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北雪酒造の女性向け 日本酒「美水月(みずき)」を造った 3人の女性蔵人。

北雪酒造の女性向け日本酒「美水月(みずき)」を造った3人の女性蔵人。

さどsado

株式会社北雪酒造の自己紹介

1872(明治5)年創業。2022年に創業150周年を迎えました。佐渡産の原料を用いた商品を多く製造。創業以来、守り受け継がれてきた熟練の技と共に、音楽を聴かせて熟成させた音楽酒や、超音波熟成、遠心分離など、これまでになかった新たな“一手”を次々に取り入れ、日本酒づくりの時代を切り開く、イノベーティブな酒づくりを目指しています。

佐渡と縁の深いラジオパーソナリティ立石勇生さんと一緒に、まず向かったのは佐渡の南部、赤泊にある「北雪酒造」さん(立石さんのお話はごっつぉ LIFE 佐渡市1-1 参照)。明治5年創業の酒蔵で、2022 年に創業 150 年を迎える老舗酒造メーカーさんです。北雪酒造さんに向かうルートは両津港から海沿いに行くコースと、山を越えて行くコースがあるそうなのですが、今回は立石さんと相談し、なかなかの山道ですが「山越えコース」を選択。車を走らせること約1時間、趣のある町並みにしっくりと馴染む北雪酒造さんに到着しました。

今回は2021年に初めて造られた日本酒「ほくせつ美水月」を手掛けられた、3人の女性蔵人を訪ね、お酒の話と、赤泊の魅力について伺いました。

販売初年度の2021年も、次年度の2022年もあっという間に完売した幻のお酒「ほくせつ美水月」

そうなんです。私、このお酒がそこにあると思って行ったのです。しかし、もうそこには一滴も残っていませんでした…。ネットで調べてもなかなか情報が出てこないのも納得です。販売初年度の2021年は1カ月足らず、次年度の2022年も数カ月で完売してしまったそうです。
それがこちらのお酒「ほくせつ美水月」。

北雪酒造さんにも残っていないので、この写真も空箱&空瓶です(笑)。

3人の女性蔵人さんが「女性にも飲みやすい日本酒を」というコンセプトのもと造られたもので、お酒の名前は3人のお名前に共通で入っている「美」から考案されたとのこと。北雪のお酒の特徴である「辛さ」を抑えつつも、北雪らしさが残るようにとこだわられた一品だそうです(ますます飲んでみたい…)。

きっかけは佐渡産山田錦への挑戦と社長の一声

「ほくせつ美水月」を造るきっかけとなったのは、2020 年産の酒米に余裕があったこと。その酒米は契約農家さんが作ってくださった「佐渡産の山田錦」。佐渡は気候が適さないことから山田錦を作るのは難しいと言われていたにも関わらず、見事な山田錦を作ってくださいました。…そうだ、これでひとつ「チャレンジ」をしてみよう!と思い立ったのが羽豆(はず)社長。3人の女性蔵人さんを呼んで「この酒米を使って、3人で新しい北雪の酒を造ってみてほしい」と話をしたそうです。
その3人がこちらの方々。

左から、入社 10 年目の筑前芳美(ちくぜんよしみ)さん、8年目の本田美帆(ほんだみほ)さん、4 年目樋熊美帆里(ひぐまみほり)さんです(…ほんとだ!みんな名前に「美」が入ってる!)。北雪酒造さんに入社してからリキュールの商品開発はしていたものの、日本酒の醪(もろみ)管理を任されるのは初めてだったので、この社長からの一声は「素直に、とてもうれしかった」と言います。

個性豊かな3人のプロフィール

ではここで、3人のメンバー紹介です!

まずこちら、北雪酒造さんの女性蔵人歴最長の筑前さん。東京農業大学醸造学科卒業で、本田さんと樋熊さんが「醸造の大先輩」と慕うお姉さん的存在。ご出身は神奈川県で、大学2年生の時にインターン実習で北雪酒造さんへ。実習はわずか 10 日間だったそうですが、この実習期間中にすっかり北雪酒造さんと赤泊の良さに惚れ込んでしまい、「大学を卒業したら雇ってください!」と当時社長だった現会長に申し出たそうです。そして大学4年生になり、本当に「就職したい」と連絡をし、晴れて北雪酒造さんの女性蔵人として就職。その後、佐渡の方とご結婚され、定住されるという、なんともドラマチックな I ターン移住者さんです。10 日間で惚れ込んだ赤泊の魅力は、また後ほど。

次に、こちらは佐渡出身の本田さん。赤泊に嫁ぎ、北雪酒造さんに就職されたそうです。本田さんはなんと、就職するまで日本酒を飲んだことがなかったそうです。それが入社後、北雪酒造さんのお酒「YK35」を飲んで「飲みやすい!」と感動し、日本酒製造のおもしろさにのめり込んでいったそうです。醪(もろみ)の搾り方ひとつで表情を変える繊細な日本酒を好きになり、YK35の他にもこの地域で愛されている「金星」などを飲んで、徐々にのんべぇの道へと足を踏み入れたとのこと。「もともとのんべぇなのは他のおふたりで(笑)、私は新参者です」と仰いますが、いやいや、もうたぶん立派なのんべぇさんです。

そして最後、こちらは元祖のんべぇ!お酒大好き!樋熊さんです。三条市出身で、大学生時代にハマった日本酒が好きすぎて北雪酒造さんに就職。営業職として就職したため、佐渡での研修後は、島外での営業活動に従事する予定だった。…はずが、日本酒大好き樋熊さん、研修で1年間製造現場に携わったところ、日本酒のおいしさ以上に「酒造りの奥深さ」に魅了されたそうです。そのため「すみません、このまま佐渡にいさせてください」と社長に懇願し、蔵人の道へ。「お酒は微生物の働きでできるもの。数値だけではコントロールできず、五感全てで操るもので、酒造りは本当に奥が深いです」と。

女性3人が感じる「赤泊の良さ」

経緯は違えども、縁あって北雪酒造さんに就職し、赤泊で生活されている女性3人。この地域での暮らしについて聞いてみました。

「大学時代にインターンで北雪に来て、赤泊で過ごした 10 日間で“これは…!”と思いました。赤泊の人はとにかくみんな優しく、見ず知らずの私にもすぐに声をかけてくれたことがうれしくて、 “ああ、私、ここで暮らしたら幸せだろうな…”って思えたんです。食べ物もお酒もおいしいし、移住する不安よりもワクワクが勝っていました」

と筑前さん。お話されている時も本当に楽しそうで、 “ここで暮らしたら幸せだろうな…”は大当たりですね!

「赤泊は山も海もあり自然と共に暮らせる地域で、山の幸や海の幸をご近所さんでお裾分けしたりと、人とのつながりを本当に身近に感じられる地域でありがたいと思っています」

と本田さん。

「飲み会もよくありますよね?だいたい祭りなど地域の行事に絡めてですが、地域の人と普通に飲むことが多いような気がします。楽しいです。おいしいお酒が飲めて幸せです(笑)」

と樋熊さん。

皆さんとても素直で、地域の方々に愛されるキャラなのもよく分かります。
また、赤泊は佐渡の中でも本土までの距離が1番近いため、佐渡の玄関口として人や物を迎え入れ、その往来によって栄えた歴史もあり、外から入ってくる人に寛容なのかもしれません。

祭りは年に一度の大イベント!

赤泊での生活についてお話を伺っていると、いつしかお祭りの話に。

「海上相撲ってご存じですか?夏のお祭り“赤泊港まつり”のイベントの1つで、海の上で相撲を取るんです。私、女性の部で優勝したことがあります!」

と筑前さん。なんとなく、若い女性が積極的に地域のお祭りに参加して楽しむイメージはなかったのですが、筑前さんの語気が急に強まり、その興奮度合いが伝わってきます。

「祭りの日は朝からお酒飲んでも誰からも文句言われないですから(笑)、フェスですよ!」

そうかー、フェスかー。そんなに楽しいんだ…。筑前さんだけがレアな感覚をお持ちなのかと思ったら、他のおふたりも全くの同意見だそうで、

「海上相撲、飛び入り参加OKなので、ぜひ今度来てください!」

と。その他にも地元のお祭りはたくさんあるそうで、そのたびに地域の方々とお酒を飲みかわす機会があり、それがまた楽しいのだそう。「北雪の先輩方もみんな祭り好きで、どんどん参加しろと背中を押されます」というお話もあったので、そうか、この会社自体がそういう社風なのか…と理解しかけた頃、そばで話を聞いてくださっていた羽豆社長が、

「どんよりした顔をしていても、旨い酒は造れないですからね」

と一言。
…納得です。
なんて素敵な会社なんでしょう…!

第3期の「ほくせつ美水月」の動きはインスタをチェック! #女性蔵人奮闘中で検索!

お話を聞いて赤泊への興味がものすごく湧いてきた私。赤泊港まつりの日程を調べていました(笑)。例年通りであれば 、8月上旬に開催されるみたいです(2022年はコロナ禍のため中止)。

さて、3人の女性蔵人さんが造られた日本酒「ほくせつ美水月」、 2023 年春頃販売予定の第3期分の仕込みもすでに動き出しているそうです。具体的な動きは、北雪酒造さんの公式インスタグラムをチェック!「#女性蔵人奮闘中」で検索!ここで仕込みの進み具合や発売日、販売本数などの情報も発信されるとのこと。第1期・第2期もお酒自体は全く同じものではなく、酒米や精米の度合い、製造方法なども工夫していたそうで、第3期もまた違ったお酒になるそうです。「“今年の美水月はどんな味かな?”と楽しみにしてもらえるとうれしいです」とのことでした。

今回の取材の中で、皆さんからふと出た「お金で買えない幸せ」という言葉。特に地方に移住して生活する方々からよく聞く言葉ではありますが、それが今回、こんなにも素直に受け止められた自分に少し驚きました。それはたぶん、目の前の移住女性3人が、嘘偽りなく、本当にその価値を実感し幸せを享受されているからだな、と。幸せを分けていただき、少しホワホワした気持ちで北雪酒造さんを後にしました。

最後に立石さんとパチリ。また来ます!また来たい!赤泊と北雪酒造さん。

北雪酒造・女性蔵人さんの特別なこと
北雪のお酒のおいしさと
赤泊の人の良さ・祭りの楽しさ。
お腹いっぱい頂きました!
ごっつぉさまでしたー!!

北雪酒造さんの#マイごっつぉ

赤泊港まつりの「海上相撲」

北雪酒造の女性蔵人・筑前さんの「マイごっつぉ」は、赤泊港まつりの「海上相撲」。毎年8月初旬に開催されるお祭りで、赤泊じゅうの小学生から大人まで老若男女みんなで楽しむそうです。中でも海の上に浮かべた土俵の上で相撲を取る「海上相撲」は、大盛り上がりの一大イベント。「本物の力士さんが来て解説してくれることもあるので、相撲好きの方にも見応えがあります」と筑前さん。普通の相撲とは違い、滑ったり、海に落ちたりとおもしろいことばかりだそうで、小学生が「はっけよーい…のこった!」の合図と共に行司さんを海に落とすのも、定番のお約束だそうですよ。そしてなんと筑前さんは、女性個人戦の優勝経験者!こちらの写真は、筑前さんが優勝賞品の北雪のお酒を手に入れた瞬間です。この海上相撲、住民でなくても飛び入り参加OKだそうですので、全国の挑戦者の皆さん、集え!赤泊へ!

お食事処「三益」のカツ丼と冷やし中華

北雪酒造の女性蔵人・本田さんの「マイごっつぉ」は、赤泊にあるお食事処「三益(みます)」のかつ丼と冷やし中華。赤泊の人のほとんどが足を運んでいるお店だそうで、「カツ丼はカツを卵でとじ、カツの下には赤泊産のお米✨カツの衣に卵とじの旨味が染み込んでとてもおいしいです‼︎カツ丼と一緒に出される手作りのおしんこも優しい味でおいしく、住民に愛され続けている一品です」と本田さん。そしてもう1つは夏季限定メニューの冷やし中華。こちらは「麺にのっている具材は細切りでサッパリとしたタレとよく絡んでおいしさを引き立ててくれます♪暑い夏にはどうしても食べたくなってしまいます!」と大好きな気持ちがひしひしと伝わってくるメッセージと共に教えてくださいました。「夏はいつもこの2品で迷います(笑)。好きなものを選べる幸せ。食べる幸せ。三益さんから幸せのパワーを頂いています」とのこと。わかります…。どちらもとってもおいしそうです。幸せいっぱいのお裾分け、ありがとうございます♡

お食事処「春日」の背脂ラーメン

北雪酒造の女性蔵人・樋熊さんの「マイごっつぉ」は、城ヶ浜海水浴場近くのお食事処「春日」の背脂ラーメン。背脂ラーメンが有名な県央地区・三条出身の樋熊さんは「まさか佐渡で背脂ラーメンが食べられるとは思ってもみず、初めて食べた時は感激しました」と。「あまりのおいしさに、何度食べても思わず笑みがこぼれる味です」と大絶賛。どんなに疲れていても、この春日さんの背脂ラーメンを食べると幸せに満たされるそうで、樋熊さんにとって大切な一杯だそうです。故郷の味が、遠く離れた場所で味わえると感動しますよね。背脂のギトギト感と玉ねぎシャキシャキ感、お写真からもよく分かります。とってもおいしそうです!赤泊でも新潟の5大ラーメンの1つ、背脂ラーメンが食べられる…φ(. .)要チェックです…!

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