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ふたりの翼で力を合わせ 地域に根ざし、未来に羽ばたく 洋菓子とジャムの店「湖と菓」

ふたりの翼で力を合わせ地域に根ざし、未来に羽ばたく洋菓子とジャムの店「湖と菓」

あがのagano
湖と菓(ことか)

近藤 琴愛 (こんどう ことえ)さんの自己紹介

新潟市出身です。製菓専門学校でお菓子作りを学び、卒業後は新潟の大手菓子店に就職。和菓子や洋菓子の部署に所属し、幅広く経験しました。結婚を機に阿賀野市民になり、2023年阿賀野市の水原エリアに双子の姉とともに「湖と菓」をオープン。休日は子どもたちと公園におでかけしたり、おいしいものを食べに行ったりして、リフレッシュしています。

PROLOGUE

瓢湖から飛び立つ白鳥たち(※ご提供画像/阿賀野市観光協会)

新潟県の冬の風物詩である、白鳥の飛来。

毎年多くの白鳥たちが訪れるのは、白鳥たちの寝床に最適な沼のような湿地の「潟」が多いことと、田んぼに白鳥たちのエサとなる落ち穂があることが、理由なのだそうです。

県内には各エリアに白鳥の飛来地がありますが、中でも全国的に有名なのが、新潟県阿賀野市にあるラムサール条約登録湿地「瓢湖」。11月下旬のピーク時には、なんと1日に6,000羽近くも訪れるのだとか! 新潟県民なら、一度は訪れたことがあるのではないでしょうか。

そんな瓢湖がある阿賀野市水原エリアに、約1年前の2023年秋、この地域にぴったりなお菓子屋さんが誕生しました。

ご提供画像

その可憐な姿に一目惚れする、瓢湖の白鳥をモチーフにしたスワンシュー。

宝石のように色鮮やかに光り輝く、季節のフルーツを使ったジャム。

阿賀野市産「ささかみやまびこ農産」の全粒粉を使った、サクサクほろほろの焼き立てスコーン。

贈り物にも喜ばれる焼き菓子。

見た目の美しさだけでなく、おいしさと素材にもこだわったお菓子の数々に心を奪われます。

これらを手掛けるのは、瓢湖から車で約4分、双子のパティシエ姉妹が営む洋菓子とジャムの店「湖と菓(ことか)」。

今回はこちらにおじゃまして、スワンシューが生まれた経緯や、お菓子づくりのこだわりなどについてお話を伺ってきました。

INTERVIEW

原点は、お母さんの手作りおやつ

2023年10月、阿賀野市役所本庁舎や水原小学校にほど近い住宅街にオープンした「湖と菓」。取材にお伺いした日、私たちごっつぉLIFE編集部を迎えてくださったのは、妹の近藤琴愛さんでした。

「姉は焼き菓子を担当しているのですが東京都在住なんです。都内にあるアトリエで作った焼き菓子を『湖と菓』に並べたり、レシピの開発やメニューの提案をしたりしてもらっています。その他のお菓子やジャム、お店の営業は私一人でやっているんですよ。でもちょくちょく連絡をとりながら、二人でお店を作っています」

なるほど、新潟と東京のエッセンスが詰まった、姉妹ならではのお店なのですね。それにしても、双子で同じお菓子づくりの道を歩まれているなんて、偶然なのでしょうか。

「小さな頃から母が手作りのおやつをよく作ってくれて、学校から帰ると作りたてのドーナツやクッキーが食卓に並んでいました。そのうち私たちも加わって、一緒にお菓子作りを楽しんでいましたね。

私はそのまま好きが高じて新潟の製菓専門学校に進学しました。姉は他にやりたいことがあって上京し別々の道に進んだのですが、のちにお菓子作りの道に行きたいと新潟に戻り、私と同じ製菓学校に入ったんです。卒業後私は県内で、姉は東京で就職しました」と、近藤さんは振り返ります。

ご提供画像

県内の大手菓子店に勤めた近藤さんは、洋菓子に限らず和菓子も含め、数多くの商品に携わりました。仕事の幅が広く、数々の部署で経験を積むことが楽しかったといいます。

「いつか自分のお店を持てたらいいな」と心の中でぼんやりと思い描いていたそうですが、その夢が現実のものとなったのは、育児休業中のこと。自分は慎重派だという近藤さんですが、行動派のお姉さんの勢いに背中を押してもらい、双子の姉妹で営む「湖と菓」を開店しました。

「結婚をして阿賀野市にお嫁に来たこともあり、阿賀野市か新潟市で物件を探していた中で、姉がネットで見つけたこの場所にビビッときたんです。白鳥の飛来で有名な瓢湖が近くにあるこの場所で、白鳥をモチーフにしたお菓子を作るというイメージがすぐに沸いたんですよ」

一度は別々の道に進学するも、不思議なことに双子姉妹が揃ってパティシエになり、力を合わせてお店をオープン。きっと、お母様が愛情を込めて作っていたお菓子のおいしさやぬくもりが、お二人のお菓子づくりの原点なのですね。

日常に寄り添うまちのお菓子屋さん

湖と菓のショーケースに並ぶのは、シュークリームやプリンなどがメインで、一般的な洋菓子店にあるようなケーキ類は、季節に1種類程度。メニューのラインナップには、同店ならではの理由がありました。

「私たちのお菓子づくりの原点は家庭のおやつなので、気軽に買い求められて家族みんなで食べられるような、手に取りやすいお菓子に絞っています。特別な日に選んでらえるのも嬉しいのですが、クッキー1枚でも気兼ねなく買いに来てもらえるような、日常に寄り添うお店でありたいですね」と近藤さんはほほ笑みます。

そして、洋菓子と並んで力を入れているのが、季節のフルーツを使ったジャムです。

ご提供画像

「育休中にジャム作りの奥深さにハマって、最初はジャム専門店をやろうと思っていました。姉や家族のアドバイスもあり洋菓子店になったのですが」と近藤さん。実は同店が生まれたきっかけは、“ジャム作り”にあったんですね!

一般的には、果物と砂糖を合わせて煮詰めれば完成するジャム。しかし家庭で作るものではなく、プロが作るジャムとして近藤さんがこだわったのは、“果物のおいしさを引き出し、フレッシュ感を残す”こと。果物そのものを食べているようなジューシー感、そしてハーブなどと組み合わせた、ここでしか出会えない味わいのジャムを、季節の果物を使って作っています。

ご提供画像

「ジャム作りは最低でも2日、ものによっては3・4日かかるものもあります。フレッシュなものを提供したいので、手間がかかりますが少量ずつ作るようにしているんです。

果物の皮をむいて、刻んで、一度煮込んで、寝かせて、また砂糖を足して煮込んで……と、ちょっとずつ糖度を上げていきます。果物の状態によって加糖も煮込み時間も変わるので、その見極めが難しく、何度作っても緊張しますね。その奥深さが楽しくもあるのですが」と、近藤さんの言葉の端々からクラフトマンシップを感じます。

色や形の悪さから市場で販売されない「ハネモノ」の果物も、近藤さんの魔法にかかればおいしく大変身(※下/ご提供画像)

柑橘類などは県外産を使用しているそうですが、ほとんどの果物は阿賀野市をはじめ、県内産を使用。近藤さんの主な仕入先は産地直売所。実際に食べて美味しかったものや、農家さんに直接連絡をとって仕入れたものなど、自分で足を運び、舌で確かめたものを選びます。

営業日は週に3・4日ですが、おひとりで仕入れ、仕込み、製造をしているため、営業開始日の木曜日に合わせて、目まぐるしい毎日を過ごされているのだそう。

そんな近藤さんにとって、お姉さんのほかに頼れる存在なのが、地域の先輩方でした。

阿賀野市を盛り上げる、心強い仲間の存在

「開店前も今も、阿賀野市でご商売をされている先輩方にとても助けていただいています。インスタグラムでつながったことをきっかけに、私がお伺いしたり逆にご来店いただいたりして、仲良くさせていただいていますね。

湖と菓が開店するときも、ご自身のお店のお客様に宣伝してくださったんです。ライバルではなく、仲間として一緒にこの地域を盛り上げていこうという優しくて素敵な方ばかりで、いつも助けていただいています」と、感謝の思いを言葉にする近藤さん。

実は、近藤さん自身は人見知りで、自分から話しかけに行くことは得意ではなかったのだとか。しかし、勇気を出して話しかけたことをきっかけに素敵なご縁が生まれ、色々なシーンで助けてもらっているといいます。

「この地元食材はオススメだよ」「道の駅で販売するならこんな商品が喜ばれるよ」など、地域のこともお店のことも1年生の近藤さんにとって、地域の先輩方からのアドバイスは、このまちでお店を運営する上で大きなヒントに。

母の日に販売した、阿賀野市・脇坂園芸の食用花「エディブルフラワー」を飾ったスワンシューとケーキ(※ご提供画像)

「みなさんのおかげで、もっといろんなことにチャレンジしたいと思えるんです」

阿賀野市には、世代を超えて新旧のお店が手を取り合い横のつながりを築き、まちを盛り上げようとする気運があるようです。私も取材で何度か訪れていますが、阿賀野市のみなさんって、とてもアツい方ばかりです!

EPILOGUE

お客様とともに地域に根ざすお店を目指して

今秋、ちょうど1周年を迎えた「湖と菓」。

周年祭では東京からお姉さんも駆けつけ、この日だけの特別なクッキーアソート缶や焼き菓子、エディブルフラワーでおめかししたスワンシューなどを販売し、多くのお客様で賑わったそうです。

あっという間の1年であり、まだまだこれからの1年だという近藤さん。今後についてはどのような思いがあるのでしょうか。

「ご来店いただくお客様は地元の方々が多いのですが、週末は瓢湖へのドライブついでに市外からもお客様がいらっしゃいます。中には、新潟市から電車と徒歩でご来店された方もいて、驚いたこともありました。

市外の皆さんからは、『もっとイベントに出店してほしい』という声もいただいているので、これからはお店を出てちょっとはばたいてみようかなと(笑)。道の駅や雑貨屋さんなど、いろんなところでうちのお菓子を手にとっていただける機会を増やしていきたいですね」と思いを新たにします。

そして、もう一つ。まるで絵画のように、景色を切り取った窓が特徴的な店内。近藤さんは開店時から、この場所を喫茶スペースにすることを思い描いているそうです。

「地域の方が集まれるお茶の間のような場所だったり、ドライブ途中の休憩スポットだったり、うちのお菓子とドリンクを提供して、ホッとしていただけるような空間を提供したいと考えています。楽しみに待っていてくださるお客様も多いので、少しずつ実現できるように進めていけたらいいですね」

近藤さんの“やりたいこと”は、お客様との会話から生まれるのだそうです。普段から、お客様と交わす何気ない会話を大切にしていらっしゃる様子が、ひしひしと伝わってきます。

ご提供画像

お客様の声、地元の先輩方からもらうチャレンジする勇気、お姉さんと二人三脚で歩む力強さをもって、きっとこれからも素敵なはばたきを見せてくれることでしょう。

この地域に根ざし、瓢湖の白鳥のように愛される存在になりたい──。

二人のこれからは、まだまだ始まったばかりです。

NEXT EPISODES

最後に、阿賀野市の魅力的なお二人を、近藤さんからご紹介いただきました。

代々受け継ぐ愛情と情熱を注ぐ酪農家「神田酪農」

1人目は、新潟県の酪農発祥地である阿賀野市安田地区で、三代にわたり酪農を営んでいる「神田酪農」の神田豊広さん。県内では珍しい、自社の生乳のみを使ったオリジナルブランド「やすだ愛情牛乳」の販売や、この牛乳をふんだんに使った「ソフトクリーム&ジェラートショップ みるぱす」の運営も手掛けています。

「うちの子どもたちが「道の駅 あがの」で販売している神田さんの牛乳を使ったソフトクリームが大好きで、よく食べに行くんです。そんなご縁から、今年の夏に神田さんのアイスにうちのジャムとクッキーを組み合わせて、新たな商品を販売しました。お客様に大好評でした!」と近藤さん。

我が家も何度か「みるぱす」に訪れたことがありますが、とってもおいしくて私も大好きです。こだわりが詰まった神田酪農さんに、牛たちのこと、牛乳のこと、ジェラートのこと、たくさんお聞きしてきますね。

創業100年!伝統に新たな息吹を吹き込む「御菓子処 渡計」

2人目は、大正13年創業の老舗菓子店「御菓子処 渡計」の四代目・渡邊計一さん。阿賀野市の水原本町商店街にあり、「湖と菓」とは徒歩6分というご近所さんです。阿賀野市の名物としてお土産の定番になっている「白鳥の卵®」のほか、数々の名菓を生み出しています。

「阿賀野市のお菓子屋さんの中で、初めてインスタグラムをフォローしてくれたのが「渡計」さんでした。『湖と菓』がオープンしたときに、渡計さんがうちのことを宣伝してくださって、たくさんのお客様にご来店いただいたんです。とてもありがたかったですね。それからイベントなどでも度々お世話になっています」

「渡計」と言えば、新潟の土産物店でよく目にする、瓶に入った色鮮やかな琥珀糖のお菓子「彩花」も気になっていたんです。老舗菓子店の歴史から地域への思いまで、たっぷりとお話を伺ってきたいと思います。

近藤さんが“恩人”だとおっしゃるお二人、神田酪農さんと渡計さんのエピソードも、どうぞお楽しみに!

近藤琴愛さんの特別なこと、
お菓子づくりの原点、
こだわりが詰まったお店のこと、
これから挑戦したいこと、
たっぷりと教えていただきました!
ごっつぉさまでしたー!!

近藤さんの#マイごっつぉ

瓢湖水きん公園

瓢湖水きん公園は、白鳥飛来地である瓢湖を中心とした公園です。園内には、瓢湖観察舎やクジャク舎、約200種類50万本のアヤメが鑑賞できる「アヤメ園」なども。中でも近藤さんが休日に家族でよく立ち寄るのが「白鳥公園」と呼ばれる遊具エリア。「うちの子たちのお気に入りは、この白鳥の滑り台です。瓢湖にピッタリで思わず写真を撮りたくなるかわいさですよ。遊具で遊んで、瓢湖でエサやりをして帰るのがお決まりコースなんです」と近藤さん。その他にも、「道の駅あがの」の屋外エリア「スワンハウス」もオススメとのこと。どちらも阿賀野市の豊かな自然を感じることができ、小さな子どもから大人まで、ゆったり楽しめるそうですよ。近藤さん、素敵なマイごっつぉをありがとうございました!

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湖と菓(ことか)

店名湖と菓(ことか)
住所阿賀野市岡山町5-15
地図
アクセスJR水原駅から徒歩で約10分
営業時間木曜・土曜+隔週日曜10:00~18:00
金曜12:00~18:00(焼菓子のみ)
※営業日カレンダーはInstagramで確認を
定休日月曜・火曜・水曜+隔週日曜
SNS湖と菓Instagram: https://www.instagram.com/kotoca_/
備考【参考情報】
●atelier kotoca - 東京都調布市を拠点に活動するパティスリー
https://www.instagram.com/atelier_kotoca/

●道の駅 あがの - 阿賀野市の国道49号沿いにある道の駅
https://gozzo-line.com/agano/5385/

●脇坂園芸 - 阿賀野市で食用花・エディブルフラワーを生産
https://gozzo-line.com/agano/5597/

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