勝田 誠 (かつた まこと)さんの自己紹介
佐渡島生まれ。高校を卒業して離島。映像作家を目指して進学したものの、挫折。ミュージシャンを目指して上京し、挫折。結婚を目指して就職し、破局。全てを失い、半端な人生と決別すべく、一か八かのリセットボタンを押し、住所不定無職となり、自転車で沖縄へ。道中で出会った広島県尾道市に惹かれ、引っ越す。USHIO CHOCOLATLと出会い、チョコレートの道へ。これが自分にピッタリと当たる。チョコレートスキルを身につけ、南米へカカオ豆の買い付けに行くなど、すっかりチョコレート漬けに。気がつけば5年。自身の難病の発覚を機に2020年に帰郷。2021年に起業。佐渡島のカカオカルチャー発進基地、莚CACAOCLUBを設立。
北雪酒造さんでの取材を終えて向かったのは、車で5分の距離にある「莚(むしろ)カカオクラブ」さん(北雪酒造さんのお話はごっつぉLIFE佐渡市1-2参照)。2021年8月にオープンしたチョコレート工場・カフェだそうで、オーナー兼ショコラティエの勝田さんにお話を伺うことになっていました。
「佐渡一周線」と呼ばれる国道45号線。両津港から向かうと、「莚場(むしろば)トンネル」を抜けてすぐの坂道を上ります。なかなか建物が見えないので少し不安になりますが、坂を上って右手奥に2階建ての建物が見えてきます。かつて赤泊村の公共施設「ふるさと会館」だった建物で、一部を改装して営業されているとのこと。
こちら右手の方がオーナー兼ショコラティエの勝田誠さん。左は新発田市出身のスタッフさん。ここが入口。チョコレート工場とカフェは入って左になります。
勝田さんが佐渡にチョコレート工場を作るまで
さて、オーナー兼ショコラティエの勝田さん、とても気さくな方で「今回の取材を意識したファッションにしました」と登場。
チョコレート作りを広島県の尾道で学び、そこからの独立という形で故郷の佐渡にチョコレート工場を作ることに。クラウドファンディングも行い、多くの方の支援を受けて、2021年8月13日にグランドオープン。佐渡初のチョコレート工場の誕生です。ここまでの経緯を詳しく知りたい方は、勝田さんのnoteがあるのでご参照ください。
…あれ?そう言えば、モヒカンじゃない!?
…頭に佐渡が乗っている「佐渡モヒカン」じゃない!!
そうです、ご紹介者のラジオパーソナリティ立石さんから聞いていた、あの佐渡モヒカンは跡形もありませんでした。見られなくてちょっと残念(詳しくはごっつぉLIFE佐渡市1-1参照)。髪型を変えてしまった経緯や、今日のファッションのポイントなどを一通りお聞きした後、本題のこちらのチョコレート工場・カフェ「莚カカオクラブ」について伺うことができました。
かつての「集いの記憶」があちこちに残るカフェ
莚カカオクラブさんのこの建物は、かつて赤泊村の集会場でした。カフェスペースはもともと食堂で、カウンターの奥のチョコレート工場は調理場だったそうです。知人の紹介で知った、この物件。
「チョコレートを作るスペースもカフェスペースも、会計カウンターも全部そろっていたので“このまま使えそうだな”と思いました」
と勝田さん。実際に躯体はそのままで、内装のリニューアルだけ地元の工務店の方とアイデアを出し合いながら完成させたそうです。
写真の手前がカフェスペース、カウンターの奥がチョコレート工場です。カフェスペースに飾られた白黒写真は、集会場だった頃にも飾られていたもの。地域の方が保管してくださっていたものを、再び飾っているそうです。壁の三角形の板にも意味があって、佐渡の鬼太鼓(おんでこ)の衣装の模様を模しています。集会場だった頃は、ここが赤泊のおんでこ練習場だったそうです(このカフェスペースとは別のところに、舞台付きの集会スペースもありました)。
さて、気になる勝田さんの表情ですが、こちらは「大好きなウォンバットの顔真似」だそうです(笑)。カフェスペースにウォンバットの写真集もありました。
会計カウンターも食堂時代のまま使用。物販スペースにもなっており、カカオの産地別の板チョコレートと、「カカオあられ」というお菓子が販売されていました。板チョコレートのパッケージには、使用しているカカオの産地のお祭りと、佐渡のお祭りのイラストが描かれています。
「集いの記憶」があちこちに残されている、ちょっと不思議な空間。でもなぜか落ち着く。取材中もずっとお客さんが絶えなかったのも、分かる気がしました。住民が集う場が形を変えて、島内外から人を引き寄せる場になっている、素敵な空間でした。
フロンティア・スピリッツによる地域活性化
勝田さんのご出身は佐渡の両津。ここで事業を始めたのはこの建物との出合いがきっかけで、特に地域活性化を目的に事業を始めたわけではないとのこと。
「それでも僕はいいと思うんですよね。こういうちょっと変わり者だけど、何か意志を持って、何かしたいと思って、やり始めるやつが出てくると、周りに連鎖が生まれてくると思っているんです。そうすることで、自然と地域が盛り上がるんじゃないかな、と。フロンティア・スピリッツってやつですかね。まずはフロンティアを切り拓く人がいてもいいのかな、と」
「フロンティア・スピリッツ」という言葉が勝田さんから出てきたのは、少し意外でした。肩ひじ張らず自然体で、ガツガツしない感じの方だったので。でも、確かに勝田さんがされていることはパイオニアであり、文字通り、莚場の地に新たに切り拓いた集いの場。それを実現させたアツイ想いは、勝田さんのnoteにも書かれています。そして、取材中にも次々と来客があり、勝田さんを訪ねて来られる方が。勝田さんがいることで、莚カカオクラブがあることで、確実に人が動き出していました。
「僕の夢が詰まった場所」
この先考えてらっしゃることを伺うと、1つはまだ手を付けていない建物内の2つの場所「2階の宿泊スペース」と「舞台付集会スペース」を使って何かしたいとのこと。特に「舞台付集会スペース」は、「僕の夢が詰まった場所ですよ!」と興奮ぎみに案内してくださり、ドラムと歌声を披露してくださいました。
そうなんです。「新しいカフェができた」「新しい佐渡のお土産ができた」そんな言葉では収まらないくらいの何かが、ここにはあるんです。
「チョコレートは僕にとってツールなんです。たぶんチョコレートじゃなくても良かった。かつて音楽を生業にしたかった僕が、音楽を通してやりたかった“発信”と“交流”が、今チョコレートというツールを通してできている。それに気付いた時、全てがつながった気がしました」
たぶん、この「舞台付集会スペース」だけでなく、「莚カカオクラブ」全体が勝田さんにとって夢が詰まった場所なんだと思います。これからもっともっといろんな人がここに集まって、いろんなことが実現される場所になっていくんだろうな。
「難しいことは考えていないです。とにかく一度きりの人生だから、やりたいと思ったことを一生懸命やろうと思っています」
柔らかな物腰とは裏腹に、中にアツイものを抱く勝田さん。誰のためでもなく、自分がやりたいと思ったことをやっているだけなのに、そんな勝田さんに惹かれて集う人がいるのも納得します。取材を終える頃には、すっかり私も勝田ワールドにハマっていましたから。