを手がけた hickory03travelers(ヒッコリースリートラベラーズ)さんにデザインを依頼。
子どもたちの発想力が活きるかわいいグッズが完成しました。
今後もブラッシュアップしながら、オリジナルガチャの設置を続けていく予定です。
田上の特産品・タケノコを活かしたアパレルグッズもかわいい。
さらに、放置竹林を活かした新商品の開発も進んでいました。
これまで処分に困っていた放置竹林の竹を活用した「田上メンマ」の商品化です。
同じ加工場では生産者の減少で生産が止まりかけていた田上産「越の梅」の梅干しも2023年春から製造を始めているようです。
従来商品の製造を引き継ぎながら、地域資源に新たな息吹をもたらす。
馬場さんに不可能なことなんてないようにさえ感じました。
「田上って、2つの小学校から1つの中学校に上がり、高校・大学に行って二度と帰ってこない町なんですよね。いや、本当に。
現状を変えるためには、子どもたちに引っかかる“何か”を植え付けないといけない。
メッセージを伝え続けられるように、これからも学生たちと一緒に企画を作り上げていきます!」
NEXT EPISODES
町づくりに尽力!三条市下田郷の立役者
最後に、県央の魅力的な人をおふたりご紹介いただきました。
1人目は、「道の駅 漢学の里 しただ」や、八木ヶ鼻温泉「いい湯らてい」を運営する下田郷開発の佐野英憲さん。
「地域の雇用を増やすこと、そして、稼ぐ力を意識されながら地域づくりをされている方です。
道の駅たがみをオープンする際も、今も、たくさんのことを教えてもらっています。
未来を考えながら、勉強して、実践するし、お金を作る。
いつも勉強させてもらっています」
多岐に活動する、言わずと知れた田上のキーマン
2人目は、タケノコ、ネギ、梅など、田上の特産品を栽培されている佐藤農園9代目の佐藤潤一さん。
「なみ福(新潟市西蒲区)のチャーハンに使用しているお米も作られています。
田上愛が深く、販路開拓もブランディングも自分でできる方です。
実は、うちの子どもたちの空手教室の先生でもあります。
インパクトのあるキャラクターで、最近は道の駅切符にもご登場いただきました。
僕をいつも助けてくれるおふたり。ふたりともめちゃくちゃパワーがありますよ!」
どんなお話になるのか、今から楽しみです。