
歸山 芳文 (かえりやま よしふみ)さんの自己紹介
新潟県三条市生まれ。服飾系の専門学校を卒業後、出版社勤務などを経て2021年9月に燕市宮町商店街にカフェ併設のフォトスタジオ「写真と珈琲 SIIKS(シイクス)」をオープンしました。「家族のことが大好きになる」をコンセプトに、写真と想い出を残すお手伝いをしています。その他、人材育成とまちの活性化に取り組む「つばめまんなか商店街」の座長も務め、多彩な活動を通じてまちづくりのお手伝いもしています。
PROLOGUE

道の駅国上の林駅長にご紹介いただきやってきたのは、新潟県燕市の宮町(みやちょう)商店街。宮町商店街と言えば、約4カ月前にもお伺いした、まだ記憶に新しい場所でもあります。
飲食店やパン屋、銀行、ゲストハウス、古着屋など多彩な店舗が軒を連ねる中で向かったのは、ごっつぉLIFEけんおう編5-1でご紹介したドライフラワー専門店「小さな花屋 Tette(てって)」さん?!ではなく、「Tette」さんの2階にある、もう一つの特別な場所なんです。


扉を開くと、階段手前にはたくさんの写真が飾られていました。赤ちゃん、七五三、家族、結婚式……そこには、かけがえのない人生の一瞬一瞬が写っています。

2階で出迎えてくださったのは、「写真と珈琲 SIIKS(シイクス)」を営む歸山 芳文(かえりやま よしふみ)さんです。フォトスタジオとカフェを併設したこの場所で、歸山さんはカメラを構えるかと思えば、時にはコーヒーポットを手に取り、丁寧に一杯のコーヒーを淹れています。
どうしてスタジオ内でカフェを始めたのか、写真と珈琲がどのようにつながるのか、その他、歸山さんの多彩な活動についてもお話をお聞きしてきました。
ごっつぉライターの私がプロのカメラマンさんにレンズを向けるなんて、まるでプロのミュージシャンの前で、カラオケを熱唱するようなもの(笑) 恐れ多くもシャッターを切ってきましたので、歸山さん、読者の皆さま、温かい目で見守ってくださいませ!
INTERVIEW
特別な日も何気ない日常も、大切な瞬間を

フォトスタジオとカフェを併設した「SIIKS(シイクス)」がオープンしたのは2021年。歸山さんはこれまでに赤ちゃんからご高齢の方、ペットまで延べ数千人もの家族写真を撮影してきました。同店では、人生の大切な瞬間を美しく記録する6つの撮影プランを提供しています。

1つ目は、ウェディングフォトプラン。スタジオから海、神社、職場まで、カップルの想い出の場所でオンリーワンの撮影を行います。2つ目のファミリーフォトプランは、記念日や日常の何気ない瞬間を撮影します。ご自宅へ出張することもあるそうです。
続いて3つ目は、新生児向けの「HATSU PASHA(ハツパシャ)」。産婦人科での生まれたての貴重な瞬間を撮影するプランです。4つ目の七五三プランでは県内の神社での境内撮影や御祈祷シーンも撮影し、5つ目の新成人プランでも同様に撮影しています。
そして6つ目が、同店ならではの特徴的なワンコインフォトです。

「500円で気軽にご利用いただけるワンコインフォトは予約不要で、カフェ利用と合わせて楽しんでいただける手軽なサービスです。フォトスタジオって年に1回来るか来ないかですが、カフェがあれば普段使いしていただけるのではないかと思って、カフェ併設のスタジオにしました。コーヒー1杯500円、写真も1枚500円なので、気軽に立ち寄っていただき、手軽に写真撮影に親しんでいただきたいです」と歸山さんは話します。
実際に、ご家族やご夫婦でふらっと訪れて、何気ない日常を残していく方も多くいらっしゃるそうです。

さらにワンコインフォトから派生した企画が「フォトランチ会」です。5~6組のお母さんとお子さんでスタジオを貸し切りにし、ワンコイン撮影と歸山さんお手製のランチプレートを組み合わせたもの。
「小さなお子さんがいると外食するのが大変ですが、ここなら貸し切りにして周りの目を気にせず楽しむことができます。お友達同士で集まって撮影を楽しんだり、おしゃべりしたり、お母さんたちの息抜きにもなればと思っています」

過去にはイタリアンバルで調理経験もある歸山さん。飲食店での経験と料理好きの趣味を活かして、歸山さん自身が調理します。
「写真を撮って、選んでもらっている間にランチを作り、食べてもらっている間に編集して、帰る時にはデータが完成している。そんなスピード感で一人で何役もこなしています。私自身は目まぐるしい忙しさですが(笑)でも出来上がったお子さんの写真を見て『かわいい〜!』と目を細めているお母さんたちの姿を見るのが嬉しい瞬間です」と歸山さんは微笑みます。
人生の節目にだけ訪れるフォトスタジオではなく、日常の中にあるフォトスタジオ。「SIIKS」は気軽に立ち寄れる場所なのです。
写真からイベント企画まで、幅広い強みを活かして

一方で、家族写真以外にも歸山さんの仕事は多岐にわたります。商品や人物など企業向けの撮影から、パンフレットやホームページ作成、イベント企画までを一人で手掛けているというから驚きです。
「もともとは20代で写真・動画編集やグラフィックデザインを通信講座で学びました。その後、出版社の編集部門で取材やライティング、編集を経験したため、撮影から制作まで一貫して提案できるのが特色です。特に燕三条は金属加工メーカーが多く、商品撮影後にチラシや展示会用タペストリーの制作、さらに展示会ブースのレイアウト提案まで、PR業務全般を任されるケースが多いですね」
このように、歸山さんは自身の多彩なスキルを活かし、企業のPR活動をワンストップでサポートしています。また、燕市の観光ガイドブック「燕巡(つばめぐり)」では、企画・取材・撮影・デザインまで一人で手がける徹底ぶりです。年間700組の撮影をこなしながら、これだけの業務を並行して進める歸山さんのエネルギーには、ただ驚かされるばかりです。

「『燕巡』は、春夏号と秋冬号の年2回発行しています。企画の立案から取材先の選定、取材、写真撮影、ページレイアウトの作成、そしてデータ納品まで、すべて私一人で手がけています。本来であれば、ライター、カメラマン、デザイナーの3人で行う作業を1人で担当しているためとても大変ですが、それができるのが私の強みです」

そして、ここ最近ではイベントを企画するイベントプランナーとしての仕事も増えているとのこと。以前「Tette」の水沼さんを取材した際に宮町商店街を拠点としたイベント「まんまるしぇ」をご紹介しましたが、「まんまるしぇ」は水沼さんと歸山さんが共催しています。
「『まんまるしぇ』は自主企画ですが、おかげさまで他の商店街からの依頼も増えています。イベントの企画段階から準備、運営まで全体を管理するのはもちろん、チラシ作りや当日の撮影も一括して対応できるため、まとめて仕事の依頼をいただくことが多いです」
歸山さんの活躍は写真や珈琲にとどまらず、一人で何役もこなすまさにマルチクリエイター! しかし、最初からこの役割を目指していたわけではなく、これまでの経験を通じて自分のできることを集約してきた結果、今につながっているそうです。

「自分がやったことで相手が喜んでくれること、それが僕の人生の目的なんです」と話す歸山さん。手段は写真でもデザインでも料理でも構わない。相手の笑顔を見ることが何より大切だと語る歸山さんの言葉には、深い信念が込められています。
カメラマン、シェフ、デザイナー、ライター、イベンターと何足ものわらじを履きマルチに活躍している歸山さんですが、人生の目的が定まらず自分探しをしていた時期もあったそうです。次回は、歸山さんのこれまでの人生に触れ、現在の活動に至るまでの軌跡をお聞きします。お楽しみに!