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SNSで注文殺到の 佐渡「キムチの家」。 母の味に誇りと愛を 込めたキムチを全国へ。

SNSで注文殺到の佐渡「キムチの家」。母の味に誇りと愛を込めたキムチを全国へ。

さどsado
キムチの家

硲 博巳 (はざま ひろみ)さんの自己紹介

1994年、佐渡生まれです。母が始めた「キムチの家」を継ぐことを決意したのは2019年です。2021年に佐渡にUターンし、母のもとでキムチ作りの修業に励みながら、通販事業を立ち上げ、SNS発信もスタートし、TikTokアカウント「キムチの家」も開設しました。佐渡に戻るまでは僕自身も動画配信などのライバーとして活動していたこともあり、動画投稿やライブ配信でキムチの家をPRしています。

PROLOGUE

読者の皆さん。突然ですが、キムチは好きですか?
「大好きだし、よく食べるよ!」「ちょっと苦手」という人、「好きでもないし嫌いでもない。食べられないことはない」という人もいれば、「韓流ドラマを見るようになってから、見ているとおいしそうで、いろんなキムチを買って食べ比べている(注:私の母です)」というキムチマニアの人まで、きっとさまざまですよね。

さて、そのキムチ。スーパーや直売所など、あらゆる場所で食品メーカーや個人の作り手がそれぞれの手法でキムチを製造していますが、今、佐渡で話題になっているキムチのお店があるのはご存知ですか?

その名も「キムチの家」。キムチを手がけるのは、韓国出身の硲あけみさんと息子の博巳さん。博巳さんがキムチ作りを受け継ぎ、キムチの製造工程を捉えた動画を発信して、本場の味のおいしさを幅広く伝えています。
キムチの味はもちろん、作り手である硲家の人柄やストーリーにも関心が寄せられ、キムチの家ファンは全国各地に広がりつつあります。

そんなわけで、今回は前々回ご紹介したShow by JAWS(ショーバイジョーズ)の岡部健太郎さんからつながった、キムチの家の火付け役・硲 博巳(はざま ひろみ)さんを取材!キムチの家のキムチのこと、製造やSNS発信にかける思いを伺いました。

INTERVIEW

1本の動画から始まった奇跡

キムチの家の創業は1996年。きっかけは硲さんの母・あけみさんが結婚を機に佐渡に移り住み、本格的にキムチづくりを始めたことでした。韓国・釜山(プサン)出身のあけみさんは、当時、佐渡ではキムチを食べる習慣があまりなかったこともあり、佐渡で手に入る材料で本場の味を再現したキムチを作り始めました。
「母がパートで働いていたスーパーで自分が作ったキムチを置かせてもらえないかとお願いしたのがきっかけで、少しずつ母の作るキムチが話題になっていったと聞いています」と硲さん。

博巳さんにとっても、物心ついた頃からキムチは食卓に欠かせない存在。キムチ作りに明け暮れるあけみさんの姿を見て育ちました。しかしその一方で、「家がキムチ屋」などと周りからからかわれるなど、キムチに対してコンプレックスを抱いたこともあり、家業を周囲にオープンにできない葛藤もありました。
「そんなこともあって、高校を卒業した後は佐渡を離れていたのですが、東京の友人に母のキムチを食べてもらう機会があって、その時のみんながキムチを絶賛してくれたんです。自分は母のキムチがどのキムチよりもおいしいと思っていましたから、あぁそれは間違いじゃないんだと。母のキムチをもっと多くの人に伝えたいという思いが日増しに強くなっていき、“キムチの家を継ごう”と決意したんです」。

東京での仕事を辞めて2021年に佐渡にUターンし、母・あけみさんにキムチ作りを学びながら、キムチの家で働き始めた硲さん。当初はInstagramやTwitter(現・X)、YouTubeなどさまざまなSNSでキムチの宣伝を試しましたが、なかなか思うような成果は出ませんでした。そんな時に出会ったのが、動画投稿アプリ「TikTok」。
「部屋でぼんやりTikTokを眺めていたら、料理系クリエイターの方の動画が流れてきて、テンポよく調理をして出来上がったものを食べるというすごく単純な動画が話題になっていました。物は試しと思い、この方と同じような動画を作ってみたんです」。
硲さんはさっそくキムチの家のTikTokアカウントを開設。
もともとYouTubeなどでライブ配信を行うライバーとしても活躍していたこともあり、動画作成はお手の物でした。
そうして出来上がった動画がこちら。

※ご提供画像

母・あけみさんの包丁さばきの豪快さ、白菜を次々と切り刻む迫力に、美味しそうなキムチの完成までの工程をダイナミックに捉えた1本が、投稿からわずか1日で310万回以上の再生回数を記録!「いいね」も10万件を超える大反響となったのです。
驚くべきことに、この動画をきっかけにキムチの家の通販サイトには全国から注文が殺到。TikTok開始前の月平均売上は約3万2000円でしたが、わずか2ヶ月後の2022年1月には、その40倍以上となる約130万円を記録しました。
現在、キムチの家のTikTokアカウントのフォロワー数は10万人を突破。ライブ配信機能を使った新商品の販売会では、開始からわずか3分でキムチが完売!今では北海道から沖縄まで全国各地から注文が相次いでいます。

手際良く作られていく、おいしそうなキムチの数々。そして硲さんと登場する母・あけみさんの言動にもファン多し!(※ご提供画像)

……とここまでざーっと読んでいただきましたが、この勢い、すごくないですか?め、目まぐるしい!

動画を見ていると、なぜか食欲をそそるんですよね。
それに、硲さんが急に活ダコを持ってきて「お母さん、タコでキムチ作って!」と言ってみたり、いろんな素材を持ち込んで、時にあけみさんを困らせたり、怒られたりしている様子も面白いのです!(笑)。
「TikTokをやっていなかったら、絶対にここまでの売り上げ増加は見込めなかったと思います。動画ではトレンドをしっかりと取り入れることと、キムチができるまでのストーリー性を大切にしています。キムチを売ることを目的に始めた動画でしたが、キムチだけでなく我が家の日常を映し出すことで、硲家に興味を持ってくれる方が増えているのも感じますね」。

素材選びから製造も一切妥協なし

全国規模で話題となっているキムチの家のキムチ。一度買った人が何度もリピーターになるということは、その秘訣はキムチの味にもあるのでしょう。そんなわけで、硲さんにキムチの家で製造するキムチについてもお聞きしました。
「今は13種類ほどのキムチを製造しています。朝5時頃から仕込みを始めて、午前中は島内に配達に出かけたり、ネット販売の配送なども行っています。うちは、直接販売ではなくて、ネット販売と佐渡島内のスーパーでの販売が主体です」と硲さん。
たまにネットで調べたキムチの家の住所に訪ねてくる熱烈なファンもいるそうですが、販売はネットと島内のスーパーのみとなるためご注意を!!

さて、一体どんなキムチを販売しているのかというと…

写真上:左から白菜キムチ、山芋キムチ、たけのこキムチ 
写真下:左からアサリキムチ、イカキムチ、シルクれんこんキムチ
(※ご提供画像)

キムチの王道でもある白菜キムチ、きゅうりで作るオイキムチ、大根を使ったカクテキなどの定番キムチをはじめ、イカキムチ、タコキムチ、アサリキムチなどの魚介系、海藻のギンバソウ、シルクれんこんなど佐渡の特産品を使ったもの、さらにはタケノコや山芋、行者ニンニクなど季節の素材を使ったものなど、実にバラエティ豊か!
その時々の旬のものを使ったキムチも随時登場しているため、いろんな味のキムチを楽しめるのも魅力なのです。

原料となる野菜は全国各地の産地から厳選したものを使い、イカやタコなどの魚介は佐渡で取れる新鮮なものを使うこともあるのだとか。唐辛子など一部の材料はキムチの本場・韓国から取り寄せ、素材となる野菜といわしのエキスである魚醤、塩、ニンニク、粉唐辛子などを中心に、余計なものは入れずに素材と調味料で旨みを引き出すのがキムチの家流です。

製造工場も拝見しました。硲さんが手に持っているのが、韓国から取り寄せる粉とうがらし。

「食べていただくとよく分かると思いますが、味がしっかりめで酸味は少なく、ガツンとくる辛さが特徴です。買ってすぐに食べるのも十分おいしいですが、僕のおすすめは1〜2週間おいて食べること。野菜に味が染み込んで辛さがマイルドになり、ほどよい酸味も感じてめちゃくちゃおいしいんです!」と硲さんからおいしい食べ方も教えていただきましたよ!

実食!キムチの家のキムチ

私、お恥ずかしながら、今回の取材で「キムチの家」のキムチを初体験。トレンドってものに疎いおばちゃんですが、ライターたるもの食べずには書けませんから。取材後に、佐渡島内のスーパーで白菜キムチ2つと行者ニンニクのキムチ1つ、購入しました。

ご飯の上にキムチを乗せていただきます。辛いけど旨みがガッっつーーーん!ご飯のおかわりが止まりません(笑)。

まずは白菜キムチの1つ目。最初はとにかく「ひぃ〜〜辛い〜!!」が先にきますが、食べ進めていると…あら、不思議。ご飯と一緒にいただけば、一口、二口と止まらない。
白米とキムチに卵黄を乗せてみたり、豆腐と一緒に味わってみたりしているうちに、2〜3日で容器が空になるという緊急事態に。後を引くうまさとはまさにこのこと。

そうこうしているうちに1週間が経過し、2つ目を開封。硲さんからは「時間をおいて食べるのもおいしい」と聞いていましたので、それに従いました。一つ目のキムチよりは白菜も真っ赤に染まりしんなり。キリッとした辛みから角が取れてまろやかな辛さになっている上に、魚醤(イワシのエキス)のしょっぱさと野菜の持つ甘み、この二つが見事にマッチしていて、辛さの中に味わい深さをじわ〜っと実感。

こちらは春先限定の行者ニンニクのキムチ。これもご飯によく合っておいしかったです(※ご提供画像)

「キムチの家」では、「キムチの家のキムチを食べると、他のキムチが食べられなくなります」と謳っていますが、確かに。この味を知ってしまうと元には戻れない!と実感です。
「僕の周りの友人たちも、そう言ってくれる人がとても多いんです。キムチは決して万人受けするものではないのですが、これだけ需要があるとなると、このキムチのおいしさを何年先までも受け継いでいかなければならないと思っています」。

EPILOGUE

数百年続くブランドを目指して

硲さんが母・あけみさんから受け継いだキムチへの情熱は、今や佐渡を代表するブランドとして確固たる地位を築きつつあります。
硲さん目標は、「キムチの家を100年続くブランドにすること」。そのためにはまず、味の継承者を育成することが不可欠だと力強く語ります。
「僕の子や孫の代まで、このキムチを食べ続けていけたらというのが夢ですね。そのためには、自分の代で味をしっかり守るだけでなく、次の世代にもキムチ作りの技術をちゃんと引き継いでいかなければならないと思っています」。

一方で硲さん、キムチの家は「佐渡のためという思いでやっているわけではないんです」と正直に話してくれました。
「SNSでの配信も、佐渡を意識してキムチの家をやっているわけではなかったんです。それよりも自分や家族が食べ続けたいキムチを作り続けることが、あくまで僕の目的です。
……なんですが、最近はキムチの家という存在を通じて、佐渡に興味を持ってくれる人が少しでも増えたのかなって感じてはいるんです。素直にうれしいですよね」と硲さんは笑顔で語ります。

地域に貢献、地元を盛り上げる。
言葉にしてそれをカタチにしていくことも、もちろん大切ですし、とっても素敵なことです。
ですが、硲さんのように佐渡という地域を大きく意識しなくても、結果的に「佐渡にキムチの家がある」という事実が今、SNSを通じて全国ひいては世界中から佐渡への関心をもたらしている、これって意識的にやろうと思ってもなかなかできることではないですよね。

「キムチの家の次は“焼肉の家”という焼肉店も昨年から始めました。焼肉店をやることは母の夢でもありました。●●の家シリーズは今後も増やしていきたいですね(笑)」と硲さん。
硲さんの生き方そのものが、佐渡の未来を切り拓く原動力に。それぞれのやり方で個性を輝かせるフィールドが、佐渡にはあるのかもしれません。
とにかく!キムチの家のキムチ、ぜひ一度ご賞味ください!

硲 博巳さんの特別なこと、
「キムチの家」で励んでいること、
佐渡からオリジナルの
キムチブランドを発信すること、
この先、佐渡で事業を続けていく
上で考えていること、
たっぷりと教えていただきました!
ごっつぉさまでしたー!!

さんの#マイごっつぉ

大切な人と過ごす時間

キムチの家のTikTokの動画配信では、毎回硲さんの家族や友人、地域の方々など、たくさんの方が登場しています。出来上がったキムチを一緒に頬張ったりと、いつも楽しそうな様子がこちらまで伝わってきます。 その中で、硲さんと一緒に登場する機会が、母・あけみさんと同じくらい多いのが、妻の小夏さんです。 「佐渡には大切な人がたくさんいます。一人ひとりを挙げたらキリがないですが、一番は嫁さんです。お金も家も車も何にもなかった頃から、最高な時も最悪な時も一緒にいました。彼女は僕の平凡な人生を非凡にしてくれ、チャレンジすることを諦めさせてくれません」と硲さん。小夏さんは結婚を機に佐渡へ移住し、硲さんと共に佐渡暮らしを楽しんでいるそうです。仲の良いご夫婦で微笑ましい限りです♡硲さん、ありがとうございました!

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店名キムチの家
営業時間11:00〜17:00
定休日日曜
電話番号090-5209-5787/0259-22-3091
HPhttps://kimuchihouse.thebase.in/
SNSTikTok: https://www.tiktok.com/@kimuti.house.jp.ne.co
Instagram: https://www.instagram.com/kimuti.house
備考キムチの家のキムチが買える佐渡島内のお店
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